#2 待ち構える者
歩いて三十分。目の前には、先程までの殺風景な光景とは一変した巨大な街並みが広がっていた。
整然と立ち並ぶ古代的な建築物、その間を行き交う様々な人々。どこか奇妙な空気が漂うその景色に、俺は思わず圧倒されて足を止めた。
「ついたわ。ここが通信者がいる街、⋯いや、国、「ドラゴンカントリー」よ。」
ハルカは足を止めず、誇らしげに胸を張って振り返る。この街には確かに人が住み、生活が営まれているのだということが、遠目からでもはっきりと見て取れた。
「個々の住民の五割は、私たちと同じ「夢想者」。残りの五割のうちの三割は「通信者」、残りの二割は感情がない「無心者」。」
「無心者?」
聞き慣れない単語に、俺は首をかしげる。
「そう。今でいう「AI」のようなもの。この街は無心者の割合が他に比べて多いから、道場がある。行ってみる?」
「うん!」
元の世界へ帰る手がかりを掴むためなら、どこへだって行く。俺は力強く頷いた。
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我々が道場に向かって賑やかな街並みを歩いている途中で、一体の「無心者」と出会った。
「コンニチハ、ハルカサン。」
関節部が金属で覆われたロボットのような存在が、平坦で無機質な声を上げてこちらに近づいてくる。ハルカと知り合いなのか?
「ソシテコチラハ⋯」
「あぁ、申し遅れた。俺はヒグチ・ショウセイだ。よろしくな。」
「ヨロシクオネガイシマス。」
感情の波が一切感じられない機械的な応答。さすが「無心者」。本当に生き物と喋っている気が全くしない。
無心者の姿は一目見てそれと分かるロボットそのものだった。だからどれが無心者なのかは非常に判別しやすい。
ハルカの解説によると、この無心者の名は「イチカ」というのだそう。本来、無心者は個別の名前を持たないが、ハルカが道場で実力を認められたことで、コーチをしていた”長”から特別に褒美として、名前をもらえたらしい。
「おい、何ボケっとしてんだ。早く行くぞ。」
「あ、あぁ。」
イチカを見送る間もなく、ハルカに袖を引っ張られる。それにしてもハルカは気が強すぎる。十年もこんな謎の世界にいたから気が狂っちまったのか?
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広大な街を通り抜け、俺達はついに風格のある道場にたどり着き、重厚な扉を開けて中へ足を踏み入れた。
「おやおや、これはハルカ殿。久しいのう。」
「やあ、長老。元気にしてたか?」
ハルカが気安く手を振る先を見て、俺は思わず目を疑った。⋯こ、こいつが長老!?長老も無心者なのかよ!⋯でも、さっきのイチカに比べると、心なしか少し滑舌?がいい気がする。
「おや、そこの若造は⋯?」
「はじめまして。ヒグチ・ショウセイと言います。」
身を硬くしながら挨拶すると、長老は興味深そうに頷く。
「そうか。それにしても、あのハルカ殿が連れてくるということは、見込みあり、ということかのう。」
「⋯へ?」
「コイツは私の摩擦力叩手を耐えやがった。手加減は少しだけしてやったが、それでも大抵の夢想者は気絶状態になるはずだ。」
なに!?そんな恐ろしいパンチを初対面の俺に放っていたわけ!?まるで織田信長並みの暴君だ。用心、用心。
「ほう、そうか。では、わしが相手をしてやろう。」
マジで!?このじっちゃんと!?まぁ、負ける確率が高いんだけどな⋯。なんせ俺は、今のところ二つしかスキルがないんだから。
勝ち目のなさそうな試練に頭を抱えつつ、俺ら一行は、とぼとぼと奥にある戦闘部屋へ向かった。
通された部屋を見回し、俺は思わず声を漏らす。
「⋯せ、狭くないですか?」
その部屋の広さは、せいぜい普通の家のリビングくらいだった。ここで暴れたら一瞬で壁に激突する。
「ふん、まぁ見てろ。」
長老がニヤリと不敵な笑みを浮かべ、しずしずと前に出ると、両手をかざす。すると、深い緑色の光が長老の手から放たれ、部屋全体を包み込むドームのような形を作り出し——。
「へ、部屋が広くなったーーー!!!」
空間そのものが押し広げられ、壁が遥か彼方へと退いていく。す、すごい⋯。先程までの狭い部屋は、現在野球場ほどの圧倒的な広さになっていた。
俺はこんな常識外れの人と戦うのか⋯。やばい、負ける自信しかない⋯。
[著者・tops0216より天才のあなたへ]
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次回もお楽しみに!!!!
[次回予告]
#3 新たな発見




