19.ストーカー被害
「お前、ミレーネのなんなの?」
やっと来た、白の塔までもう少しの人通りの少ない貴族街、このタイミングでミレーネさんの事を聞いてくるのは手紙男で間違いない。
「えーと、何の事でしょう?」
とぼけながら振り返ると誰もいない、確かに聞こえたと思ったけど?
いや、いるな、夜だから分かりにくいが人間一人分の空間が歪んでいる。
「お前は必要ないよな? ミレーネに必要なのは俺だからな、はははっ」
空間の歪みから声がする、それに言っている事は意味がわからないがヤバい奴なのはわかる。
護衛の人に助けてもらいたいけど、どこにいるかわからないし、遠目には自分一人にしか見えないだろう。
「誰かいるんですか? ミレーネさんの知り合いですか?」
「お前がミレーネの名を呼ぶな!」
キレどころがわからない、時間を稼いで護衛の人が異変に気付いてくれるのを待とう。
「ちょっと話しを聞いて下さい、あのですね……」
「うるさい! お前がいなければ……お前が……お前のせいだ」
お話にならない、すると空中に禍々しいナイフを持った手だけが現れた。
「そうだ、ハハっ、お前さえいなければいいんだ」
話し合いは無理そうなので逃げよう、もう一度振り返り走り出す。
すると道路にはドレスの用なものを着た女性とその先に冒険者風の男がいる、迷わず冒険者風の男の下に行き現状を訴える。
「あそこに見えにくいですが手紙男がいます、武器を持っているので気をつけて下さい」
「あーなんだバレてんのか、気付かれないうちに殺っちまえばいいのに」
そう言うとこちらの手首を掴む、あれ?
「もしかして護衛の方ではない?」
「護衛雇ってんのか、オイ! 早く始末しろ!」
ナイフを握った手が近づいてくる、振り払って逃げようにも掴まれた手首がびくともしない。
「ちょ……待って……」
残された腕で防御するとナイフが弾かれた、持っててよかった防御魔道具。
「チッ、魔道具か、もう一度だ!」
マズイマズイ、今の一回で指輪と腕輪が壊れたから次は耐えられない。
「通るよ〜」
間延びした声と共に風が横を通り過ぎると手首を掴んでいた男が倒れた、その先にさっき見たドレス女性が剣を携え立っている。
「あ〜姿隠しのマントかな〜? ま〜いっか」
女性が空間の歪みに剣を振ると歪みが切り裂かれナイフを持った男が現れそして倒れる。
「ん〜他にはいないみたいだね〜、じゃあ警備兵呼んで来るからそのまま待っててね〜」
「あっ」っと言うまに走り去ってしまった。
残された倒れた手紙男と冒険者風の男、死んではいないようだ。
ドレス女性が警備兵を連れて戻って来た。
「あ〜アイツらは警備兵が連行するから任せるとして〜それよりケガはない? アイツの持ってたナイフ、魔法か呪いが掛かってるっぽかったけど〜?」
「とりあえずケガはしてないですし、身体に不調は無さそうです、防御の魔道具は壊れてしまいましたが……
あの、助けていただきありがとうございました、あなたが護衛の冒険者さんでしたか?」
「そ〜よ〜私が護衛の冒険者、疾風のリリィ、アンタたちがオシャレな店ばかり行くから〜私もこんな格好してるの〜」
あのオシャレなオープン席に冒険者風の格好してたら目立つか、どの人が護衛か聞いておけばここまで危ない目に合わなかったかもしれない。
さっきは暗くてよく見えなかったがリリィさんはまだ若く今の自分と変わらない十代後半見える、それであれだけの腕前なら大した物だ、でも自分の事を疾風って呼ぶのは恥ずかしくないのかな?
その日は一応そのままリリィさんに塔まで送ってもらった、これでストーカー事件も一段落したはずだ。
「アルさん申し訳ない、そこまで危険な事はないと思っていたのですが……」
翌日経理の応接室でマルカス係長に謝られた。
「魔道具と護衛の方のおかげで怪我はなかったし
犯人も捕まって良かったですね、あっ、でも魔道具は壊れてしまいました……」
「いいんです、アルさんが無事なら、そのための魔道具ですから、今犯人達は街の警備詰所で治療されておりたぶん今日にも塔に引き渡されるでしょう、そこで尋問されて今回の事件の理由も明らかになるはずです」
ストーカーに理由もなにもない気がする、でも冒険者風の男は仲間なのか雇ったのかそこは気になった。
「そういえばミレーネさんはどうしたんですか?」
「最近は残業が出来なくて仕事が溜まっていたから今頃机に張り付いて書類と格闘してますよ、しかしこれで不安はなくなります、アルさん改めてありがとうございました」
これで一人の女性をストーカーから守れて自分の経費も落としてもらえて一件落着だ。




