第四十三話 血に染まる幻影と、戦火を生きたふたりの絆
レオネルの案内で、文乃は王宮の一間――王妃の私室へと足を踏み入れた。白を基調とした部屋の中には、淡い香の匂いがほのかに漂っている。
だが、その優雅さの中に満ちているのは、重く沈んだ“静寂”だった。カーテンの隙間から差し込む光の中で、ベッドに横たわるひとりの女性。
それが――この国の王妃だった。
文乃は思わず息を呑む。
彼女の頬はこけ、唇は血の気を失い、目の下には深い影。以前、城内で会ったときの柔らかな笑みをたたえた美しい女性とは、まるで別人のようだった。
レオネルは静かに母のもとへ歩み寄り、その枕元に膝をつく。
「……母上、具合はいかがですか」
王妃はゆっくりと瞼を開け、息子を見つめた。
その瞳に、かすかに光が宿る。
「今日は……少し調子がいいの。朝にね、パンをひと口と……ミルクを少しだけ、いただけたのよ」
そう言って、か細い笑みを浮かべた。
だが、その笑顔があまりに痛々しく、レオネルの胸に鋭い棘を突き立てる。
“どうして、俺には何もできないんだ……”
歯を食いしばる音が、静かな室内にわずかに響いた。文乃はそっと目を伏せ、レオネルの背を見つめながら胸の内で呟く。
――この王妃様は、ただの病じゃない。何かがおかしい。
そのとき、レオネルが立ち上がった。
「今日は天気が良い。少し空気を入れ替えましょう」
彼は窓辺に向かい、厚いカーテンを引いて窓を開け放った。冷たい風が部屋に流れ込み、カーテンがふわりと舞い上がる。
だが――
「……あ、あぁっ……やめて……!」
突然、王妃の体が震え出した。
目を見開き、虚空を見つめながら、苦しげに喉を震わせる。
「血が……! 血に染まった手が……私を呼んで……!」
その叫びは、悲鳴とも嗚咽ともつかぬ声で。
王妃はシーツを掴み、暴れるように体を起こした。
「やめて……来ないで! 殺さないでッッッ!」
レオネルが慌てて駆け寄る。
「母上っ、落ち着いてください! 俺です、レオネルです!」
しかし、王妃の焦点は合っていなかった。
その瞳は“何か”を見て怯えている。誰にも見えない何かを。
――その時。
部屋の扉が勢いよく開き、マチルダと部下のメイドが駆け込んできた。
「レオネル殿下! こちらは私たちにお任せください!」
「文乃も離れて!」
瞬く間にマチルダが王妃の両腕を押さえつけ、暴れる体をベッドに固定した。マチルダの声が鋭く響く。
「医師をすぐに呼んで、あなたは鎮静薬を!」
メイドが頷き、薬瓶を取り出す。
その一連の動作の早さに、文乃は思わず息をのむ。
レオネルは拳を強く握り締めたまま、唇を噛んだ。
「……母上……」
マチルダは一瞬だけ、優しい目で王子を見つめ、
静かに告げた。
「殿下、ここからは私たちに任せてください」
その言葉に、レオネルはわずかに目を閉じると。、文乃の肩を軽く押して、部屋を後にした。扉が閉まると同時に、部屋の中から王妃の悲鳴が遠く響く。
それを背に、文乃は沈黙のまま歩きながら、心の奥底に奇妙な違和感を抱いていた。
――あの王妃様の言葉。“血に染まった手”。
あれは幻覚?とすると原因は病…薬…毒…。それとも別の何か?とにかく今は情報が足りない。
文乃の胸には多くの疑問が静かに刻まれた。
王立図書館の広間には、静寂が満ちていた。棚の隙間から漏れるランプの光が、長い影を床に落とす。文乃とレオネルは、誰もいない閲覧室の一角に座っていた。ふだんなら、文乃は古文書を広げて嬉々として筆を走らせている時間だ。けれど今夜ばかりは、開いたままの書物に一文字も目を落とせなかった。
沈黙が、二人の間に重く漂う。
やがて、レオネルが小さく息を吐いた。
「……今日は、少し調子が良いと聞いていたんだ。だから、母上もお前と話ができると思って……」
