11.追加発注
「おはよう、皆昨日はありがとう、準備できた者から作業を始めてくれ」
今日の業務が始まる、二課の嫌がらせで課長代理が倒れでもしたら、四課は回らなくなるところだった、道具二課は絶妙なタイミングで仕掛けてきたな。
しかし無理かと思われた数もだいぶ捌けてきた、法国分は納品済みだし連合国分は今日にも数が揃いそうだ、我が母国の王国分は納期を遅らせ後回しになってしまったがタッチの差で王国担当者が最後に来たから仕方ない。
「アル君魔力は大丈夫か? 昨日は無理をさせたな」
作業を開始して少しすると課長代理が声を掛けてきた。
「問題ないです、今まで魔力切れになった事ないんですよね」
「魔力量が相当多いのだろうな、それにしても魔力付与した物が重くなるのは初めてだ、魔力を入れる速度なのか君の魔力が特殊なのか、今度検証してみてもいいかもしれんな、ユーリに頼めばいろいろ調べてくれるだろう」
ユーリ課長の実験動物になる未来が見える。
「課長代理、営業部の方が来てます」
「あぁ今行く、ではアル君無理せずに」
営業部? 追加かな? まぁ無理だけど。
すぐに誰かの怒鳴り声が聞こえてきた、営業部の人だろう課長代理と話してるようだ。
手を止めて様子を見に行くと、何人か集まっている。
「つべこべ言わずに用意しろ!」
「何度も言う様にこの期日では無理です、先に納品しなければいけない所もありますし」
「そんな物後回しにすればいいだろう!」
「しかし……」
頭の禿げた髭面のおっさんが吠えている、野次馬にアンナさんがいたので聞いてみよう。
「何かありました?」
「営業部の課長さんが帝国の仕事を取ってきたみたいなの、量が多いみたいね」
帝国、北にある大国だ、南側とは山脈などで隔てられているからあまり南側三国とは国交がある訳ではないはずだ。
「貴様ら道具課は黙って道具を作ってればよいのだ! いちいち口答えしおって! 期日は三日後だ! 必ず間に合わせろ!」
暴言を吐きつつ禿げたおっさんが出て行く。
「皆、話しがある集まってくれ」
皆作業の手を止めて集まる。
「営業部のイラーク課長が帝国の仕事を取ってきた、冷風機を三百台、三日後には製品を持って塔を出発したいそうだ」
「無理じゃないですか?」
「連合国分もまだ終わってないのに……」
「王国分に至っては手付かずですよ」
皆が思いを口にする、今の四課で作れる冷風機の数は一日七十台程だ、今日連合国分の残りを作り、明日明後日で王国分百五十台を仕上げる予定だった、それなのに三日後に三百台は無理すぎる。
「新しい魔道具は大量に発注がくる、あとはそれぞれの国やギルドそれに商会が似た物を作るから最初だけだ、最初さえ乗り切ればこんな無理な発注は来ない、私は営業ともう一度交渉するから皆は出来る限り数を揃えてくれ」
「「「はい!」」」
皆無理とわかっててもやるしかないのだ。
「課長代理、王国の担当者との交渉に自分も同席してもいいですか?」
王国なら少しは顔が効く、はず?
「別にかまわないがアル君、アルフレッド・オルタニア、気にはなっていたがオルタニア王国の関係者なのか?」
「別に秘密な訳ではないですが一応第四王子なんで……」
「……!まさか王子とは……」
「白の塔では身分は関係ないですし、それに権力争いとかが嫌で、出奔と言うか家出みたいな状況なんで」
「まぁ人生はそれぞれだが……王国担当者にもこれ以上無理を言えないところだったが君がいれば問題解決の糸口が見つかるかもしれないな」
すでに王国分は数を減らし納期も遅らせている、これ以上に無理を言うのは厳しいだろう、もしかしたら第四王子と言う立場が役に立つかもしれない。
さすがは営業部、きちんとした応接室があり薄くないお茶まで出てきた。
課長代理と営業部に訪れ、イラーク課長、それに連合国担当者と王国担当者に面会を求めてるところだ。
「お待たせしました、課長は不在ですわ、何か御用だったのかしら?」
「おいおいこんな所で油売ってねえでさっさと冷風機作ってくれねえか? もう出発する準備は出来てんだ」
王国担当者のロイヤルさんと連合国担当者のガストさんだ。
「実は……」
課長代理がイラーク課長の急な注文とそれに伴い連合国分と王国分の納品をどうするか相談しに来た事を伝える、二人は課長が発注してきた事を知らなかったらしい。
「あのおっさん横やり入れやがった! じゃあ納品はどうなるんだ?」
「今日連合国分は出来上がる予定だが、そうすると帝国分が間に合わなくなる、それに王国分がさらに遅れてしまう」
「連合国も納期を二日遅らせてギリギリなんだ! それにロイヤルの方は……」
ロイヤルさんを見ると青白い顔をし口と手がわなわなと震えている。
「わ……わたし、今回の商談……とてもがんばったの、貴族の方の伝手を使って……やっと王宮と繋がりを作る事が出来たの……それなのに……信用を失ったらもう王国で……営業は出来ないわ……」
テーブルに突っ伏してワンワンと泣き始めた、金髪の縦ロールが揺れている。
「ロイヤルはこんなナリをしてるがただの庶民だ、王国の貴族どもを相手にするには見た目も重要だからな、今回は王宮と直接取引が出来たって喜んでたんだ……なぁ何とかならねえか? 無駄かもしれねぇがうちの課長にも言ってみるが……」
「あのー法国は法王庁が一括で買い上げてましたよね?」
「あぁ? んだテメーは!」
「申し遅れました私はオルタニア王国第四王子アルフレッド・オルタニアです」
権力は使いたくないけどそうも言ってられない。




