↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金花を求めて  作者: 三日月 帆立


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/11

3話 ペコジカと盗賊

登場人物紹介


カレン

 錬金術師、マリアーナ家長男。家系図に父母、下に妹がいる。家からは独り立ちしており、現在は離れた一軒家に住んでいる。実家の話をされることをあまり好まず、昔からの付き合いがある人に、

「坊ちゃん」

 といわれると頬を膨らませて怒る。16歳の怒り表現は大人からすれば可愛いものだが、皆極力坊ちゃん呼びは控えている。


盗賊 (ドアク)

 カレンをカリウの森で襲った冒険者。冒険者は基本自転車操業で、お金に余裕のある冒険者は上位の一握りしかいない。カレンに目を付けたのも、銀貨を一杯支払っていたのと、ペコの実という希少価値の高い果実を採取に行ったからである。金目当てに盗賊行為に走ること自体、ギルドの民営法に反する行為であり、バレると即刻処分が下される。が、口封じなどされ発覚しない場合、衛兵へ被害届が出ていない場合、または現行犯でない場合。ギルドは動くことは出来ない。新米ということでそれを狙った犯行である。


酒場のウェイトレス

 アルバイトの21の女性。酒場で16の時から働いていおり、その実、子爵家の一人娘である。花嫁修業から逃げて酒場で働いている。大陸の西にある子爵家で、幼少期はその広大な草原と共に育ったので生物や植物の知識に長けている。

「さぁ、金品も置いてってもらおう」

「あなた盗賊の割には、ギルドに入っているんですね。僕が帰ったらどうなると思ってるんです?」

「さぁな。 口封じしちまえばいいしなぁ!」

 短刀を抜き、戦闘態勢に入る盗賊。カレンは降ろした鞄から籠を取り出し、中身を投げつけた。

「ぐわ! 何しやがる!」

 騒ぐ盗賊をしり目に、カレンは急いで隠れみの布を羽織った。数秒でドタドタと地響きがして、ペコジカの群れが現れた。盗賊がたじろいでいる間に、襲った少年は投げつけてきたものをカゴごと残してペコの木の裏に隠れた。


「くそっ、せめてペコの実だけでも…!」

 盗賊が籠を奪取し、逃げ始める。ペコジカは雄たけびを上げ、盗賊を追いかけ始めた。彼の顔面には、オレンジ色の液体がかかっている。渓谷の前に来て、迂回路まで行かなければいけない事実に盗賊は気が付いた。渡るために持ってきた緊急用のフックを投げてる時間もない。彼は、ペコの実を放棄しようと籠の中を見る。

「はぁ!? なんだよこれ!!」

 そこにはカラフルな丸いボールがあった。地方の露店で見かけたことがあるが、実際の用途は知らない。そう、カレンが出した篭はペコの実の隣に入っていた瓜二つのかごで、中にはカラーボール。地方の商人が、強盗などに遭遇した際に投げて撃退と、強い樹脂の香りで捜索犬の追跡を支援するものだ。その香りの元は樹脂が使用されているので、樹液で縄張りを確認するペコジカの興奮、怒りを買ったというわけだ。


 あたふたしていると、いつの間にかペコジカに囲まれてしまった。後ろには崖があり、逃げることができない。一際大きな角を持つオスが群れの中から出てきた。きっと、それが群れのリーダーだろう。

「おい、よせ。近寄るんじゃねぇ!」

 短刀を抜き構えるが、その手は酷く振るえている。ペコジカのリーダーは匂いを嗅いでフンと鼻を鳴らす。もはや相手にならないと感じたのか、森の中へ引き返していった。

「た、助かった…のか?」

 盗賊は安堵し、ヘナヘナと座り込む。その様子を遠くから確認したカレンは、迂回路へ向けて歩き出した。


「商人さんお待たせ!」

 カリウの森に入ってから3日後、少年はカナルギウムに帰還を果たした。まず衛兵詰め所に行き、被害届を提出した。カリウの森には捜索犬と、憲兵が派遣された。次に、ペコジカの齧った樹皮から染み出た樹液を採取依頼した商人の所に行く。

