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金花を求めて  作者: 三日月 帆立


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4話 次の依頼

登場人物紹介


カレン

 エンチャンターの新米冒険者。錬金術と、魔法を操る冒険者としては珍しいスタイル。剣技はギルドの入会時に使ったことがある程度で、一番得意なのは自身の魔力を高めてくれる魔導書を用いた魔法を複数詠唱するスタイル。ただ扱える魔法の攻撃範囲が扱いづらく、今回の様な依頼で使うには不向きなため、剣を使う。直剣よりも短刀や手作りのガラスナイフのような短い武器が好き。


ミーミヤ支部受付管理人

 ギルド受付は基本女性が行っているが、ミーミヤの若者は出稼ぎで都心部に出て行ってしまうため、ギルド本部から男性の管理人が配属されている。これはミーミヤ支部を立てる際、希望者がいなかったため本部役員が部下に頼み込んで作った役職である。悪知恵の働く冒険者が地方での不正に報酬金を受け取るのを防止する役目も担っている。


農家の老婆

 最近のゴブリンの襲撃の際、立ち向かった夫を亡くした。冒険者ギルドに2か月前に既に依頼を出していたのにと、夫の死を嘆くばかりであったが、今回ようやく受けてくれる冒険者が居た。喜びもそこそこに朗報を待つばかりである。その夜、ゴブリンの襲撃音を聞いて窓辺に行く。柵向こうにゴブリンが月明かりで見える。恐らく戦闘中であろうと、どうか冒険者が勝ちますようにと、祈るばかりである。

 盗賊に襲われてから一週間が経ち、カレンはカナルギウムから地図を見て東にある街、”ミーミヤ”に来ていた。ミーミヤは農業が盛んなのどかな街で、住居は藁ぶき屋根で趣を感じる街になっている。ここに来たのは、カナルギウムで受けれない依頼を受けるためだ。馬車からミーミヤに降り立ったカレンは、真っすぐギルドへ向かった。ミーミヤ支部の受付は男性が行っており、カレンが扉を開けて入ると、大きな依頼書の束をパタンと閉じ、カレンに向かってぺこりと一礼する。

「冒険者様、様こそおいで下さいました。ギルド証をお見せ下さい」

「はいどーぞ」

 ギルド証は名の通りギルドが発行している会員証の様な物で、支部によってアレンジが施されている。カナルギウム支部のギルド証には背景に馬車が書き込まれている。


「カナルギウム支部のカレン様。おかえりなさいませ、依頼書をご覧になりますか?」

「その前にお部屋を一つ借りてもいい? 一番安い部屋でいいから」

「1日銅貨3枚になります」

「じゃあ10日借りるから銅貨30枚渡すね」

「確かに30枚頂きました。お部屋の鍵になります、場所は階段を上がって、2階の3番目のお部屋になります」

 鍵を受け取り、階段を上がる。部屋の鍵を開けて入ると、すぐに鞄を降ろした。鞄の中からスクロールを一枚取り出し、読み上げる。記された呪文は”ストレージ”自分の貸倉庫へ簡易ゲートを作る呪文である。もちろん家の収納箱にもアクセスできる。カレンはライトアーマーを取り出し、いつも使うロングソードをしまって、バックラーと付属の短刀を装備した。いつもの布装備からちょっと防御力を上げた。今回狙っている依頼、標的は戦闘になると分かっているためだ。


 階段を下りてカウンターに再び姿を現すカレン。

「おまたせ! 依頼書を見せて」

「こちらが依頼書の束になります。重いのでお気を付けください」

 ミーミヤの依頼書の束は丁寧に製本されている。所属人数が少なく、依頼に対して冒険者が圧倒的に足りないので製本してあっても問題ないのだ。カナルギウムの依頼書の束は糸で簡易的に止めてあるだけだ。椅子に座り、目当ての標的の依頼を探す。受注する冒険者が足りていないミーミヤ支部の中は閑散としている。依頼の契約金も報酬金も如何にも地方、と思える金額だ。数十分依頼書の束を読み込み、やっと後ろの方のページにあった依頼を見つける。付箋を貼って依頼本を閉じてカウンターまで運び、付箋の場所を開いて見せる。

