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01.自由と混沌の都市サロニア

「ふふん! 後輩君なんでも聞いてくれたまえ!」

 明るめの赤髪をした女性が自分に向かいながら話しかけてきた

「おいアンナ君、この輸出の書類の数字がおかしいぞすぐ直してくれ」

「あっ! すいません課長すぐ直します」

「あぁ頼む、あと代理を付けなさい」

 先輩は書類を受け取るとそそくさと自分のデスクに向かい修正し始める、何でも聞いてくれるんじゃなかったのか……。

 課長代理、青い髪をロングにし開いてるのか分からない糸の様な細い眼をしている女性だ、この世界では珍しくスーツっぽい物を着ているからかすごく仕事が出来る風に見える、代理が付くって事は別に課長がいるって事なんだろうか? 後で何でも教えてくれる先輩に聞いてみよう。

「アル君はその荷物を武器三課にこの書類と一緒に届けてくれ」

「はい! 了解です! 武器の三課ってどこですか?」

「あぁそうだな、ルイ君ちょっと新人君を案内してやってくれ武器三課だ」

 課長代理が言うと薄い水色の髪をショートカットにした女の子が近付いてきた、尖った耳が見えるのでエルフなんだろう。

「………付いてきて」

「あっはい!」

 女の子が書類を、自分が木箱を抱えながら廊下を歩く。

「武器三課って遠いんですか?」

 まだ部屋を出たばかりだがもうすでに木箱を持つ腕がプルプルしてきた、少し鍛えないと。

「………もう少し」

 そのもう少しがなかなか長かったが何とか無事に荷物を届けられた、明日は筋肉痛だ。

 たしか課長代理がルイさんと呼んでたよな、荷物を持っている時は余裕がなくて話せなかった。

「ルイさん? でいいんですよね?」

「……そう」

「挨拶が遅れましたがアルフレッドです、よろしくお願いします」

「……そう」

 気まずい

 この後何度か話しかけたがほぼ「……そう」しか返ってこない、道具四課の扉が見えてきた時

「……どうせすぐにいなくなる」

ルイさんがボソッと呟く

「自分がですか? そんな事無いですよ」

 まだ働き始めたばかりなのに何でそんな事言うのだろう?

「この課に先はないから……」

 そう言って扉を開けると彼女はさっさと自分のデスクに戻って行った。

 白の塔商品製造部道具課四課

 この職場は何か問題があるらしいが配属されたからには頑張って行くしかない、まずは異世界社会人生活に慣れる事からだね。




 働き始める一月程前。

「ここが自由都市サロニアであそこに見えんのが坊ちゃんのお目当ての白の塔だ」

「依頼はサロニアまでの護衛だがこの先、治安が悪いから塔まで送ってやんよ、まっサービスてやつだ」

 護衛の冒険者が馬車を降りながら声をかけてきた、馬車で十日ほど一緒に過ごした事で少し仲良くはなったが名前は教えてくれなかった。

 乗り合い馬車は都市の入り口までしか行かないのでここからは徒歩で行くしかない。

「ありがとうございます、けどそんなに治安が悪そうに見えませんけど」

 都市入り口近くは王国風の建物が並ぶ普通の街並みに見える、その先にはこの世界にしては高い、白い塔が建っている。

「この都市はあの塔中心に発展してきたし、三つの国の境界にあるから国境も曖昧で色んな奴が集まって来るのさ、だからほらっ」

 ある通りを過ぎると急にスラム街の様な街並みに変わった、またいくつか通りを越えると酔って寝てる男や半裸に近い格好の女の人達が客引きをしている、昼間だから大半は閉まっているがこの辺りは歓楽街なのだろう。

「犯罪者やワケありが集まるのさ、まぁ俺達冒険者やお忍びで遊ぶお貴族様には丁度いいんだよ、坊ちゃんにはまだ早いぞ」

 さらに進むと白を基調にした普通の街並みに戻っていった

「この辺りからが本来のサロニアの街だ、人口が増えすぎて外へ外へと広がっていったって訳だ」

 サロニアの成り立ちを聞きながら塔の方向に向かうと今度は大きな屋敷や城みたいな豪邸が建ち並び始めた

「塔の近くは貴族街だ、まさに住む世界違うって訳さ」

 ガハガハと笑いながら教えてくれた。

 なるほど塔を中心にドーナツ状に


 貴族街

 普通の街

 歓楽街とスラム

 三個の国に接してるからそれぞれの国の街


 となってる訳か、全部合わせると都市の規模としてはかなり大きいな。

「自由都市なんて言ってっけど、周りからは自由と混沌の都市って言われてるぜ」

 自由と混沌……別にスラムや歓楽街なんか何処の都市にもあるんだから混沌なんて言葉が入るのが不思議だけど

「独立都市として成り立ってるのはこの白の塔のおかげであり、混沌の原因でもある訳だ、ほら! そこが塔の入り口だ」

 なんか意味深な言い回しをされたが気付けばもう塔は目の前であった。

 近付いてみるとかなりの高さがある

 一、ニ階部分は横に広く、三から五階部分から徐々に狭まってきて六、七階あたりから塔として上に伸びている

 何階立てなんだろ? 二十階位ありそうだ。

「坊ちゃん、田舎もんみてえに口を開けてないでここに依頼完了のサインをしてくだせえ」

 前世ならいざ知らずこの世界でここまで高い建物は初めて見た、田舎者ではないけど渋々サインをする。

「ここまでの護衛とこの都市について教えて頂きありがとうございました」

「依頼完了だな、坊ちゃんも混沌に飲み込まれないよう気をつけてな」

 そう言うとこちらを振り返らず去っていった。

 もう一人自分の後ろに付いていた冒険者がペコリと会釈してその後を追う、この人は一言も喋らなかったけど常に自分の後ろ側を警戒してくれていた。

 冒険者と言うと荒くれ者のイメージがあったけど気さくで良い人達だった、父上が付けてくれたからきっとそれなりのランクの人なのかもしれないが、何かあったらあの人達に頼もう、あっでも名前知らないや。



 それから中途採用試験が五日後にあると聞いて街の宿で五日待ち、試験を受け(試験は筆記と面接)合否は三日後といわれまた三日待ち、見事合格! の後は研修と言う名のすべての部署を一日ずつたらい回しされる事二週間。

「貴方の配属先はここに決まりました」

と言われて叩いた扉には、道具課四課と書かれていた。

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