13.道具一課
「皆おはよう準備のできた者から作業を始めてくれ」
今日明日の二日間で二百五十台以上作らなければいけない、老人コンビのおかげて魔力節約と時間短縮は出来たが今のままでは間に合わない、さらに追い討ちを掛けるように営業部イラーク課長が怒鳴り込んできた。
「なぜ連合国を先に作った! その分を帝国に回せばよかっただろう!」
「それは出来ない、連合国の納期もギリギリだったからだ」
「小国の発注など、どうでもよい! 今は大国との繋がりを優先すべきだ!」
「それは営業部の方針か? それとも貴方の考えか? 小国の仕事だって貴方の部下達が一生懸命取ってきた物だ、それを蔑ろにするのは関心せんな」
「あいつら仕事? 小国相手にちまちま商売してるだけだろ! 小国との繋がりよりも帝国を優先するのが当然だ! あいつらはそれがわかっとらん! ガストの奴も報告もせず勝手に行きおって!」
「貴方の考えは方わかりました、今回は何とかしますが今後無茶な要求はお断りします!」
「はぁ? 何を言っている! 営業が売らなければお前らの商品は売れないのだぞ!」
「だが商品がなければ営業も売る物がないと思いますが?」
扉を開けて入ってきた金髪のイケメンが口を挟む。
突然現れた金髪イケメンは五人ほど引き連れている、その中にカイトもいた、と言う事は道具一課か?
「失礼します、ミストさんよく言ってくれました、我々製造部は営業部の言いなりになる必要はありません」
「なぜお前がここにいる! さっさと持ち場に戻って魔剣を作れ!」
「そう言う所ですよイラーク課長、我々は貴方の奴隷ではないんです、今回の件も含めて貴方の帝国贔屓を総務部に報告しました、今頃営業部に監査の人達が向かっているのでは?」
「な……監査だと? おっお前達納期は明日だ! 必ず間に合わせろ! いいな!」
イラーク課長が急いで出て行き、一課らしき人達が残った。
「四課の皆様お騒がせしました、私は道具一課課長のクランです、我々は四課の仕事を手伝いに来ました」
なぜ一課が手伝いに?
「さぁさぁ我々は何をすれば良い? 魔力付与はお手の物さ」
「クラン課長、一課の方、忙しい中来て頂きありがとうございます」
「同じ道具課仲間じゃないですか、ましてや麗しきミストさんの頼みは断りませんよ、そうだ、四番街の入り口に美味しいレストランがあるのてすが今度ご一緒しませんか?」
金髪碧眼で絵に描いたようイケメンだが軽薄な人っぽい。
一番話しを聞きやすいカイトを呼ぼう。
「おーいカイト」
「おっアル、一課の面子はすごいぜ、課長を筆頭に実力のある先輩たちだ、俺も四課の手伝いをしたいから無理矢理入れてもらったんだ」
「ありがとう、でも何で一課が手伝ってくれるの?」
「あの営業のおっさんウチでも無茶振りしてくるんだよ、白の塔では特定の国を贔屓にすると処罰の対象になるらしいから総務部に報告してやったんだ、そしたら今回四課に無茶を言ってるって聞いたから手伝いに行こうって話しになったんだよ、四課から手伝いの要請もあったしな」
今のままでは間に合わないから手伝いを頼んでたのか。
「他にも声を掛けてるみたいだぜ、さぁ先輩程ではないけど俺も魔力付与は得意だぜ、チャチャっと作って営業の奴を見返してやろうぜ」
頼もしい援軍が来てくれた。
一課の精鋭はさすがだ、ゴン爺さんよりも正確な付与だし、ルイさんぐらい丁寧な付与も早い時間で終わらせてくる、そんな中でもクラン課長は別格だった。
「風魔法は得意じゃないんだよなぁ」
とか言いながら一番素早く丁寧に仕事を終わらせている。
「やあやあ赤毛のかわいいお嬢さん、三番街に美味しい焼き菓子をだすお店があるんだけど今度一緒に行かないかい?」
仕事の合間にナンパする余裕もあるようだ。
「話し掛けないで下さい! 指が吹き飛んで失明したらどうするんですか!」
アンナさんに余裕はないようだ。
「ミスト〜遅くなったけど手伝いに来たよ」
ユーリ課長も来てくれた。
「なんか仕事が重なっちゃって、全部ジャンに押し付けてきた! 三人連れてきたけど魔力付与は得意じゃないから組み立ての方に回ってもらうね、僕は付与の方に行くよ」
さすがは設計者、何をすべきかわかってらっしゃる。
「あの〜すいません」
「なんだケビンまた邪魔しに来たのか」
「わ! アルか、またってどう言う事? 邪魔もしてないよね?」
ケビンが箱を持ってやって来た。
「これウチの課長から、人は送れないけどこれを使ってくれって」
箱には薬瓶が二十本程入っていた。
「あ〜疲れた、なになに差し入れ?」
丁度アンナさんが休憩に入った所だ。
「これ魔力回復のポーションじゃない? えっ? 高いんだよ、それがこんなに……売ったらいくらになるかしら……」
差し入れを売ろうと考えないで欲しい。
「薬品一課のケビンです、これはうちの課長からで、申し訳ないが人員は割けない、だそうです」
「魔力ポーションか、しかもこんなに……薬品一課の課長はエルメスト課長だったか? あまり面識はないがよろしく伝えてくれ」
「はい! 課長に伝えておきます」
ケビンがポーションを置いて帰ろうとした時、ルイさんが近くにいた。
「ケビン……久しぶり」
「ルイ様、お久しぶりです……エル様が早くルイ様に戻って来て欲しいと言ってましたが……」
「今は道具四課の事を優先したいと伝えて」
「……かしこまりました」
意味深な会話をしてケビンが帰っていった、同族のエルフだから知り合いだったのかな、ルイさんには聞けないから今度風呂でケビンを捕まえて詳しく聞いてみよう。
そのあとも武器課のドワーフ達が組み立てや梱包を手伝いに来てくれたり、道具一課と三課の人達は入れ替わりで手伝いに来てくれたりして作業はどんどんと進んでいった。
終わってみれば出来上がった冷風機は二百台を越えていた。