その声には、悔しさと自責が滲んでいた。文乃は静かに首を振る。
「殿下のせいじゃありません」
「いや、違う。俺が……俺がもっと早く何とかできていれば……!」
レオネルは机に額を押し付け、拳を握り締めた。肩が震える。それは、王国の次期国王が人前では決して見せぬ弱さ――
息子としての素顔だった。
「……あの時も、そうだった」
低く、掠れた声がレオネルの唇から漏れる。
「皆が『魔女の呪い』だと恐れ、怯え、諦めていたあの奇病から……君はこの国を救ってくれた。呪いの正体を暴き、おぞましい迷信をただの病気へとひっくり返して見せた。文乃、君はあの時、確かに奇跡を起こしたんだ……!」
机を軋ませるほど強く握り締められた拳から、血の気が引いていく。
あの日、王立図書館の司書がもたらしてくれた救い。本から得た知識で絶望を希望へと変えた彼女の姿が、今のレオネルにとって、暗闇を照らす唯一の導る標だった。
母上を蝕むこの不治の病も、失われた治療法が古文書の中に眠っているのかもしれない。だとしたら、本の中に答えを見つけ出せるのは、世界中で彼女しかいない。
レオネルはゆっくりと顔を上げ、金茶色の瞳で文乃を真っ直ぐに見つめた。そこには王族としての威厳など微塵もなく、ただ母の命を乞う一人の少年の、剥き出しの執念だけがあった。
「頼む、文乃……! もう一度、僕に……この国に、君の知恵を貸してくれ。母上を……母上を助けられるのは、君しかいないんだ……!」
その言葉と共に、レオネルは深く頭を下げた。王族が平民の前で頭を垂れるなど、本来なら許されぬこと。しかし彼は、そんな体裁など気にしなかった。息子として、ただ母を救いたかったのだ。その姿を見て、文乃の胸に熱いものが込み上げる。
そこへ――小さな足音が近づいた。
「……文乃」
エマが心配そうな顔で立っていた。手には王妃の世話係から預かった花束を抱えている。
「さっき、殿下と王妃様のお部屋に行った時……私、何もできなくて。でも……王妃様、きっと苦しんでると思うの。だから、お願い。文乃の力で、助けてあげて」
エマの瞳が真っ直ぐに文乃を見つめる。その幼い願いが、まるで灯火のように心を照らした。
文乃はゆっくりと立ち上がり、二人の前に歩み出る。そしてまっすぐレオネルを見つめた
「殿下――必ず、王妃様を救ってみせます」
その声は静かだが、揺るぎない決意が宿っていた。レオネルは涙を拭い、わずかに頷く。
文乃はその足で、王妃の身の回りの世話をしている使用人たちへの聞き込みを始めた。部屋の掃除係、衣服を整える侍女、夜番の看護人――
誰もが、王妃の変わり果てた姿を思い出すたび、唇を震わせた。
「王妃様は時折何かを怖がるように震えるんです……」
「以前は優しくて、私たちにいつも声をかけてくださったのに……」
「まるで、別の方のようで……」
中には、言葉を詰まらせ、涙をこぼす侍女もいた。その涙を見て、文乃の胸が痛む。
――こんなにも、王妃様は慕われている。このまま苦しませておくことなんて出来ない。文乃は拳を握りしめ、心の中で誓った。
「王妃様。必ず、あなたの心を取り戻してみせます」
静まり返った図書館の中、文乃の瞳には、確かな光が宿っていた。王妃の異変は、庭に出たあの日から始まった。文乃がそう聞いたのは、宮廷の庭師からだった。
「王妃様の症状が最初に出たのは……ちょうど一月前です。王妃様は花壇の手入れをされておりまして……その時、突然空を見上げて、何かを見つめておられました」
庭師の目が曇る。
「まるで……誰かに呼ばれたように、動かなくなって」
その言葉を聞いた瞬間、文乃の胸に小さな棘が刺さった。
――“呼ばれた”という表現。
王妃が自らの幻覚を「血に染まった手が呼んでいる」と言っていたことを思い出す。次に文乃は、王家直属の侍医のもとを訪れた。
