1話 錬金術と冒険
登場街紹介
王都、ラテルギウム
”いわずと知れた、大陸唯一の王都。特産品はメープルシロップ、木材に板材など、王都であるが林業が盛ん。北に行くとホカリナラ、南に行くと交易都市カナルギウムに着く。北から来る積雪地帯の産物と、交易都市から来る交易品で栄えている。”
交易都市、カナルギウム
”ラテルギウムに次ぐ大都市、周辺にはモンスターの前哨基地などもあり、通るのであれば護衛は必須。元々カナルという国の都市であり、カナル国降伏後無血開城されたため今でも交易拠点として繁栄している。特産品はカナルピッグ。豚肉である。冒険者ギルドは大陸で2番目の規模を誇っており、約2万人の所属がある”
「あら、カレン様。金花の採取に行かれるのですね?」
「うん! でもあくまでサブ的に受けるよ。メインでは他の依頼もやるつもり」
「かしこまりました。契約金が銀貨250枚です」
「かかるなぁ~!」
あちゃあ。という仕草をしながら背負った鞄から銀貨を取り出し、一袋ガシャっとカウンターに置く。受付嬢は袋を秤に乗せ、重量を見ながら銀貨を取り出す。この世界の銀貨は1枚5グラムで造貨局が造っている。当然、金貨、銀貨、銅貨に関して錬金するのは造貨法によって禁止されている。彼がここまで銀貨を持っているのは、実家も錬金術の家系で、薬屋としても有名だったからだ。家の手伝いをしている内に、気が付けば冒険者になってでもしないと使い切れないほどの銀貨が貯まってしまったのである。実家の金庫にまだ数万枚は仕舞ったままだ。
「お待たせしましたカレン様。銀貨250枚、丁度頂きます」
「じゃあついでに依頼も受けて行くよ! 依頼書の束はある?」
「はい、こちらに」
そう言って受付嬢は、”カナルギウム”の依頼が束ねられた物をカウンターに置く。この街カナルギウムは交易の要所で、王都”ラテルギウム”程ではないが大きな街である。陸路の交易なら、大陸を歩くのにこれほど通らなければならない道も少ない。お礼を言って依頼書を持ち出し、椅子に座って読み始める。全部読んでいたら眠くなりそうなほど、この街では冒険者への依頼が出ている。
「あ、すいませーん」
横を通り過ぎたウェイトレスに声をかける。食器の片づけをしていた彼女は立ち止まって用件を聞く。
「あ、はい。冒険者様、お食事でしょうか?」
「そう、カペルサーモンは入荷してる?」
「はい、新鮮なのが冷凍されて本日は入荷されています」
「やったね! じゃあ…カペルサーモンとホットチーズプレート。飲み物にアップルジュースを」
「かしこまりました」
ウェイトレスは、食器を持ったまま裏へ下がっていった。料理が作られている間に、依頼書の束を受付に帰しに行く。カレンは、依頼書から一枚千切って、
「今回はこの依頼を受けるよ」
依頼書と一緒に契約金を渡す。受付嬢はその依頼書にギルドの印鑑を捺印して壁に張った。
「では契約期限は5日になります。期限を過ぎた場合は依頼失敗としてペナルティがかかりますので、ご注意ください」
一礼して受付嬢は事務作業に戻る。カレンも元の椅子に戻って、料理を待った。
15分後、
「お待たせいたしました。”カペルサーモンのホットチーズプレート”になります」
注文した料理が来た。鉄板に発熱魔法が刻印され、熱々の状態で運ばれてくる。皮目はパリっと焼かれ、焙られたカペル村産の極甘チーズがとろりと溶けている。ナイフで切り分け、パクっと一口。塩気の効いたサーモンと、極甘のチーズが調和し素晴らしいハーモニーを奏でている。溶かしチーズにはナッツも混ざっており、ふわふわの身にカリカリとした食感が混ざっている。
「ごちそうさまでした」
リンゴジュースを飲みながら、食べ終わった鉄板を見つめる。サーモンの骨だけが鉄板に残り、刻印によってカリカリの煎餅みたいになりつつある。火傷しないように慎重に箸でつまんだ煎餅を、口に運ぶ。ガリガリ、ゴリゴリと気味良く音を立てて砕かれた。
「お皿を下げに来ました」
ウェイトレスが飲み物まで飲み終わったのを見て、片付けに来る。食事後、パーティーを組んでいる冒険者などはその場で会議などをするため、速やかにお皿が片付けられる。カレンは一人なので、食事を終え、すぐにギルドの外に出た。
街の中心、大市場に行き野宿の為の準備をする。今回の依頼は比較的簡単なため、そこまで買い込むことはしなかった。食料も、現地で調達できるだろう。準備が終わったので大市場のすぐ横、馬車の停留所に歩く。
「東方面定期便、間もなく発車だよ~」
「乗せて乗せてー」
「はいよ! どこまでだい?」
「カリウの森の入り口まででいいんだけど」
「カリウの森なら銅貨3枚だ」
運賃を支払い馬車の荷台に乗る。決して広くは無いが、数人が乗るのに足らないスペースではない。馬車はゆっくりと進みだし、やがて舗装路を抜ける。砂利道をガラガラ音を立てて進んだ。
1時間と少しでカリウの森に差し掛かる。
「運転手さん、降りまーす」
馬車を見送って一呼吸置いてから森の中に入る。木々が密集し、この時期は日も差し込まないくらい密林となっている。ランタンに火を点け、森の中に入る。モンスターもいるため、抜剣して進んだ。
森の中に入って数分、目の前にはカリウスライムが3匹現れる。獣道で遭遇したため、意図せず戦闘になった。カリウスライムは温厚な性格のため、本当に驚かせてしまったんだろうと申し訳ない気持ちになったが、近隣の村の畑を荒らす敵性モンスターである。鞄を降ろして身軽になり、剣の刻印に手をかざし、火属性を溜め込んだ。
「いくよー?」
誰に言うわけでもない独り言を言って、地面を蹴りスライムに突進した。
カリウの森
カリウスライムやコゴブリンの群れがいる森、近くの村の畑を荒らすたびに討伐依頼が出るため、人間に対して非好戦的である。今回戦闘になってしまったのは、お互いが木の陰から突然姿を現し、驚いたスライムが怒ってしまったからである。森の奥地には果物がなっていて、人の入りも少ないことからこちらも定期的に収穫依頼が街に入る。野生動物もウサギやイノシシ、シカなどがいる。狩猟制限がかかっているのはシカだけで、あとは貴族の狩りなどでも嗜まれている。




