32.四神朱雀
「まず何から話すか、まずあのローブに支払うのは一着、金貨一枚だ」
うっ結構高かった、四着で金貨四枚か、やはりケビンの言う通り少しでも払うべきか?
「それと私とルイの関係だが……」
「おいっ! 大丈夫か?!」
前で先導していた男達に何かあった様だ。
「何だ! どうした?!」
カレンさんが駆け寄って行く。
男達の内二人が跪いている、そしてそのまま倒れ込んだ。
「おい! ゼス! ハント!」
リーダーの男が倒れた二人に呼びかけていると残ったローブ男二人も倒れる。
「な……何だ? お前らどうした? ゼス!気付いたか、急にどうしっ……あがっ!」
最初に倒れた男が急に立ち上がったとおもったらリーダーを押し倒した、上に乗ったローブ男はもぞもぞ動いて下のリーダーはビクビクと痙攣している。
「オイ! 何をしている!」
カレンさんが腰のレイピアを抜き、構えながら男に近づいていった、上に乗った男はこちらに見向きもしない、それにゴリゴリと嫌な音を立てている。
「何をしていると聞いているのだ!」
カレンさんがレイピアを男の顔に突きつけるとローブ男が振り返った、その拍子にレイピアが引っかかってローブの頭の部分が脱げる、そこには普通の顔ではなく大きな一つの目と牙の生えた血だらけの口があった、そして下のリーダーは頭が半分なくなっていた。
「ヒッ……」
カレンさんが後退りすると残りの倒れたローブ男達も起き上がりリーダーに群がった。
「何……なんだコイツらは……」
エル課長も戸惑っている、いきなりこんなホラーな展開は予想出来ない。
「なぁ……アイツらアレを食べ終わったらどうすると思う?」
カイトが嫌な事を聞いてきた、これは予想出来る。
「エル課長逃げましょう! もう塔はすぐ近くですから後は警備員に任せましょう、自分最近似たような化け物を見たんでアレは無理です!」
よく見ればローブから紫の蒸気の様な物が出てるので悪魔の分体に近しいナニカなんだろう。
「その時はどうしたんだ?」
「副塔長がやっつけました、なんかコイツらも似た雰囲気があるのでヤバいと思います」
「副塔長か……コレをこのまま放置するのもどうかと思うが今は塔に応援を呼びに行った方が良さそうだな、よし皆塔まで走るぞ」
化け物達を背に塔まで走り出そうとした時、腕の中から白虎ちゃんが逃げ出しそのまま化け物達をジッと見つめている、ついに変身するのか?
「オイ! アル! 何やってんだ!」
カイトが駆け戻って来た。
「早く逃げんぞ! アレがヤバいって言ったのはお前だろ! 何してんだよ!」
「あぁそうだな、すぐ逃げよう」
エル課長達はだいぶ先に進んでいた。
てっきり白虎ちゃんがやっつけてくれるかと思ったけど微動だにしない。
「あっ! マズイぞ」
化け物達はあらかた食べ終えた様で立ち上がり不気味な一つ目がコチラを見ている。
カイトと共にダッシュで逃げ出した。
「アル、お前走るの遅くね?」
「あぁハッハッ……コレでも……全力……だ」
カイトは並走して走っているが余裕がある様だ、化け物達は早くはないが遅くもないので引き離せないでいる。
「あのまま、あそこに放置しているよりかは、このまま塔まで連れて行ったほうがよさそうだな、お前そこまで考えたのか?」
いやそんな事を考える余裕はない、そうこうしているうちに塔の入り口が近づいてきた。
塔まで来れば警備員または副塔長がどうにかしてくれるはず、ここで油断したのが不味かった、僅かな段差に躓いてしまった。
「アル急げ!」
すぐに体勢を立て直して入り口に向かうがだいぶ距離を詰められてしまった、このままだと化け物と一緒に塔にゴールインしてしまう。