「おぉカレン坊ちゃま! おかえりなさいませ」

「坊ちゃまはやめて! もう家から出たんだから」

「ははは、すいません。つい口から出てしまうもので…こちらですね、どれどれ…」

 商人は”鑑定”のスクロールを使用する。樹液の入った小瓶が水色の光に包まれた。

「さすがですな。間違いなく、ペコジカ生息地域の樹液です。報酬はいかほどを望まれますかな?」

「うーん…実は盗賊に襲われてさ、帰るの厳しかったんだよね。それなりに希少なものだしなぁ」

「では銀貨20枚と、うちの品物次回80%引きでどうでしょう?」

「いいね、決まりで」

 商談が成立し、握手を交わす。銀貨を受け取り、商品である樹液の小瓶を手渡した。


 最後にギルドに帰還報告をしに戻った。

「カレン様、おかえりなさいませ。以来の方は如何でしたか?」

「ばっちり。はい、これが依頼のペコの実。それとカリウスライムの体液、これを納品するよ」

「スライムの体液は銅貨2枚になります。ペコの実の依頼報酬。銀貨34枚です」

「そういえば盗賊…というかギルドの人に襲われたんだけど。何かしらない?」

 受付嬢は肘をついて考えた後にあっとなった。

「カレン様が依頼を受けた直後にあなたの事を聞きに来た中級冒険者が居ました…衛兵には」

「もう被害届は出したよ」

「では、こちらからも捜索をかけます。逮捕ののち、カレン様には保証金を振り込みますが、国営銀行の口座でよろしいですか?」

「そうだね。じゃあよろしく」

「はい、お疲れさまでした」


 自宅の近く。キッタニア酒場で夕食を注文する。

「今日ってなんかいいの入ってる?」

 リンゴジュースを飲みながらウェイトレスに聞くと、笑顔で彼女は答える。

「はい! 西の高草地からいいシカ肉が入ってますよ!」

「それって…アキジカ?」

「はい! お詳しいですね! 西の大地からの自慢の品です」

「それの…ゴマダレピーマンの炒め物を。ライスをパンに変更で」

「かしこまりました。お待ちくださいませ」

 アキジカはアキの実を食べる、ペコジカの近縁種と言われている。ペコジカと違う点は、比較的人間の居住地近くに生息し、性格は温厚で角が短く食用に適しているところだ。ペコジカの肉は筋肉質で固く、筋も多いので食用に適さない。本当に近縁種なのか学会で議論にしばしば発展している。


「お待たせしました! アキジカの野菜炒めと、石窯パンになります」

 その場で銀貨1枚、銅貨8枚を払って並べられた料理を見る。石窯ぱんは言わずもがなだが、アキジカの野菜炒めは予想よりいい香りをしている。特にこの店で主に取り扱っているゴマダレピーマンと、キャベツの香りと、ジビエ特有の香りがマッチしている。野菜は火がしっかり通っているがシャキシャキで、アキジカは肉にくしく、噛み応えがある。油でコーティングされた口の中をすっきりとしたリンゴジュースで流し込む。最高の食事だ。

「ごちそうさまでした」

 支払いは済んでいるので、そのまま自宅に向かう。酒場から徒歩5分の一軒家の鍵を開け、

「ただいまー」

 と声をかけ玄関に上がる。

「ワン! ワン!」

 飼っている犬のダフが勢いよく飛びついてくる。

「よーしよし! ちゃんと留守番できてえらいぞー。今ご飯あげるからね」

 犬とカレン、二人で暮らしている家の明かりは夜が更けるまで消えなかった。

盗賊の尋問


「で? ドアクさんや、いい加減喋る気になったかい? 我々も暇じゃないんだが」

「……フン」

「はぁ…飯にするか」

 ドアクの前にステーキが置かれる。

「まぁ。食えや、腹が減って口数が減ったら困るからな」

「…」

 無言で口にする。ジワリと肉汁があふれるレアステーキだった。ぺろりと平らげる。


「よぉし食ったな? じゃあ言ってもらおうか」

「金に困って新米で襲いやすかったのと、銀貨を山ほど持ってたんだ。だから襲った」

 先程と打って変わってスラスラと自白する。ステーキに自白剤を混ぜてあったのだ。注射で注入したため、肉汁に混ざって普通の人間にはわからないだろう。


 憲兵は調書を作り、ギルドに内容を共有した。即刻ドアクは除名処分と民営法違反でギルド側から起訴された。その後、1日で有罪判決が下りたため、カレンの国営銀行口座に保証金銅貨150枚が支払われた。保証金は犯罪者の等級によって決まる。今回は初犯、かつ無名のため金額は少額になった。懸賞金のかかった犯罪者になると最大金貨1000枚まで膨れ上がる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。