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俗に言う出会いは最悪ってやつだ  作者: ルーラブ


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雷を司るもの

時が止まったように感じた。


脳天に鋭い一撃が飛んできた瞬間、これまで現場を賑やかせていた雑音がピタリと鳴り止み、ただ痛みの余韻がジンジンと頭に残り続けた。


「イタタタ」


俯いた視線を上に戻すと、それはそれはとてもヒトとは思えない、そしてヒトを見る目とは思えない鋭い視線がこちらに向けられていた。


「全員腕立て四十回、女子は半分」


政貴の失態は連帯責任となり全員、がっかりするような低い声を出しつつ渋々と腕立て伏せを始めるのだった。


そして汗が地面に滴りつつもなんとか腕立て伏せを終えてその場に立つ。そして全員が終わるのを待ってから女性は政貴の元に再び歩み寄る。


一瞬、また叩かれるのと身構えたがそうでは無いらしい。


「政貴、お前はこの場に居る全員を仕切るリーダーだから、ちゃんとしろよ」


周囲を見回すと男女合わせてざっと十人ほど居る。その全員がこちらの様子を見守っていた。


彼女の言ったリーダーとは何か、それは先ほど読み漁った本に答えが書いてあった。


ここ鳥ノ国では時任家が代々に渡り支配してる。その支配というのは魔法の力によるもので魔法を使えない一般市民は時任家を崇め、そしてその力を借りようとしていた。


魔法の力は子供にも連鎖して宿る。そしてその力を得たものは強力な力を手に入れることが出来るため管理されているのだ。ここ鳥ノ国では時任家を本家として分家した家の子供たちがこうして魔法の訓練を受けにきている。


魔法の力はかつては水や火の調達がメインだった。要は現代で言うところのインフラを担っていたのだ。


そして時代が移り変わり、技術も進化したことで昔よりは容易に水や火が誰でも手に出来るようになっていた。そして現代ではこの魔法の力は国を守る防衛力として使われている。


魔法の訓練、すなわちそれは国を守るための戦闘訓練なのだ。


魔法の力が武力として使えることが判明して以降、この国では一度大きな争いがあった。そのため、現在では一国が保有できる魔法使いの数が制限されており、ここ鳥ノ国では三十名迄とされていた。現在ここに居る十人は魔法使いの中で同年代の子供が訓練のために集められている。


つまりはこれからする訓練とは国を守るために人を殺す訓練だ、政貴は手に持った模擬刀を見つめながらそう考えた。


もしあの日、隣国に宣戦布告していれば今頃きっとこの剣を持って人を殺して、あるいは殺していたのかもしれない。なんであの日、そこまで切羽詰まった判断を強いられていたかは分からないが、あの時の判断のお陰で今がある。


腕立て伏せを終え、模擬刀を取りに行く中で政貴は違和感を覚えた。本来なら自分のせいで連帯責任を取らされたのだから小言の一つや二つぐらい飛んできても良いのに、周囲の人間はほとんど何も言ってこない。


「政貴、お前今日どうしちまったんだよ」


ランニングの時に話しかけてきた歯が白すぎる男改めて匠が肩に腕を回しながら相変わらず暑苦しく絡んでくるぐらいで、他の人からは何も言われなかった。


それどころか気を使われて無造作に置かれた模擬刀を手に取ろうとすると他の女の子が取ってくれたり、水分補給のために魔法で水を作り出してくれたりとまさに至れり尽くせりな待遇だった。


これが本家の血筋の力、鳥ノ国では時任家の力が絶大であるためみんながみんな言いたいことを言い殺して、ただその権力に縋ろうと媚を売ってきている。


政貴、いや一真としても現実世界で生徒会長をやっていた時に身内のノリで賄賂を渡されるようなことはあったが、これがノリ一才無しの媚び売りだと思うと逆に気持ち悪さを感じてしまう。


全員が模擬刀を持ったところでようやく本格的な訓練が始まった。この世界での戦い方は手に持った模擬刀に力を込めて、そこから炎や水を発生させて戦うというものらしい。


そういえばこれまで意識したことが無かったのだが、よく考えればこれから自分で剣とか炎を操れるという男子全員が憧れるシチュエーションであることを思い、少しテンションが上がるのだった。


「お前ら、好きにぶっ放してみろ」


中庭に一列に並んだ政貴たちにそう号令が掛けられた。だだっ広い空間に向けて好きなようにしても良いとのことだ。


早速、剣を思いっきり振ってみる。


ビュンと剣先が風を切り裂くような音と共に足元に向かって垂直に落ちていく。


ん?おかしいぞもう一回


再び剣を両手でしっかりと握り、剣を振り上げる。そしてその鉄の塊を重力に逆らわず、いやその重さを加速に変えて大地に向けて思いっきり振り下ろした。


再びビュンという風を切り裂く音は聞こえたが、何も起きない。


これまで魔法なんて使ったことが無かったため、どうすれば周りにみたいに剣から火を出せば良いのか、そもそもの感覚が全く分からなかった。


それを見かねたのか先生がやってきて耳元でこう呟いた。


「いいか、剣を構えて足先からエネルギーを感じるんだ。一点集中してそのエネルギーを足先から指先、そして剣先に伝えて思いっきり解放しろ」


なるほど、やってみるしかない。言われた通りに再び剣を構えて集中する。周囲の雑音や喋り声のノイズを排除して、体に伝わってくるのは風の音だけだ。


そして言われた通りに足先からエネルギーを感じてみる。すると足から熱のような何かが体に入ってくるのを感じる。そしてそれは足先から胴体へと上がり、やがて振り上げた指先へと伝播していく。


剣に、エネルギーが伝わっていくのがよく分かった。そして今にも暴れそうなそれを限界まで溜めてから、一気に解放する。


シュッと先ほどとは違う風切り音が剣から伝わってきた。上手く振り下ろせたのか感覚も先ほどとは違い空気の抵抗を全く感じず、重い模擬刀はその重さを全く感じないほど軽く地面に落ちていった。


そしてその感覚から遅れて手に痺れのようなものが残った。長く手を上げていたかららだろうか、しかしその痺れはあっという間に治った。


・・・やけに周囲が静かだな


そう思い何気なく右側を振り向くと全員がこちらを見ていた。そして反対側を振り向くと同じく全員がこちらを見ていた。


「驚いた、まさか雷を司るとはな」


声がした方を振り向くと先生が驚いた表情でこちらにやってきた。






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