「アルさん! 伏せて下さい!」
言われるがままに転ぶ様に伏せると頭の上を赤い光と熱が通り過ぎた。
うつ伏せになったまま後ろを見ると追いかけて来た化け物の上半身が消し飛んでいた、伏せるのが遅かったら自分も同じ事になっていたかと思うとゾッとする。
「や……やったの?」
ケビンが呟いていた、お前そのセリフ、フラグだからやめろ。
化け物達の内三体の半身は消し飛んだみたいだが、残り一体がコチラに向かって来た。
すぐに起き上がって逃げようとしたらまた声が掛かった。
「アルさんそのままで!」
すると化け物の向こう側から先程と同じ赤い光が飛んできて最後の一体を始末した、自分はそのままうつ伏せ状態である。
「もう起き上がって大丈夫ですよ、分体は全て焼き払われました」
声を掛けてきたのはナムさんだった、もしかしたら違うかもしれないが。
「助かりました、ナムさんですよね?」
「はい私はナムです、いつも確認しますね、そろそろ見分けて欲しい所です」
だって同じ顔が何人もいるんだから難しいよ。
「アル! 怪我はないか?!」
「アル、大丈夫?」
カイトとケビンが心配して近づいてくる。
「あぁ自分は大丈夫、あの赤い光は誰かの魔法だったの?」
「いやあそこにいる鳥が赤い炎を纏って飛んで行ったんだよ」
見ればナムさんの前に真っ赤な孔雀の様な鳥が佇んでいた、体の周りには火の粉が舞っている。
「あれは……魔獣、じゃなくて神獣のフェニックスなのかな? 初めて見たよ」
神獣フェニックス、確かに神々しい。
「ナムさんそちらの神獣様に助けて頂いたようですが何かお礼をした方が良いですか?」
「大丈夫です、彼の仕事は聖なる炎で不死の物や悪魔を焼き尽くす事ですから、今回は久々の仕事で張り切っていた様です」
「クエッ」
神獣が返事をする様に鳴いた。
「そうですか、神獣様は塔で飼われ……いえ住まわれているんですか? 今度お礼の品でもお供えしたいのですが」
「えぇ塔にいますが普通の塔員には会える場所にはいません、だから気にしなくても良いですよ、それと神獣様ではなく聖獣朱雀君です」
朱雀君? お礼の品を持って行けないのか、まぁ聖獣が何を好むのかは知らないけど。
「朱雀君か……白虎ちゃんもいるし玄武と青龍もいるのかな……」
何気なく呟いた時。
「今何と言いましたか?!」
ナムさんがすごい勢い食いついて来た。
「あっ、いや……白虎ちゃんと朱雀君がいるなら玄武さんや青龍さんもいたりして……なんて……」
白虎に朱雀ときたら玄武と青龍に繋がる。
「貴方は四神を知っているのですか?!」
「いや……よくは知らないですよ、何か風水だか占いだかの方角を示すのに青龍、白虎、朱雀、玄武があったなぁみたいな……」
本当に詳しくは知らないし、前世のゲームやアニメなんかに定番で出てくるから名前は知ってるけどそんな事を言ったら転生者なのを説明しなければならない。
「名前を知っている事が重要なんです……これはどうしたら……」
ナムさんは考え込んでしまった、軽く呟いた事が何かマズイ事になったかもしれない。
考えているナムさんと静かに佇んでいる朱雀君の所にエル課長達も来た。
「君達も無事でよかった、あまりに遅いから追いつかれたのかと思ったぞ」
「アル……足遅すぎる……子供でももっと早い」
エル課長に心配されてしまう、ルイさんはもう少し表現をオブラートで包んで欲しい。
その時、急にナムさんが顔を上げ
「貴女はエル課長ですね、次期部長でもある、ならばアルさんとエル課長に会って話しをしてもらいたい方がいます、塔の執行役員青龍様です」
何故か急にお偉いさんと会う事になった。




