15.波乱の宴席
今日は打ち上げの為、皆早めに業務を終わらせて出て行く。
打ち上げ会場に行くのは誰かについて行けばいいや、と思ってたらみんな一旦寮や家に帰ってから直接行くみたいでこのままだと場所がわからない、丁度いい所に主任が残っていた。
「主任、レストランの場所知ってます?」
「ガルフだろ? 知ってるぞ、一緒に行くか?」
「お願いします」
同行者ゲットだぜ。
レストランの場所は塔から結構離れてるが馬車に乗るほどでもないらしい、主任と一緒に徒歩で向かう。
「ガルフって有名なんですか?」
「あぁ安くてうまいからな、俺も家族でたまに行ってるぞ」
そう言えばこの人、嫁が二人と娘が四人いるんだった、うらやましいな。
塔の近くの貴族街を抜けると、人が多くなってきた、ガルフはさらに進んで繁華街の中央付近にあるらしい。
普通に歩いているが主任の右脚は義足だ、気になっている事を聞いてみる。
「主任の右脚って魔法とかポーションみたいな物で治らないんですか?」
この世界の魔法や薬は優秀だ、大怪我なんかでも簡単に治ってしまう、部位欠損の治療方法があってもいいと思うのだが。
「治らなかったな、この足の怪我は特殊だったんだ」
「特殊? ですか、普通なら腕や脚を失くしても治す事は出来るんですか?」
「一般的な部位欠損なら高い治療費を払うか希少なポーションで治す事は出来る」
すごいな、腕や脚も生やす事が出来るのか。
「この脚もポーションを使ったり、高いお布施を払って法国の大司教に診てもらったりもしたんだが治らなかった、なんでも傷口が呪われてるらしい」
「じゃあ呪いを解除して治療とかはできないんですか?」
「その呪いが特殊なんだ、法国の大司教ですら解除が出来ないんだとよ、あとは幻のエリクサーみたいなもんじゃねえと治らねえな、ほら! そこがガルフだ」
主任と話してるうちにいつのまにかガルフに着いていた。
レストランガルフは混んでいた、一階はオープン席で百席位ありそうだが、丁度夕食の時間に重なった事もありほぼ満席だ。
予約名を告げると二階に案内される、どうやら二階が個室になっているらしい。
個室に入るとアンナさん他数名が座っていた。
「お疲れ様で〜す、主任はそっち、後輩君はここに座って、課長は人事部に呼ばれて時間が掛かるから先に始めててくれだって」
しばらくすると続々と四課の面子が集まり、料理も並べられていく、残すは課長代理だけになった所でアンナさんが声を上げる。
「課長は遅れるから先に始めましょう、料理も冷めちゃうからね、えーと乾杯の挨拶は……係長お願いします……」
課長代理がいないと役職が一番上なのは係長なんだよね。
コップを持ちながら前に出て係長が話し始める。
「ンマー皆さんお疲れ様でした、あたし達の頑張りで大きな山場は超える事が出来ました、四課はもっと大きくなるはずよ、あたしが課長になった暁にはまず役職を変えてそれに他の課とも連携を……」
「ちょっと待ってくれ! あなたが課長に? どう言う事だ」
主任が立ち上がり話を遮る。
「ンマーバレル様心配しなくても大丈夫です、あなたは課長補佐、あたしの補佐をして頂ければと……」
「そんな事はどうでもいい! ミストさんがいるのになぜあなたが課長になると言っているんだ!」
「ンマーミストさんですか……あの人は重大な規約違反をしました……残念ながら今回は部長も擁護出来ないでしょう、必然的にあたしが次の課長になって……」
「課長が何をしたって言うの!」
今度はアンナさんが立ち上がり話しに割って入る。
「ンマーミストさんは連合国に融通するよう書類を改竄してたのよ、証拠はすでに総務に提出したわ、営業のイラーク課長はクビになるみたいだけどミストさんはどうなるのかしら?」
「そんなはずない! 適当な事言わないでよ! オバさん!」
「オッ……オバ……ンマーミストさんが人事に呼ばれているのもその件じゃなくて?」
「そっ……それはわからないけど……」
「ンマーこれからはあたしが課長になるんだから口の利き方には気をつけなさい!」
アンナさんが力なく椅子に座る。
「だって……絶対そんな事ないもん……」
係長の急な告白にみな戸惑っている、一番頼りになりそうな主任は腕を組み目をつぶって何か考えているようだ。
課長代理を中心にまとまっている四課なのに、このオバさんが課長になったらバラバラになってしまう。
どう話を切り出そうか考えていると個室のドアが開き場違いな明るい声が響く。
「おつかれ〜! 冷風機を作った僕も打ち上げに参加させてもらうよ〜四課水入らずの所悪いね〜!」
ユーリ課長と
「遅くなってすまない、ん? まだ始めてなかったのか?」
話題の中心、課長代理が来てくれた。