「症状ですか? はい、最初は軽い不眠と倦怠感でした」
白衣の医師は疲れたように答える。
「ですが、日を追うごとに感情の起伏が激しくなり……時には嗚咽し、時には無表情のまま涙を流される。今では食事もまともに摂れず、まるで魂が抜けたようです」
医師の記録を見せてもらいながら、文乃は眉を寄せた。
――イライラ、不眠、抑うつ、感情の麻痺。
「典型的な精神疾患の症状ね……でも、原因がわからない」
次に彼女が目をつけたのは「食事」だった。だが厨房を調べても、毒味係や監視係たちは口を揃えて言った。
「王妃様の食事は三重の監視のもとで作られています。途中で何かを混ぜることなど絶対に不可能です」
――つまり、外的な毒ではない。
ならば、心――つまり精神の異常。
文乃は王立図書館の一角に腰を下ろした。机の上には積み上がった医学書、古文書、治療報告書の山。その数、軽く百冊を超えている。
「はぁ……私、医者じゃないんだけどなぁ……」
ぼやきながらも、文乃の目は真剣だった。頭の中には、涙を浮かべるレオネルの姿がちらつく。そして、震える声で助けを乞う王妃の幻影。
「……泣かせたままに、できるわけないでしょ」
小さく呟き、彼女は本を開いた。古語で書かれた医術書から、近代的な精神医学の論文まで。食事、睡眠、幻覚、情動――片っ端から当たる。
夜が更けても、ランプの灯だけが彼女の世界を照らし続けた。
そして――
「……これだ!」
文乃の弾かれたような声が、夜の書庫の静寂を鋭く引き裂いた。
開かれた古文書のページ。そこには、数百年前に長きにわたって繰り広げられた、大国同士の凄惨な戦争の記録が綴られていた。
泥沼の戦場、飛び交う怒号と悲鳴、そして――最前線の兵士たちを次々と蝕んでいったという、原因不明の「謎の病」。
屈強な兵士たちにすら突如として襲いかかる激しい幻覚と、立っていることすら出来ないの体調不良。精神の糸がぷつりと切れたような情動麻痺。そして何より不気味なのは、幾人もの兵士たちが異口同音に証言していた、凄惨な「死者の幻影」を見たという記録だった。
現代を生きる女子高生としての文乃の知識が、過去の記録と火花を散らして結びつく。
「これって、つまり……現代医学で言うところのPTSD(心的外傷後ストレス障害)……!? 王妃様の病の原因は精神の病気……」
だとすれば、すべてに説明がつく。エマがかつて言っていた、庭で誰かに“呼ばれた”というあの言葉も、あの忌まわしい事件の恐怖が呼び起こしたフラッシュバックだったのだ。
「きっと、これが……! 王妃様を苦しめていた病の正体……!」
文乃は勢いよく椅子を蹴立てて立ち上がった。怠惰な空気は一瞬で消え去り、その瞳には真実を掴み取った者の強い光が宿っている。山積みの資料を腕にしっかりと抱え込み、文乃は夜の回廊へと飛び出した。バタバタと激しい足音が、暗い廊下に小気味よく響き渡る。
「レオネル様! わかりました――原因が!」
レオネルの私室に、文乃の透き通った声が高らかに響き渡る。かつて誰かの心を壊した戦場の記憶が、時を超えて今、一人の女性を救うための大いなる鍵へと変わる時。
***
重厚な扉がゆっくりと開かれると、
そこには金と紅の装飾が施された広間が広がっていた。高くそびえる柱、磨き上げられた大理石の床。その中央に、王座がある。
王国の象徴――国王アルディス・リュクサールが静かに座していた。
歳月を重ねた威厳ある眼差し。だがその奥には、どこか深い疲れと哀しみが滲んでいた。
「文乃。王立図書館所属の司書、であったな」
低く、堂々たる声が謁見の間に響く。文乃は膝を折り、深く頭を垂れた。
「はっ、はい! お時間をいただき……光栄に存じます」
