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38.ダークエルフと製造部会議

 小さな薬店で女性が薬瓶を手に取った。

「これって、頭痛に効く薬よね?」

「効くはずですよ、あの……それ私が作ったんです」

 褐色のダークエルフが答える。

「あなたが? そうなの……うーん、やっぱりやめとくわ」

 女性は瓶を棚に戻しそそくさと帰っていった。


「何勝手に店に出てんだ! お前が店に出ると売り上げが落ちんだろ! 裏で調合でもしてろ!」

 外から戻って来た店主に怒鳴られた、店番がいなかったから対応しただけなのに。

 何も後ろ盾のないダークエルフにはまともな働き口はない、この小さな薬店で働けるのも運が良い方なんだろう。

 それに薬作りは私の性に合った、私が作った物で人を治す事ができるかと思うと、どんなに辛い雑用でも耐える事が出来る。


 ある晩私が倉庫の隅で薄い毛布に包まり寒さを凌いでいると、倉庫のドアが開く音がした。

「オイ! いるか?!」

「はい」

 いつもはすぐに部屋に向かう店主が倉庫に顔を出した、もちろん私に部屋なんてない、この倉庫の隅が私の唯一のスペースだ。

 窓のない倉庫は真っ暗だから店主も中までは入ってこない、ダークエルフは夜目が利くので問題はないが人族はそうもいかないのだろう、しょうがなく私は毛布を肩に掛けたまま扉へと向かった。

「うわっ! 驚かせんな! お前は暗がりだと目しか見えねぇな」

 私の褐色の肌は暗闇と同化しているようだ、入り口に立つ店主はずぶ濡れで酒の匂いがした。


「お前もここに来て長いよな、色々教えてやったし少しは恩返しをしようとか思わないか? お前も女だしなぁ」

 店主が下卑た笑みを浮かべながらこちらに手を伸ばしてきた、何をしようとしているかはすぐにわかった、だから近くに置いてあったすりこぎ棒で思い切り頭を叩いた。


「テメー! ダークエルフのくせに逆らってんじゃねぇよ!!」

 ダークエルフだから? ダークエルフってなんなの? もう何もわからない!

 頭から血を流す店主を置き去りにし、倉庫を出て、そのまま街に飛び出した。


 外は土砂降りの雨だった、肩に掛けていた毛布が水を吸って重くのしかかる。

 あそこにはもう戻れないな、でもどうでもいいや、どうせお金も荷物も何もないし。

 今は何も考えたくない、ただただ冷たい雨に身を晒していた。





 目を覚ますと寮の天井が目に入る、倉庫の片隅でも薄い毛布でもない。

 体はベタベタして嫌な汗をかいている、酷い目覚めだった、起き上がりタオルで身体を拭いてから身支度を整えた。

 窓の外を見ると雨が降っている、雨は嫌いだ、そのせいで昔の夢を見たのかもしれない、それに悪い事が起きる時は決まって天気が悪かった、今日の会議で何も起きないよう祈るばかりだ。




「それでは製造部会議を始めたいと思います、会議の進行は私、総務部のナムが行います」

 

 会議場は前回と同じ場所だった、手前側に座る製造部の人達はほぼ前回と同じ顔ぶれだ、私の隣には課長補佐のレックスそれにアドバンが座っている、しかし雛壇はかなり変わっていた、と言うかなんなの? 白虎ちゃんいるし!


「会議を始める前に幾つか質問があるのですが、発言よろしいでしょうか?」

 質問したのは隣に座るレックスだ。

「質問どうぞ、レックスさん」


「まず……皆が聞きたがっている事を聞きましょう、その猫は何ですか?」

 そう、なぜか雛壇のテーブルの上に白虎ちゃんがいた、皆の視線を集めているのに何食わぬ顔をしている、可愛すぎる。

「この子は白虎ちゃんです、ある方の使い魔なんで会議に出席してもらいました、他に何かありますか?」

 えー! それが答え? 猫が会議に参加するの? まいっか、白虎ちゃん可愛いし。


「あの……まぁ……いいでしょう、その使い魔も会議に参加すると言う事で。

 次の質問ですが、今回は製造部の会議ですが何故総務部が会議に参加するのですか?」

「私は部長に頼まれて司会をしています、会議を円滑に進めるためです、それと総務部は製造部の事に関しては口を出しません」

「総務部は製造部の事には関与はしないと言う事ですね、了解しました、それでは最後に、そのテーブルの物はなんですか?」

 雛壇には部長と総務部の少女、テーブルの上には白虎ちゃんと白い布を被せられた何かがあった、あっ白虎ちゃんが欠伸をしている、ヤバイ、めっちゃ可愛い。

「この布の下の物は後程使う予定です、それに伴い警備員を配置しています、彼等も会議には参加しませんから気にしないで下さい」

 皆が後ろを振り向くといつの間にか入り口に三人の屈強な警備員が立っていた、警備員が必要になるほどの物があの布の下にあると言う事なのね。

「そんな危険な物が会議に必要なんですか?」

「一部の人には必要になるでしょう、コレを使うのはまだ後になります、他に何かありますか?」

 レックスも他の皆も黙っていた、質問した所で望む答えは返って来なさそうだから。

「質問がなければ今度こそ会議を始めたいと思います」

 質問も終わり改めて会議が始まるのだが……。

 

 白虎ちゃん、今、毛繕いを始めるの? 可愛すぎる!

 あぁ、もう! これから会議が始まるのに白虎ちゃんが視界に入ると集中出来ないじゃない!

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