21.道具四課の休日
「おいアル! 夕飯食いに行こうぜ、ウチの課長から美味い店聞いたんだ」
大浴場の湯船に浸かっていると自称道具一課のエース、カイトが話しかけてきた。
「悪い、今ちょっとした事件に巻き込まれてて塔の敷地から出づらいんだ、だから行けないな」
「そう言えばうちの課のミーティングで塔の人間が襲われた事件があったから通ってる奴らは気をつける様言われたけど何か関係あるのか?」
副塔長達は自分だけじゃなく塔全体に警戒を促した様だ、別に口止めされてないから話しても良いか。
「その襲われた人達が経理部の人で……別の事件の手伝いをしてて……解決したのに襲われて……副塔長は怖かった、まぁそんな感じだ」
「なんだよそれ! 全然わかんねぇよ! まさか襲われたのってお前の彼女か?」
「彼女ではないけど、その別の事件を解決する為に彼氏のフリをしてたんだ、だから俺も狙われるかもしれないから総務の人に塔の外に出ない様言われてるんだよ」
「警備課も今日から街の警備を強化する様言われたぞ!」
ザブンと湯船に入りながら筋肉が話しかけてきた、筋肉じゃなくて兄貴か。
「怪しい魔道具を使う奴は片っ端から捕まえろと言われたがそんな奴はいるのか? きちんとした人物像があればこの筋肉で捕まえてやるんだがな!」
筋肉で捕まえるって何を言ってるの? まぁ兄貴らしいか。
「気を付けろと言われても儂は飲みに行くがな」
湯船から上がりながら親方が脱衣所に消えて行く、ドワーフは飲みに行かないと言う選択肢はないのだろう。
「あっあのさ、僕達の所にもその話しとは別に呪いを解呪する薬の開発を早くするよう総務に言われたけど……関係あるのかな?」
ミレーネさん達を起こす薬の開発を薬品一課に頼んだのか。
「ケビン、呪いで眠った人を起こす薬って作れるの? 襲われた経理部の人達が呪いで眠ってしまったんだよ」
「やっぱり関係あったんだ……解呪薬の開発は元々してたんだけど、まだ上手くはいってないんだ……被害者がいるなら頑張らないと……」
呪われました、はい解呪とはならないのか、怪我はポーションとかですぐ治るのに。
「さて、俺はこれから夜勤だ、皆が安心できるよう筋肉で犯人を見つけてやろう!」
筋肉で犯人が見つかれば苦労はしないですよ兄貴。
「なんだよ、アルの昇進祝いと彼女が出来た記念にって食事に行こうと思ってたのになー」
おーそうだったのか、見た目はヤンキーみたいだがカイトは気遣いできる大人だなぁ、彼女は出来ていないけどね。
「悪いね、落ち着いたら行こう」
事件が解決しないとおちおち飯も食いに行けないよ。
「アル君大丈夫か?」
朝の作業中に課長に声を掛けられた、課長にはミレーネさんのストーカー被害の話しも、その後の事も全てしてある。
「塔の敷地外に出られない事以外は特に不自由はしてませんよ」
寮も食堂も大浴場も塔の敷地にあるから出る必要はないのだけれど……。
「明日は休みなんですよね?」
「そうだ、冷風機の製造も次の商品の開発も一段落してるからな、これからは交代ではなくきちんと課で休みを取れる様にしたのに、なんとも間が悪いな」
休みでも昼までゴロゴロして街を散策するぐらいしかしてないけど、街に出られないのはつまらない。
「しょうがないですよ、事件が解決するまでは大人しくしています」
ストーカー男が塔の警備員だった事を思えば塔の敷地内も絶対ではないけど街に出るよりかは安全だろう。
「また君が狙われるかもしれないしな、マルカス係長とミレーネさんは同郷なのだろう? それは関係ないのか?」
「たぶん関係ないと思いますが……」
マルカス係長とはたまたま知り合いだったからストーカー事件に関わったが、オルタニア王国が関係しているとは思えない。
「そうか、君はほら、あれ、だから、ふふっふふふ」
王子だからと言いたいのだろう、課長はこの話題になると楽しそうだな。
「それ、は関係ないですよたぶん、明日は街には行かないので作業場を借りてもいいですか?」
「あぁ構わないぞ、戸締りはキチンとしといてくれ」
やる事がないなら魔力付与の練習でもしとこう、そうだ、ルイさんにも声を掛けてみようかな。
「で、なんでお前がいんの?」
「僕も今日たまたま休みだったんだよ、それでねルイ様の……」
「ケビン、余計な事は言わないで……今は四課のルイでいたいから……」
「……わかりました」
今日の休みは午前中にルイさんと魔力付与の練習をする事になっていたのだがそこに何故かケビンが付いてきた、二人ともエルフだし知り合いみたいだが、その事をケビンに聞こうと思っていたのにすっかり忘れていた、何かルイさんも知られたくなさそうだから聞きづらくなった。
「まぁいっか、ルイさんには綺麗に魔力を貼り付けるコツを教え欲しいんですよ、ケビンはどうする? 一緒に練習するのか? それとも見学しにきたの?」
「僕も他の人の魔力付与には興味があるから少し見させてもらってその後一緒に練習させてもらえるかな? ルイさ……んもそれで良いですか?」
「アルが良いならそれで良い」
「よしっ! じゃああっちの作業台に空の魔石やいらない板とか用意しといたからその辺を使って練習してみよう」
こうして三人で休日の魔力付与練習が始まった。