隣に立つレオネルは、いつになく真剣な表情をしていた。
――これが、この国を統べる“王”か。
文乃は思わず息を呑む。堀の深い顔立ち、鋭くも温かみのある眼差し。その雰囲気は、まさにレオネルを年輪で包んだようだった。
(やっぱり……お父さんと息子って似るものなのね)
ふと、ノエルの顔が脳裏をよぎる。
柔らかな微笑みを浮かべる第二王子は、きっと王妃様に似たのだろう――そう思っていた時、レオネルが小声で促す。
「文乃、父上に直接、聞きたいことがあるのだろう?」
「えっ、あっ、はいっ!」
慌てて姿勢を正し、文乃は王をまっすぐ見上げた。
「陛下にお伺いしたいことがございます。
――王妃様の……出生と、生い立ちについてです」
王の眉がわずかに動く。
玉座の間に、一瞬、冷たい沈黙が落ちた。
「……それが、妻の病と何の関係があるというのだ?」
王の声は威圧的ではない。だがその静かな一言には、問答を許さぬ重みがあった。それでも、文乃は目を逸らさなかった。
「王妃様の病は、単なる体調不良ではありません。
精神を侵す“何か”が関係していると考えています。その“原因”を突き止めるには、王妃様の過去――つまり、どこで生まれ、何を見て育たれたのかを知ることが不可欠なのです!」
その言葉に、王は静かに目を閉じた。長い沈黙。玉座の上で、彼の指がわずかに動いた。
やがて、ゆっくりと瞼が開かれる。
「……なるほど……わかった」
王の間に、静かな沈黙が満ちた。玉座の前で立つ国王アルディスは、遠い記憶を手繰るように目を伏せる。その声音には、王としての威厳よりも――ひとりの男としての哀しみが滲んでいた。
「……あれは、私がまだ七歳の頃だった。
隣国との戦が続き、リュクサールの南部は荒れ果てていた。焦土と化した村々の中に、一つの領地があった。そこが――今の王妃、セレナの生まれた地だ」
王はゆっくりと息を吐く。
その瞳には、燃え盛る炎と、瓦礫の中に立ち尽くす少女の姿が浮かんでいた。
「彼女は、戦の混乱の中で両親を目の前で失った。助けに駆けつけた時には、もう遅かった。彼女は……声を失っていた。泣くことすらできず、ただ虚ろな瞳で焼けた大地を見つめていた」
文乃は唇を噛んだ。
その情景を想像するだけで、胸が締めつけられる。
「先代国王――私の父上は、哀れに思われたのだろう。彼女を城へ連れ帰り、保護することを決められた。私はその時、初めて彼女と出会った」
少年アルディスは、広い城の廊下で、虚ろな瞳をした少女と出会った。年は自分より二つほど下、透き通るように白い肌に、陽の光を受け艶めく髪。だがその瞳には、何の感情も映っていなかった。
「どれほど話しかけても、彼女は一言も喋らなかった。食事の時も、花を見ても、風に触れても――まるで“生きる”ことそのものを忘れてしまったようだった」
少年はそれでも諦めなかった。
毎朝、彼女の部屋を訪れ、季節の話をし、城の出来事を語り、時には詩を朗読した。返事がなくても構わなかった。ただ、“生きている音”を彼女に聞かせたかったのだ。
「……そんな日々がどれほど続いただろうか。
ある日、私は彼女を外へ連れ出した。庭師と共に、一面に“ある花”を植えた庭を見せるために」
王は、懐かしむように微笑む。
「それは――ひまわりだった」
レオネルが驚いたように目を見開く。
文乃も思わず息を呑んだ。
「本来、王城の庭には似つかわしくない花だ。
だが、セレナが城に来た時、彼女が唯一持っていたのが“ひまわりのブローチ”だったのだ。小さくて、煤で黒くなっていたが……大切に抱えていた。だから、私は庭師に頼んで、庭いっぱいにひまわりを植えた」
その時の光景が、今も鮮明に残っている――と王は続ける。陽光を浴び、金色の花々が一斉に空を仰ぐ。風が吹けば、ざわりと音を立て、まるで世界が彼女を迎えているかのようだった。
