24.悪魔の爪
「あなた達! うちの製品に何してるんですか!」
急に声を掛けられた二人組は狼狽えて一人が口を開く。
「あっ……あの……これはその……」
二人組の一人、前髪で目元が隠れた気の弱そうな男がしどろもどろになっている。
「いやー道具四課の製品が気になってね、勝手に中を見てすまなかったね、次はちゃんと許可をもらってからにするよ、ごめんねー」
もう一人の目の吊り上がった気の強そうな男が答えるが、軽い感じで謝りながらも目が笑ってないので逆に怖い。
「えっと、あなた達が見ていたのはそれとあと……そこの二つですね、今から調べますのでそのまま動かないで下さい」
「あっ…………」
「いや、ちょっと見ただけだって、この剥き出しの奴もキチンと梱包し直すから、なっ? 勝手に開けたのは悪かったよ」
そう言いながら製品の前から退こうとしない二人組、バレル係長、そろそろ出てきてくれないかな? チラチラと奥の木箱を見る。
「魔石と回路を少しチェックするだけですからすぐ済みますよ」
と言いつつ後ろに下がりながら奥の木箱にも近づいていく、係長、頼みます。
「魔石と……回路ね、オイ! コイツを始末してずらかるぞ!」
気の強そうな男が腰に差してあった物を引き出す、それは禍々しい呪いのナイフだ、見るのは三度目、突きつけられたのは二度目だ、もー無理です。
「係長! もーいいでしょ、お願いします!」
急いで奥の木箱に縋り付く。
「ハッ、バレルのおっさんならさっき出て行ったぜ、細工はバレちまうだろうが今はお前の始末が先だ」
だってさっきノック返ってきたよ、誰でもいいから助けて下さい。
次の瞬間、木箱の蓋が倉庫の高い天井近くまで跳ね上がった、落ちてきた蓋の砕ける音が倉庫に響く。
やっぱり誰かいたんだ、これがまた疾風さんだったら惚れてまう。
しかし出てきたのは手足の長い暴力の塊、副塔長だった、助かったが惚れはしない。
「お前はこの呪いに縁があるみたいだなぁ」
そんな腐れ縁はいらない。
「それより副塔長、あの二人がウチの製品に細工をして、バレたから自分を始末しようとしてるんです、助けて下さい」
「あー大体聞いていた、内輪揉めなら軽く小突いて終わらせるつもりだったが、そのナイフが出て来たなら話は別だ、お前らそのナイフをどこで手に入れた?」
副塔長の威圧感が半端ない、気の強そうな男も気圧されている。
「兄さんマズイよ……副塔長の強さは……」
「うるせぇ! このナイフで斬りつければ誰っ……!」
喋り終える前に男がウチの製品ごと激しい音とともに吹っ飛んでいった、自分は副塔長を目で追う事すら出来なかった。
「さぁお前、このナイフはどこで手に入れた?」
副塔長が落ちていたナイフを拾い上げで気の弱そうな男の頬にペチペチと当てながら聞く。
「ひっ! ひい!」
「あー早く話せ! もう一人も首の骨が折れてるから早く治療しないと死ぬぞ」
「はっ! はひ……」
もうどっちが悪者かわからない。
「こっ……このナイフは……僕が作りました」
「あっ?! テメーが作った?」
「そっ、そうです、僕は闇と魔の属性を使えるので……それで呪いを付与したんです」
「触媒は何だ?」
「そっ……それは……全て話しますから先に兄さんの治療をさせて下さい」
吹っ飛んだ兄は十メートルほど先で倒れていた、首が変な方向に曲がっていて痙攣している、確かに早く治療しないと死にそうだ。
後ろで自分と副塔長が見ている中、気の弱そうな弟が懐から青い液体の入った瓶を取り出し曲がった首に掛けている。
「自分ポーション持ってないんですよ、あの人持ってて良かったですね」
「お前も命を狙われてるかもしれないんだから一本ぐらい持っておけ」
「でもお高いんでしょう?」
「塔員なら安く買える」
タダではもらえないか。
「兄さん……これからは僕が導くよ……」
弟は次に懐から新たなに瓶を取り出した。
「へー紫のポーションもあるんですね」
「紫だと? おいお前!」
副塔長が止める前に弟が兄に向かって紫の液体を掛けた、すると一気に紫の煙が立ちこめた。
「煙を吸うな! 毒か呪いかわからん!」
自分と副塔長が煙から距離を置く。
煙はすぐに晴れ、先ほどまで兄だった物が紫の塊になっている、弟はすぐ傍に立っていた。
「お前今何をした? そいつを助けるんじゃなかったのか?」
副塔長が弟ににじり寄りながら問いかける。
「副塔長、先ほどの質問に答えます、コレが触媒です」
弟は手に持っていた黒い何かを見せてくる。
「それは……爪か?」
「よくわかりましたね、そうです悪魔の爪です。兄さんのやり方は甘かったみたいです、これからは僕のやり方でやらせてもらいます、兄さん頼むよ……僕はやるべき事を進めるから」
弟がよくわからない事を言いながら爪を落とすと紫色の物がソレを取り込んだ。




