23.謎の不良品
初の道具四課の休みは付与と新技術の練習で終わってしまった。
一つ成功したケビンは続けて成功すべく魔力回復ポーションをがぶ飲みし、挑戦したが失敗に終わった、きっと今日は魔力の使いすぎと魔力ポーション代金で頭の痛い事だろう。
「バレル係長、それにアル君ちょっといいか?」
休みから数日過ぎた頃いつもと同じように作業をしていると部屋に戻ってきた課長から声が掛かった。
「作業の手を止めてすまない、会議室を借りているのでそちらに移動してから話をしよう」
今までに会議室なんか借りた事はないのに珍しい、バレル係長も同じ事を思ったらしく二人で顔を見合わせた後、課長の後について行く。
会議室は五階にあった、この間副塔長と話しをした部屋に似ている、小会議室って感じだ、三人が席につくと課長が話し始めた。
「まず、すまないアル君、経理部の事件だが他の者には言っていないがバレル係長には詳細な情報を伝えてある」
「別に構わないですよ」
むしろ他の人にも言ってくれれば彼女が出来た疑惑も晴らせるのに。
「経理部の方達だが解呪の目処が立ったそうだ、薬品一課が解呪の魔道具を作成出来たからだ」
「薬じゃなくて魔道具なんですね」
「そう聞いている、今のところ経過は順調だから数日中には目を覚ますとの事だ」
よかった、自分も関わっていた事だけに気掛かりではあったから。
「その魔道具だが薬品一課は解呪が上手く出来たらバレル係長の足でも試してみたいそうだ」
係長の足も呪いの所為で義足になっている。
「この足の呪いは強力だが試す価値はあるだろう、もちろん協力はすると伝えてくれ」
「わかった、薬品一課には伝えておこう、経理部の事件については以上なんだが……悪い報告が一点あるんだ……
最近の四課の冷風機に不良品が紛れているんだ、それも特の製品にだ」
特の製品とは機能は同じだが外装やデザインをオシャレにしたいわゆる贈答用の物だ。
「しかし特の物だけではなく全て製品は梱包前に回路のチェックと動作確認をしているぞ、そうそう不良品など出るとは思えんな」
係長の言うとおりである、最初の頃の突貫で作った製品でさえ動作確認はキチンとしていたのだ。
「それでだ、不良品を返品してもらった物がそこにある、魔道回路と魔石を良く見てくれ」
そこにあった冷風機は備え付けじゃなくて課長が持ち込んだ物だった。
係長がカバーを外し中を確認する、自分も隣で一緒に見てみる。
「おや? 魔石は既製品より少し大きいな、回路は……問題ないか……?」
「係長、見えづらい裏側に変な回路がありますよ」
「あぁ魔石に直接繋がる様になっているな、これでは冷風ではなくちょっとした氷魔法がでるぞ」
「私も同じ見解だ、何者かが魔石を大きい物と交換し、余計な回路を繋げたと考えられる」
課長も確認済みか、洒落にならない魔改造をされた訳だが、いったい誰が? ユーリ課長あたりが攻撃性を追加した? んな訳ないか。
「よし、じゃあ犯人を捕まえるのが早いな」
バレル係長に案があるようだ。
「ゴンさーん、交代ですよーってアレ? います?」
塔の第二倉庫の木箱をノックしながら声を掛け、蓋を開けるとゴンさんが寝ていた。
「ふがっ……おーもうそんな時間か……多分何もなかったかのぉ」
寝ていたらわからないよね?
「お疲れ様です、後は代わりますんで」
「おぅ任せたぞ、いやー残業はきついのぉ」
いやあなた寝てたじゃん、ゴンさんがもそもそと木箱から出て、そして第二倉庫からも出ていく。
バレル係長は通常の業務終了時間から倉庫を閉める夜の時間までが怪しいと考えているようだ。
隣にある第一倉庫は武器や防具、薬品やその他貴重品を保管してあるので出入りはもちろん物の出し入れも非常に厳しい、その点こちらの第二倉庫はいろんな部署の物置のような場所になっていて、四課の製品もここを利用している。
製品に細工するならこの時間と場所がやりやすいだろうから見張る事にしたのだが、四課に男性は三人しかいないのでゴンさんと自分も駆り出されたわけだ。
うちの製品が置いてある左右に木箱が置いてあり片方にバレル係長、もう一方にゴンさんと自分が交代で入って監視をしている、係長いるよね?
確認の為木箱をノックしながら聞いてみた。
「係長いますよね? ゴンさんと交代しましたから」
すると「コンッコンッ」とノックが返ってきた。
ゴンさんの代わりに木箱に入り蓋をするとすぐに動きがあった、二人組がうちの製品の所で何やら作業をしている、だが木箱の覗き穴は小さく倉庫内は薄暗いので何をしているのかわからない。
すぐに止めるべきなのか? 決定的な証拠を掴むまで放置したらいいのか? 反対側のバレル係長の木箱には動きがない。
そうこう悩んでいるうちに二人組は作業が終わったらしく梱包し直している様に見えた、反対の木箱は……まだ動かない、もしかして見えてない?
とにかく今はそこの人達を問いただしてみよう、木箱の蓋を思いっ切りずらすと床に落ちる、蓋がガタン! と思ったより大きな音を出し二人組がこちらを振り返った。
「あなた達!うちの製品に何してるんですか!」




