00.そうだ!サラリーマンになろう
そうだ!サラリーマンになろう
色々と考えた結果がこれだ
前世の記憶を思い出し自分が異世界に転生した事に気づいたのは物心ついた頃、そりゃあ最初はワクワクしたもんだ。
チート能力を持って魔王を倒す冒険者になる
前世の記憶を使って商売で無双する
女の子にモテまくりハーレムを築く
しかし現実は非情である。
チート能力はないし、素人の知識で儲けられるほど商売も甘くはない、モテ期は一向にやってこない、唯一生まれがある国の第四王子と富裕層だったのは幸いで、これが貧民だったら選択肢すら少なくなる所だった。
だがよく考えたら地位もお金も名声も欲しいわけでもなくこの新しい人生をのんびりと過ごしたい事に気付けば後は簡単な事。
まず権力争いをしたくない、これが重要。
権力と言う物には勝手に人が群がる、自分にその気がなくともだ。
やはり王城は出よう、曲がりなりにも第四王子がそこら辺の商会や店舗に就職する訳にも行かないので国も出た方が良いだろう。
かと言って今は戦争が小康状態とは言え他の国は論外、となると国境の先にあるどこの国にも属さない自由都市が良さそうだ、そこに人種も身分も問わない組織があるのでそこを目指す。
異世界でサラリーマンになる、目標はこれで行こう。
「貴方は王になるのです」
幼少の頃から母に言われ続けた言葉である。
これが普通の子供なら素直に従って王を目指したかもしれないが、こちらは前世の記憶を持つ普通ではない子供。
立場が上がれば責任も増える、ましてや王ともなれば国民を導かなくてはならない、そんなのはごめんである。
そもそも偉くなりたいとかお金持ちになりたいとかないし、責任のない下っ端でそれなりに暮らせれば良い、前世でブラック企業に勤めそこそこ出世して大変苦労した経験があるからだ。
そして迎えた十六歳のある夜。
この世界の学院を卒業し本来なら王族の教育の一環で地方都市の領主補佐の仕事に就く、だがその都市には行かない。
部屋でせっせと荷造りしていると
「よぉアル、今大丈夫か?」
ノックとともに扉の向こうからエル兄さんの声が掛かる
エルナーク第三王子、外交に長け各地各国に飛び回っているが今回はたまたま王城に戻ってきていた、他の国の話や自由都市の話もこの兄に聞いた事だ。
「開いてますよ、荷造りで少し散らかってますがどうぞ」
兄を招き入れ魔道ポットでお茶を注ぎ入れる。
「お前は昔から何でも自分でやるよな、メイドはどうしたんだ?」
王族たるものメイドや召使いにやらせるものだが前世が一般庶民の自分には未だに慣れない、それに
「母上にバレるから今日は遠ざけました」
「ははっそうか、カトレア叔母上は発狂しそうだな、後は父上が何とかするだろ」
カトレアは自分の母である、兄が三人妹が一人の五人兄妹であるが母親は全員違っている、今回の就職にあたっての根回しを父上と兄達が手伝ってくれたのである。
「父上と兄上達にはご迷惑をお掛けしましす」
国王である父と兄妹の関係は良好なのだが兄妹それぞれの母親達が自分の子供を王にしたいが為に歪み合いドロドロの権力争いをしていた。
「気にするな、カトレア叔母上もお前が出て行って少しは大人しくなるだろう」
そしてお茶を飲みながら軽く談笑をし、そして
「外に出て見聞を広げるのは良い事だ、だがここはお前が帰って良い場所であり、心配している家族がいる事は忘れるなよ」
そう言って兄は戻って行った。
明日は早起きだからベッドに潜りながら考える。
この世界に転生して十六年、なぜ転生したのか?この世界の常識は? 魔力? 魔物? まだまだわからない事だらけだが良き家族(母達はアレだが)に良き環境(王族は当たりでしょ)と恵まれてるとは思う。
就職を機にいろんな事を調べてみるのもいいかもしれない、なんて事を考えてたらいつの間にか寝落ちしていた。
日が昇る数刻前
大きな荷物を背負いソロソロと王城の裏門へと向かう不審者、時折り見廻りの衛兵とすれ違いギョッとされるが会釈するだけで素通りさせてくれた、この辺りは父上の根回しが行き届いている。
そして裏門を出ると道案内兼護衛のニ人の冒険者が待っていた、この人達も父が準備してくれたのだ、ありがたい、過保護? いいや学園以外あまり外に出なかった自分には丁度いいかも。
さぁ出発だ!
目標は低くサラリーマンの窓際族を目指して頑張ろう!