そして、その真ん中で――。
「彼女は立ち尽くしていた。最初は何の反応もなかった。だが……やがて、顔を覆い、声を上げて泣いた。まるで、失くした感情が一気に溢れ出すように」
王の目が細められ、口元に優しい笑みが浮かぶ。
「その日からだ。彼女は少しずつ、言葉を取り戻していった。笑顔も、涙も、そして……生きることも」
文乃はそっと胸に手を当てた。その想いが、時を越えて今も王の中に生きているのがわかった。
「……それが、私とセレナの始まりだ」
王の声が静かに響いた。長い沈黙のあと、文乃はゆっくりと口を開く。
「――ありがとうございます。王妃様を苦しめる病気を回復させる糸口が見つかりました。」
その瞳は、まっすぐに未来を見据えていた。
国王の回想が静かに終わると、室内の空気はしんと沈んだ。文乃はその物語に胸を打たれていた。幼い日の出会いから始まり、絶望の底から救い出された少女が、やがて王となる少年と共に歩み、互いに惹かれ合っていく──まるで物語そのものだ。
「……王妃様は、本当に強い方だったのですね」
文乃がそう呟くと、国王アルディスはゆっくりと頷いた。
「彼女は、自らの出自を誇りもせず、貴族であることを笠に着ることもなかった。恩を返したいと願い、城の雑務を進んで手伝っていたのだ。彼女の手のひらは、貴族の娘とは思えぬほど荒れていたよ」
その言葉には、深い敬愛と、今もなお妻を想う痛みが滲んでいた。文乃は唇を噛みしめながら、王妃がどれほど強く、そして優しい人だったかを想像する。やがて話は、王妃の出身地へと移った。
「王妃様の生まれた領地について、もう少し詳しく教えていただけますか?」
文乃がそう尋ねると、国王は眉を寄せ、わずかに目を伏せた。
「それが……わたしも詳しくは知らぬのだ。わたしがまだ七つの頃のことだし、当時の記録は戦火でほとんど焼けてしまった。妻の故郷は南部の僻地にあったが、いまは荒れ果て、人の住まぬ土地となっている。恐らく当時の住民も残ってはいないだろう」
「……そう、ですか」
文乃が落胆したその瞬間、国王はふと何かを思い出したように顔を上げた。
「だが一人、いや……正確には二人、あの戦火を生きのびた者がいた。ひとりは妻自身。そしてもうひとりは──今もこの城に仕えている」
「え?」と文乃が首を傾げると、国王は穏やかに名を告げた。
「マチルダ。王妃の父の屋敷で仕えていた使用人の娘だ。妻とは幼なじみであり、共に戦火を生き延びたたった二人の生存者なのだ」
その名を聞いた瞬間、文乃の脳裏に浮かんだのは──あのメイド長の冷静な微笑み。
(……ちょっと待って。マチルダさんって、王妃様と同い年くらいってこと?いやいや、だとしたら何歳なの!? どう見ても二十代後半くらいにしか見えないのに!)
頭の中で大混乱を起こしていると、背後に冷たい気配が立った。
「……何か言いましたか文乃さん?」
「ひゃあああああっ!?」
思わず絶叫した文乃は、反射的にその場にひざまずき、土下座を決めた。
「い、いえいえいえ! ぜんぜん何も! マチルダさんは若々しくて素敵だな~って思ってたところでして!」
マチルダは無表情のまま、わずかにため息をつき──
「……そうですか。お褒めの言葉として受け取っておきますね」
その声音の奥に、確かに“圧”を感じた文乃は、顔を真っ青にして固まるのだった。
ここまでお読みいただき、
本当にありがとうございます!
本作は6月末まで、
一気に完結に向かって毎日投稿予定です。
「続きが気になる!」「一気読みしたい!」
と思ってくださった方は、下にある
【ブックマークに追加】や【評価】を押して応援していただけると、完結までの執筆の最大の励みになります!
どうぞよろしくお願いいたします!




