30.エルフを追跡する者
「じゃあアルの昇進を祝って乾杯だ」
「「かんぱ〜い」」
乾杯は少し安めの白ワインになった。
「この豆を使った料理が定番なんだよ、あとこっちの足長鳥を蒸したのも美味しいよ」
テーブルにはケビンおすすめの料理が並んでいる、野菜が多めだがどれも美味そうだ、食堂みたいなとこでガッツリ食べるのもいいけど、こういう所での食事もたまにはいいね、でも野郎三人で来る店ではないな。
「いくらさっぱりした料理でもこれだけ食えば腹一杯だな」
ケビンが張り切って頼んだので結構な量があった。
「じゃあ次に行こうぜ、こっからちょっと離れてるんだけどクイーンって店、かわいい女の子が隣に座ってお酌してくれんだよ」
カイトが提案したのはいわゆるキャバクラだろう、酒も入った事だしちょっと行ってみたい。
「いいじゃん、行こう、なんてったって……」
「いや、そこは割り勘で頼む、安くもないんだ」
ここは奢ってもらうし、仕方ないか。
「あ……あの僕はそういうお店はちょっと……」
「何言ってんだ、お前は強制参加だって」
「だな」
「えー!」
「じゃあここの支払いは頼んだぞ」
「わかってるよ! ケビン払おうぜ」
「うん、わかった」
入り口の所でカイト達が支払いをしていると
「……アル?!」
振り向くと近くのテーブルにルイさんがいた。
「あれ? ルイさん偶然ですね、ケビンの紹介でこの店に来たんですよ、あっ、そちらの方は……」
「君がアルフレッド君だね、薬品一課のエルだ、この間の会議では話す事が出来なかったな、これからよろしく頼む」
ルイさんと一緒にいたのはルイさんに似た水色の髪色をロングにした美しいエルフ、未来の上司エルメスト課長だった、直の上司はユーリ課長だけどね。
「道具四課あっ、今は三課のアルです、次の部署ではよろしくお願いしますエルメスト課長」
「あぁよろしく、私の事はエルと呼んでくれ、エルメストと呼ばれるのは好きじゃないんだ」
「わかりました、自分もアルでお願いします」
「おい、アル行こうぜって、何だ? ナンパか?」
会計が終わったカイト達がこちらに来た。
「違う、偶然同じ職場の人達に会ったんだ」
「エル様ルイ様……」
そっかケビンはどっちも知ってるのか。
「君たちはこれからどこか行くのか? もし予定がないなら頼みがあるんだが……」
「これからですか? 次にクイー」
「ねぇアル! 次には行かないよね?! ねっ! ぜひ頼みを聞こうよ!」
ケビン食い気味に遮ってきた。
「まぁいっか次回行く時はケビンの奢りな、なぁカイト」
「そうだな、今度奢ってくれるなら今日の予定はなかった事にしよう」
「うぅ……わかったよ」
「自分達は予定がないです、それでどうしました?」
「ふふっあまりケビンをいじめないでやってくれ。
それで頼みなんだが……実は誰かにつけられてる様なんだ、気づいたのが四番街の近くだったのでこの店に避難したんだ」
「警備隊には連絡したんですか?」
「店の従業員に頼んで連絡済みだ、しかし今、街の警備が不足しているようでここまで来れないみたいだな。
それでだ、君たちに私達の警護を依頼したい、どこからつけらたかはわからないが塔まで行けば安全だろう」
警護か、自分は役に立てそうにないな。
「人族に頼む必要はありません! 私が貴女方をお守りします! その為の護衛です!」
ルイさんエル課長といたもう一人の女性エルフが声を上げた、この人を加えて三人で行動していたようだ。
「ルイの見立てでは追跡者は四、五人、いくらカレンでも二人を護りながらでは戦えんだろう、人数と男の人が増えれば相手も手を出しづらいと思うんだが」
「しかし……人族に頼るのは……」
「塔で働いてるのだ、エルフも人族もないだろう、それにケビンの友人だしルイの上司でもある」
「……わかりました……」
とても不満そうに答えた護衛のカレンさん、エルフの女性にしては骨太で筋肉質だ、強そうではある。
「あのですね、自分戦う力はないですよ、カイトはどう?」
「あーっと、ガキの頃は喧嘩は強かったな……ケビンは?」
「えっ? 僕は……弓を使った狩は得意だったけど人型と対峙した事はあまりないな……弓もないし……」
「ま……まぁ……大丈夫だろうエルフの女性三人よりかはマシなはずだ……マシだよな?……うん……きっと大丈夫だ」
エル課長が自分自身に言い聞かせてるな、すいません頼りない男どもで。
しばらく待ってみたがやはり警備隊は来なかったので六人で塔に向かう事になった。
まだエル課長達の勘違いかもしれないしそこまで危険はないだろう。
「アルは甘い、この街は治安も良くない……私達を狙った誰かだと思う」
ルイさんに自分の楽観的な思考を読まれてしまった。
「たまたま同じ方向に向かってる人達だった、って事はないんですか?」
「違う、明らかに私達をつけていた、店の中までは入ってこなかったから諦めたか、外で待ち伏せしているか……行動を起こすなら人通りの少なくなる貴族街に入ってからだと思う」
自分もストーカー男に襲われたのも貴族街に入ってからだったな、嫌なことを思い出した、あんな恐ろしい目には会いたくない。
繁華街を過ぎ住宅街を抜け貴族街に入る。
人通りも少なくなってきた、このまま何事もなく塔まで辿り着けると良いのだけれど……。
「エル姉、やっぱりいる、数は五人」
気配察知能力なのか魔法的な何かなのかはわからないがルイさんははっきりと言い切った。
すんなり帰してはもらえないようだ、いざとなったらケビンを囮にして逃げよう。
「ケビン、お前の犠牲は無駄にはしない」
「えっとアル? 何を言ってるの?」