「この依頼を受けるよ!」


 ミーミヤから北に半日、ミムギの生い茂る場所で簡易キャンプを建設する。ミムギは農家でも生産されているミーミヤ地方で改良された麦、ただ繁殖力が高く、風に乗った種子が農地以外でも背の高い麦畑を作っている。山の麓、森林と平原の境にこの麦畑は位置する。山から食べ物を求めて下りてくる害獣駆除。今回請け負ったのはその依頼だ。しかし、この麦畑があるおかげで優先度は高くないと判断され、依頼から2か月放置されていた。その間も畑には被害が出ていた様で、

「やっと受けてくれる人が居て嬉しいよぉ。あたしゃもう年で害獣駆除なんて一人じゃできなくてねぇ」

 農家の老婆はそう言って喜んだ。丁度狙っている得物だからと、説明し農場を後にする。夜に山から下りてくるという情報を老婆から聞いたので、夜になるまでキャンプの寝袋でひと眠りすることにした。


 さて、目を覚ますと月が高く昇っている。ちょっと寝すぎたか? と、思ったがガサガサとミムギをかき分ける音が聞こえた。どうやら杞憂だった様だ。左手の手首から、固定式のクロスボウを装着する。手首を曲げると発射されるとてもシンプルで、対モンスターの紀州の一手としては非常に有効な装備になっている。ミムギをゆっくりとかき分けながら歩くと、押し倒された獣道ができている。昼には無かった道だ。間違いなく畑の方に向かっている。忍び足でにじり寄り、ついに農場前の開けたところに出た。


 月明かり照らす畑に、人影がいくつか。その体は筋肉質で人とは似ても似つかない青い体色をしている。森林に暮らすモンスター、ゴブリンの群れだ。麦だけに限ればこいつらは全く関係ない。主に草食動物の標的になるのはミムギだ。しかし、なまじ社会性がある上、簡易的な料理もこなすため、人間の田畑を襲うのだ。


 スッとクロスボウを装填して構え、手首を曲げる。シュっと飛び出した矢は、先頭のゴブリンの脳天を貫いた。

「グギッ!」

 群れは射角から敵のいる位置を向く。そこには人間が一人立っていた。こちらは5体、相手は1匹。数の有利から、ゴブリンは不敵な笑みを浮かべる。倒された先導役のゴブリンのことは、既に頭から抜けているようだ。


 クロスボウの命中を確認し、ゆっくりとしゃがみ体制から立ち上がる。数の有利で勝ちを確信したゴブリンたち、お構いなしにバックラーを構え、短刀を抜く。ゴブリンの武器はこん棒の様な物が2本、おそらく冒険者から奪ったあと整備していないボロボロの剣2本、お粗末な弓が1本。

「警戒する程でも無かったかなぁ」

 独り言をカレンが言っていると、ゴブリンが攻撃しようと駆け寄ってくる。戦闘のゴブリンの振り下ろすこん棒を、バックラーで受け止めた。その直後に2撃、3撃とこん棒を振り回すゴブリンの攻撃を確実にバックラーで受け止める。攻防が行われている中、ゴブリンはカレンの事を包囲する。この時点でゴブリンたちの思考から逃走の二文字は消えてしまった。4撃目のこん棒を短刀で弾く。刃で受けると木製のこん棒に中途半端に刺さってしまうため、剣の腹で弾く。逆手に持ち替え、こん棒の持つ手を斬りつける。ゴブリンは悲鳴を上げ、こん棒を手放す。そのまま怯んだゴブリンの喉元に、刃を突き立てた。

冒険者ギルド狩採取法1条

 冒険者ギルドに所属する冒険者においては、依頼外での意図的なモンスターの狩猟は個体数の観点から全面的に禁止とする。緊急依頼としてギルドが”バウンティモンスター”に指定したモンスターは例外とする。

 所属者においては動植物の狩猟採取は原則として依頼外で行うことは禁止とする。ただし、心薔薇など必需品の材料においてはこの限りではない。また、依頼中の糧食として野生生物を調理する際は、依頼法の2条に基づき、行ってもよい。


冒険者ギルド依頼法2条

 冒険者ギルドに所属する冒険者において、一つの依頼中に別の依頼をギルドを通さずに受領することを禁ずる。違反した場合は降格処分、または銀貨依頼相当の処罰が下される。また、ギルドを通して副依頼を受ける場合は問題ないものとする。

 冒険者においては、依頼の最中に糧食として野生生物の狩猟を許可する。なお、個体数維持の観点から、大型動物(鹿、猪)などは1頭、小型生物(鳩、鶏)などは3羽とする。また、雑草の採取について制限を設けないものとする。

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