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金花を求めて  作者: 三日月 帆立


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6話 チームアルテナ

 カレンとアルテナの冒険者たちはゴブリン討伐のため、ミーミヤを離れる。カレン以外は軽装備のままだ。まるでこれから激戦にはならないかのようで、不思議に思って聞いてみた。

「あの、戦士さん。なんで、そんな軽装備なんですか? ライトアーマー…オーダーメイドのだとは思うんですけど…」

「あ? あぁそれはな。街から離れたしいいか」

 戦士はいきなり剣を抜き、カレンに向かって構える。咄嗟の行動に、カレンは武器を構えることができない。


「…どういうつもりですか」

「いや、俺らもお前を殺すつもりはない。ただ、金をやるからゴブリンの集落は殲(・)滅(・)し(・)た(・)こ(・)と(・)に(・)してほしいんだわ」

「依頼の虚偽報告ですか、講習会で習いましたね。ほんとにする人が居るとは思わなかったけど」

「あぁギルドの講習会か、昔やったな。あーいうルールに縛られてる馬鹿共と一緒になりたくねぇから脱退したんだわ」

 カレンはむっとなって言い返す。

「確かにルールは多いですが同時に許可されていることも多いじゃないですか! それに今から虚偽の報告をしたところで集落は無くならないです!」

「そんなのあの地主が気にするわけないだろ? あいつは適当に生きてるんだ。この依頼だって…お前みたいな新米一人ギルドから寄越しただけで満足してやがる…」


 構えた剣を降ろし、戦士はため息をつく。腰のポーチから袋を取り出し、

「いくら欲しい? 新米を死地に送る程俺らは鬼じゃねぇ、黙って帰りな」

「いらないです。生憎お金には困ってないもので。それに…」

「それに?」

「今回の依頼、軽装で来てますけどアルテナの皆さんは僕にお金を渡して引き返すんですか?」

「…」

 戦士は答えない。沈黙がカレンの疑問の答えとなっているようだった。そして戦士はゆっくりと口を開く。

「勘のいいガキだよなお前。そう、俺たちはお前を返して集落を俺らだけで落とすつもりだ。」

 

 戦士の答えにカレンはやっぱり、と思う。こんなにしっかりとしたパーティー編成なのに依頼を放棄するとは思えない。放棄するとはカレンを帰すための嘘で、集落は彼らだけで落とそうとしていたのだ。戦士は理由を、新米を殺したくないから。と言っている。

「残念ながら僕はお金で動きに来たわけじゃないんです。なので同行させてください」

「…どうするんです?」

 ここで僧侶が突然戦士へ口を開く。出発前の作戦会議で、唯一カレンの排除に反対した人物だ。戦士は頭を掻く。冒険者の大半は自転車操業をしているので、銀貨でも渡せば納得すると思っていたのだ。戦士が下した決断は、

「じゃあ…俺とここで決闘だ。引き分け以上で同行させてやるよ」

 カレンは一礼をする。

「ありがとうございます。」

「剣は…決闘用のなまくらがストレージにあるんだ」

 戦士は、スクロールを消費し、ストレージ魔法からなまくらの直剣を二本取り出し、片方をカレンに投げつけた。僧侶が間に立ち、立会人を務める。


「では…アトラ対、カレンさん決闘を開始します。ルールは、私がかけたどちらかの物理攻撃軽減加護の消滅、または5分経過で勝負ありとさせていただきます。では、はじめ!」

 戦士アトラは地面を蹴って、カレンに急接近する。そのまま頭上から剣を振り下ろした。カレンはそれを寸前で弾き、反時計回りに走り出す。距離を取り、魔法の詠唱時間を稼ぐ作戦に出た。今回の決闘でお互いにかけられているのは、物理攻撃の軽減加護。魔法の中でも、物理投射物の魔法を選定する。

「これでも…くらえ!」

 放った魔法は氷の茨(アイスソーン)。物理貫通魔法で、カレンの詠唱技術だと、投射物は3っつ同時に射出される。

「魔法だと!?」

 時計回りに、カレンと距離を詰めようとしていたアトラの足が止まる。真っすぐ向かってきた茨を2本断ち切る。しかし、1本は反応が間に合わず、足にひんやりとした茨が絡みつく。

「くそっ!」

 どうにか断ち切る頃には、カレンの次の魔法が準備されていた。次に放ったのは骨の槍(ボーンスピア)。今度は物理攻撃の投射物を放ってきた。茨の対処に苦戦していたアトラはもろに骨に当たる。加護が消費され、ちょっとしたかすり傷程度で済んだ。が、怯んでいる間にいつの間にか剣が届く間合いに入っていた。


「せいやっと!」

 アトラに対して、真っすぐなまくらを振り下ろす。鈍い音と共に戦士は倒れ、纏っていた加護がはらりと消えた。

「そこまで! 勝者カレンさん!」

 勝敗を告げると、いそいそと僧侶は戦士に近づき、治癒魔法をかけ始める。数分で戦士は意識を取り戻す。意識が戻ったころには治療は終わっており、カレンの擦り傷を僧侶が治療していた。戦士の前に新米冒険者はやってきて、なまくらを返す。

「どうでしたか? 認めて貰えました? …えっと、戦士さん」

「アトラでいい。 ったく、新米とか以前に魔法も使えるのかよ」

「はい! エンチャンターなので」

 アトラは言葉を失う。ギルド所属時代に登録名だけ聞いたことはあったが、実際に対面するのは初めてだ。

「てことは、錬金術師か」

「まぁ、家系がそんな感じなので…」

「はぁ…まぁいい。深く聞く気はねぇ、とりあえず悪かった。俺はお前の事を舐めてた」

 ガバっと頭を下げるアトラ。格闘家と魔法使いも頭を下げ、謝罪をする。話を聞くと、僧侶以外は実力を疑い、最初から排除するつもりだった様だ。


 改めてチームアルテナ、戦士アトラ。魔法使いルリィ、格闘家のテキーラに僧侶のナラヌイ。この4人とゴブリンの拠点を殲滅するために、ミーミヤ北部に位置する山の麓へ向け足を進めた。

アルテナ前夜会議


「で? リーダー。あの新米、どうするんだよ」

「決まってるだろ? いつも通り帰ってもらうさ。どうせ地主さんは結果なんか気にせず報酬を渡してくるんだ」

「あらぁ、顔なじみじゃないから大変かもしれないわよ?」

「ルリィ、分かっていってるだろ。俺は連れて行きたくねぇ」

「はいはい分かってるわよ」

「あの、アトラさん」

「なんだよナラヌイ」

「あの新人さん新人というだけで軽視し過ぎでは…」

「新人だから連れて行かないんだ」

「…では一つお願いがあります」

「いいよ、なんだ」

「もし抵抗されたら決闘して、負けたら連れて行くと約束してください」

「はぁ? ッチ…そういうとこお前と馬が合わないな…まぁもしそうなったらな。どうせ金に眼が眩んで持って帰るだろうけどな」


 この時、冒険者ギルドの成功報酬が金ではないことをアルテナの面々は知らなかった。

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