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31.エル課長の交渉術

「私と男達で足止めしている間にお逃げ下さい」

 護衛のカレンさんが物騒な事を言ってるけど、頼りない男達では足止めも出来ないだろう。

「まだ相手の要求がわからないからな、とりあえず話しをしてみようじゃないか」

「しかし危険です!」


 エル課長は振り返りまだ見えない人達に向かって語りかけた。

「君たちの要件は何だ? コソコソついて来ないで言いたい事があれば言いたまえ」


 すると建物の陰から三人のローブを纏った者が出てきた、頭からローブをすっぽり被っているのだが顔が見えない、認識阻害が付与されてるのだろう。

「まさか素直に出てくれるとはな、その格好からすると我々に害を成そうとしているのか? 誰かに金を積まれたなら我々はその倍払おうじゃないか、どうだ? 話しだけでもしてみないか?」


 エル課長は不審者と交渉を試みているようだ、相手もいきなりそんな事を言われて戸惑っている、不審者達は顔を見合わせている、たぶん見えてないけど。


「エル課長大丈夫なんですか?」

「金で済めば安いものだ、交渉事には強いつもりだ」

 全てをエル課長達に任せるのも悪い気がする、せめて何かしようかと周りをみればカイトが木の棒を拾っていた。

「素手よりマシかと思って、さすがに剣とかは落ちてないしな」

 自分も課長が交渉している間に何か探すか、ってアレは……。


「ルイ様……エル様に任せて平気ですか?」

「……エル姉だから平気……だと思う」

「いざとなったら僕とカレンで何とかできれば……あとアルとカイトも……えっ? アル何してるの?」

「たぶんもう大丈夫だ、この子がいれば」

「……猫かわいい……」

 道端にいた白虎ちゃんの捕獲に成功した。


「おい、アル、なんでいきなり猫を捕まえたんだ?」

 カイトが訝しげに聞いてきた。

「この猫は白虎ちゃん、誰かの使い魔なんだ、きっと力になってくれるはず」

 白虎ちゃんは自分の腕の中にいる、喉を触っているとゴロゴロ言ってる、かわいい。

「どう見てもただの猫にしか見えないんだけど」

「何を言ってんだ、白虎ちゃんだよ? ピンチになればきっと大きな白い虎になるんだよ、ねー白虎ちゃん」

 誰かの使い魔で白虎なんて名前が付いてるんだからそういう能力のはずだ、エル課長とカレンさんは不審者と交渉中、きっと戦闘になったら変身するんだろう。

「白虎ちゃんかわいい……アル、触ってもいい?」

「いいですよって自分が許可するものじゃないんですが、落ち着いてるみたいだから平気じゃないですか」

 ルイさんは白虎ちゃんの可愛さにやられた様だ。

「アル、ルイさ……ん今はそれどころじゃないんじゃないかな、交渉次第でどうなるかわからないのに……」

 ケビンは心配しているが自分達が慌てても何も変わらないよ。



「話がまとまったぞ、彼らも今回の仕事は乗り気じゃないらしい、今の契約を破棄して新たに私達を塔まで送る契約をした」

 エル課長が上手く話をつけたようだ、五人の不審者がこちらに近づいてきて先頭の男が頭を掻きながら話し始めた。

「あーなんだか悪かったな、今からアンタらを塔まで送ってくから」

 それだけ言うと男達は塔に向かって歩き始めた、話しかけてきたリーダーっぽい男以外は認識阻害ローブを着ているので顔がわからない、チンピラみたいなリーダーはローブは着ずに顔を晒している。


「戦わなくて済みそうだな」

「ふぅ、どうなるかと思ったよ」

 木の棒を装備したカイトと素手のケビンだ、不審者達はこちらを気にしながら塔に向かって歩いてるので皆で後を付いていっている。

「皆助かったな、だがまだ彼等を信用した訳じゃないから警戒は怠らないように、話しをしてみたが不審な点が多すぎる、まだ何が起こるかわからないからな」

「エル姉……不審な点って何?」

「まず彼等はスラム街の孤児達だろう」

「そうなの?」

「あぁ、話しをしていてわかった、それに金を払うと言ったらあっさり依頼を放棄するなんて何の組織にも所属していないのだろう、普通なら依頼失敗の罰則を恐れるものだ」

「でもエル姉は最初お金を払うって言ってたよね」

「話の取っ掛かりにお金の話しをしたまでだ、まさか話しが通るとは思ってなかったが……依頼の報酬はあの認識阻害のローブ四つだった、塔まで行ったらローブはそのまま彼等の物、追加でローブ四つ分の金額を払う事で合意したのだが……」

「魔道具のローブが高いの?」

「まぁ金額はそれなりだがそれよりも依頼内容がおかしかったんだ、今日の夕方四番街に続く大通りを通るエルフの三、四人組をスラム街まで連れ来るようにと、サロニアではエルフや獣人それに魔族だって珍しくないのにそんな不確かな依頼があるだろうか?

 エルフが素直にスラム街までついて行く訳はないしな、それにそこそこ高価なローブを報酬として先払いしているのも不自然だ」

 聞けば聞くほど不審な点が目立つ話だ。


「それでエル姉はどうするの?」

「どうもこうもないさ、塔まで着いたらお金を払ってお終いだ、最初に言ったが金で済むなら安いものさ」

 エル課長はお金の使い方が上手いね。

「あの……ローブ代は僕も払います、何も出来なかったんで……」

 ケビンがおずおずと進言する。

「ケビン、君が払う必要はないぞ、人数が増えたから相手も不安になって交渉もスムーズに進んだんだ、むしろ君達には報酬を払わねばならないな」

「そんな……報酬なんて貰えないです、ねぇ二人とも」

「もちろん報酬はいらないですが、魔道具のローブっていくらぐらいするんですか? あとルイさんがエル課長の事をルイ姉と呼んでますけど姉妹何ですか?」

 自分気になります。

「あー俺……じゃなくて私を開発部に行ける様にウチの課長に言ってもらえますか? あーわたくし道具一課のカイトと申します」

 カイトが変な言葉遣いでお願いをしてる、そんなに開発部に行きたいの?

「ハハっ、ケビンの友人達は変わってるな、私に答えられる事や出来る事ならしてあげよう」

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