34.執行役員青龍様
「お疲れ様です青龍様、報告と意見を伺いたい事がありましてこちらに来ました」
青龍様が部屋に入ると玄武さんはのそのそと部屋の中央に歩いて来た、しれっと青龍様と一緒に入ってきた白虎ちゃんがベッドの空いたスペースに飛び乗って丸くなる。
青龍様が玄武さんに座り口を開いた。
「報告を聞こうか」
早速玄武さんが仕事をしている。
青龍様の青い髪からは2本の角が見えている、中性的な綺麗な顔は何処かで見た事が……って言うかしょっちゅう見ている、服を着たまま大浴場にいるセイリューさんは青龍さんで青龍様だった。
「青龍様、なるべく部屋にいて下さい、どこに行ってるんですか、いつも」
「まぁ気にするな、白の眷属よ、考えを纏めるのに最適な場所に赴いてるだけだ、それより報告とはなんだ? そこにいる人族とハイエルフに関係するのか?」
「人族が道具課のアルフレッドさんでハイエルフが薬品課のエルメストさんです、成果を挙げている二人がどのように動くかを確かめるのと、今後どの様にするかを青龍様に相談しに来ました」
「ふむ」
青龍様は顎に手を当てて考えると、すぐに答えを出した。
「人族はオルタニア王国第四王子だな、道具四課で魔道具の開発に成功している、さらに次に立ち上げる開発部の課長代理になる予定と、大方その実績と塔の後ろ盾を使い王国での地位を上げたいのだろう」
自分の情報を持っている青龍様は素晴らしいが後半は見当違いである。
「ハイエルフはフィンネル国の第一王女か、薬品一課ではポーションの生産性向上に新薬の開発、最近は少し低迷していたが解呪の魔道具の開発に成功したな。
悪魔に対応する手段の一つとして効果的だが、まだ時間も掛かるし力も弱い、効果を高められたら世界樹に使用する許可をだそう」
青龍様はエル課長の事も知っていた、自分の時もそうだが青龍様が話すと個人情報がだだ漏れです。
「それにアルさんは転生者です」
さらにナムさんが追加の情報を漏らす。
「なるほど、前世の知識を使ってきたのか、だがどうせスマホやパソコンがないと詳しいことははわからないと言うのだろう? アイデアを出すなら開発部は良い環境かもしれんな」
「?! 青龍様も転生者なんですか?」
そうでなければスマホやパソコンなんて言葉は出てこないはずだ。
「我は転生者ではない、ただ異世界の事は知識として知っているだけだ」
「そうですか……今どこかに転生者の方がいるんですか?」
「……今は塔にはいない……」
なんか歯切れが悪い、今は、と言う事は前にいたのだろうか? これ以上は聞きづらい雰囲気だ。
「人族は成果を上げれば塔が後押しをしてやる、ハイエルフは魔道具の改良を進めよ、成功すれば貸し出しの許可を与える、これでよいか? 白の眷属よ」
「ありがとうございます、二人とも今後も白の塔で仕事に励んで下さい、それと青龍様、別件ですが連合国の紛争地帯に動きがありました」
「そうか……これで王国、法国に続き連合国側でも動きがあったか……バランスを取る為には……」
報告を受けた青龍様は考え込んでブツブツ言い始めた、風呂でよく見る光景である、なんか勝手に方針を決められてしまったが、継承権争いはしたくない事を伝えなくては。
「あの、青龍様……」
「この状態になるともう話は通じませんよ」
青龍様はこちらを見向きもせず思考の海に沈んでいる、後ろ盾とか要らないんですけど。
「報告も済みましたし、戻りましょう」
こうして不本意ながらも執行役員への報告会は終わった。
青龍様の部屋からの帰り際、エル課長から提案があった。
「今日の化け物の襲撃の事と先ほどの話し合いの件、お互い知らない事が多いだろう? 今日はもう遅くなってしまったが、明日にでも情報を共有する機会を作らないか?」
もちろん賛成である、情報共有は大事だ、先程は聞いてもらえなかったが出世意欲のない事も伝えねば。
翌日
「さて、情報のすり合わせをしていこう」
会議室には自分とエル課長二人だけだ。
青龍様との会話は自分やエル課長のプライベートに関わる事なので他の人は遠慮してもらった。
まずは自分の身の上から話していった。
オルタニア王国の第四王子である事、それぞれの母達が争っているが兄達や妹とは仲が良く継承権争いをする気がない事や、逃げ出す様に白の塔で働き始めた
事などを説明した。
「継承権第四位なら十分に王を狙える地位なのに君は王になる気はないのか?」
「ないですね」
「即答だな」
父親でもあるオルタニア国王、王にしては平凡な人だと思う、それゆえに国に悩み、民に悩み、妻達に悩み、子供達に悩み、悩みすぎて常に胃痛を起こしていた。
そんな父親を見て国王になりたいとは思えない、それに自分は前世でも人の上に立ちたくなかったのに国のトップだなんて考えただけでも恐ろしい。
「それでは私の事も話しておこう」
次にエル課長の身の上話になった。
ハイエルフでありフィンネル国の第一王女である事、ルイさんとは姉妹である事。
国にある世界樹と女王が病気になり、エルフの技術を持ってしても治せなかった、原因究明の為、国の外へと旅に出た事。
「いろんな所を周ったんだが、一番情報と技術が集まるのがこの白の塔だったと言う訳だ」
「第一王女自ら旅に出たんですか?」
「そうだ、世界樹も母親である女王もすぐに悪くなる症状でもなかったからな、見聞を広げる意味でも私が外に出た、ハイエルフで王女と言う肩書きは何かと便利だしな」
自分は権力を使って高いワインを買われてしまった、エル課長は権力を上手く使えている様だな、羨ましい。
「世界樹と母親が何の病気か判明したんですか?」
「あぁ、病気ではなく悪魔の呪いだった」
ここでも悪魔の呪いか、最近よく聞く。
「呪いだと言う事は早めにわかったのだが解呪の方法が見つからなくてな、結局、大陸中を周って白の塔で情報を集め最近やっと解決の糸口が見つかった、それが解呪の魔道具だ」
なるほど、マルカスさん達を解呪した魔道具はここで繋がったのか。
「君のおかげでもあるな、ありがとう」
なんで??




