28.製造部会議
「アル君、明後日に朝から会議があるから仕事の調整をしておいてくれ」
「はい、了解です、会議なんて珍しいですね、道具課で集まったりするんですか?」
「いや、今回は製造部が集まる会議だ、製造部が大きく変わるようだな、一つの課から三人出るのでウチからは私とバレル係長と君の三人だ」
「道具四課がなくなる、とかじゃないですよね?」
「ない、とは言い切れないな、新しい部署、もしくは課を作ると言う話だ、いくつかの課は統廃合するらしい」
なるほどこれがナムさんが言っていた事か、もう辞令とか出てるのかな、不安だ。
会議当日
会議は塔五階にある大会議室で行われる、ミスト課長とバレル係長と自分の三人で向かう。
大会議室は大学の講堂を小さくした様な造りをしていた、奥側の雛壇には長テーブルに椅子が五脚並んでいる、手前側が自分達の席だ。
「ミスト〜こっちこっち〜」
手前側、奥の席でユーリ課長が手を振っている、そちらに向かいながらよく見るとテーブルに資料と席札が置かれている、席は決まっている様だ。
「道具課どうなるんだろうねー?」
「それをこれからの会議で決めるのだろう」
椅子に座りながらユーリ課長とミスト課長が話している、最前列にはクラン課長ら道具一課の人が座っていた、二列目が空いてるが道具二課が来るのだろう、三列目がユーリ課長ら三課で自分達四課が四列目か、こちら側は道具課の様だ。
自分達が席に着いてから他の人達も集まってきた、入り口側の三列は皆ドワーフが座っているからあれが武器一から三課なのだろう、真ん中の三列はエルフ率が高ので薬品課なのがわかる、薬品一課の一人がこちらに向かって手を振っている、ケビンっぽいが無視だ無視。
カイトは道具一課の席にはいなかった、トップスリーに入れないならエースを自称するにはまだ早いな、がんばれカイト。
「そう言えばバレル係長の足の治療は順調ですか?」
最近バレル係長は薬品一課と共同で解呪の研究をしている、道具四課にはほとんど来ないので会うのは久しぶりだ。
「今のところ順調だな、このまま上手く行けば解呪も成功するかもしれないぞ、ケビンに聞いてないのか?」
ん? なんでここでケビンの名が出て来るんだ?
「ケビンがどうして……」
詳しく聞こうとした時に会議室のドアが開く、ざわついていた室内に静寂が訪れる、入って来た人達の先頭が副塔長だからだ。
雛壇の席に五人が座る、副塔長が端で次に白髪の少女が二人(ナムさんかは見分けがつかない)あと知らないおじさんが二人だ、少女の一人が立ち上がり挨拶を始めた。
「皆さんお忙しい中、製造部改革会議に出席頂きありがとうございます、私は総務部のハイトです、それではさっそく始めましょう、手元の資料の一枚目を見て下さい」
見た目は同じだがナムさんではなかった、初めは資料を読みながらそれぞれの課の活動の概要や収支の報告など当たり障りのない内容だった。
そして今後の製造部戦略と書かれた最後の一枚の資料で状況が変わった。
「今よりもより良い環境にする為に開発部を立ち上げる事にしました、開発と製造を同時に行っている現状を変えるためです。
これからは開発部が新しい物を考えて下さい、資料に書いてありますが開発部は薬品をメインに扱う一課と魔道具を扱う二課になります」
資料には開発部の役職が書いてあるのだが何故自分の名前があるんだろう、しかも役職付きで。
開発部
一課
部長兼課長 エルメスト
二課
部長補佐兼課長 ユーリ
課長補佐 アルフレッド
ブレッド
ダストン
…………
…………
…………
「まだ新設で規模が小さいのでエルメストさんには開発部部長と一課課長を兼任してもらいます。
ユーリさんには二課の課長と部長の補佐をして頂きアルフレッドさんは課長であるユーリさんの補佐をしてもらいます、他の役職は部署内で決めてもらって構いません。
この人事に伴い薬品一課は解体、薬品一課の人材はそのまま開発部一課に移動となります、なので資料にはエルメスト部長の名前しか記していません。
道具四課は三課と合併し現在道具四課のミスト課長を道具三課の課長に任命します。
開発部二課は人数が少ないので業務に支障をきたさない程度に元の課から人材を連れて行って良いです、その際には必ず人事に書類を提出して下さい」
えーっと? 薬品一課がなくなって、道具四課は三課と合併、そして自分は開発部に移動でユーリ課長の補佐? 頭が痛くなりそう。
「納得いきません! 道具二課から開発部に行く人が一人もいないなんて、それに新人が課長補佐なんておかしいです! 他にも優秀な人材はいます!」
カタリナさんが声を上げた。
「私の所からも選ばれていないのには何かあるのですか? 明確な理由が欲しいです」
もう一人の発言者は席的に薬品二課の人だ、肌の色が褐色のエルフ、ミレーネさんの言っていたダークエルフなのだろう。
カタリナさんの言う新人の課長補佐って完全に自分の事じゃん、確かにおかしいけど。
「発言宜しいか?」
雛壇に座るおじさんの一人が手を挙げた。
「人事部課長のワーレンです、今回の開発部の人事ですがこれまでに薬や道具の開発に実績のある人や、開発に能力のありそうな人材を選んだのだがそれでは納得出来ないかな?」
「納得いきません、仮に実績があったとしても平等に選出すべきです」
「私も不満です、我が薬品ニ課にも優秀な人材が揃っています」
「あーごちゃごちゃうるせえなぁ!」
今まで一言も喋らなかった副塔長が口を開いた。
「この間倉庫で事件があっただろ? その犯人が道具二課と薬品二課だったって話だ」
「でも、事件の時はもう辞めていました!」
「辞めた後だから関係ありませんってか、そりゃ虫のいい話だな、ようはお前らの所は信用ならねぇって事だ! まだなんかあるか?!」
そこまで言われたらカタリナさんも言い返せない、薬品二課の人も黙ってうつむいている。
「会議の議案は以上です、開発部の始動は来年からになります、今年は業務の引き継ぎや移動する人材の選出などを行っておいて下さい、では皆さんお集まりいただきありがとうございました」
雛壇の五人が立ち上がり会議室を出て行く、司会のハイトさんではないもう一人の少女と目が合うと腰の辺りで小さくガッツポーズをしてドヤ顔をしている、あれはナムさんだな、こんな結果は望んでないんだけどなー。
「ユーリ良かったな、開発に集中できそうな環境になって」
「でも、ミスト達と一緒に仕事してるのも楽しいんだけどな〜、ミストも開発部に来ない?」
「ふふっ、そう言う訳にはいかないだろ」
課長達が楽しそうに話していると、道具三課のジャン係長が振り向き真面目な顔をして
「僕は三課に残るだろうから姉さんの暴走はアル君が止めるんだよ」
それは……無理な気がする。
こうして会議は幕を下ろした。
読んでいただきありがとうございます、主任編はここまでとなります。
次からは課長補佐準備になります。




