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俗に言う出会いは最悪ってやつだ  作者: ルーラブ


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元の世界に戻りたい

鳥の囀りと共に微睡の中から意識を取り戻す。そして眠る前の記憶を思い出し、一気にベッドから起き上がった・・・つもりだった。


「マジかよ」


起き上がったのはベッドではなくすっかり体に馴染んだせんべい布団だった。


そして景色も昨日とは全く変わっていない。入れ替わり失敗だ。


そうなると一つの仮説が現実味を帯びてくる。そしてそれは最も考えたくなかった説だ。


「一生、この世界で生き続けるのか・・・?」


寝起きながら、その可能性が思い浮かんだ時には体の中からゾッとする感情が喉元を伝ってきた。


この世界も、別に悪くはない。なんなら待遇は前の世界とは比べ物にならいほどにいい。しかしながら、あの生徒会室に二度と戻れないのは一真にとって何よりも辛かった。


「折角、仲良くなれたのに」


どうせこうなるなら、あの時勇気を出して謝罪しなければとも思う。そうしておけば今頃、元の世界に未練なんて無かったかもしれない。


ドッドッド 昨日と同じ足音がしてきた。


「あら、今日もお早いですね」


そして昨日と同じ人に連れられ、昨日と同じような朝食を取る。この日は両親は仕事で不在で、姉か妹かは分からないがおそらく妹だと思う人物と食事を共にするが、会話は無い。正確には何を話せば良いのか分からなかった。


そして食事後は勉学に励むと嘘を付き、書庫に籠る。昨日とは違い、紙とペンを部屋から探し出して持参した。


「この世界には魔法がある。そして俺自身は魔法を使える」


午後からは魔法の訓練とやらがあるらしい。なのでそれまでの時間で必死に魔法について調べる。理由は元の世界に戻る手立てを探すためだ。


現実世界からすれば、水や火を出せる魔法なんて非科学的なモノだ。すなわち元居た世界に戻るという非科学的なことも魔法なら実現出来るかもしれない。


そんな思いで片っ端から本を読み進めた。


ー「まだ居られたのですか」


我に帰ったのは、そう言われて肩を叩かれた時だった。振り返ると今朝起こしに来たお付きの人が、少し息を切らしながら自分の方を見ている。


「す、すいません。ちょっと夢中になっちゃって」


午後からは魔法の訓練だと聞いていたので、呼びに来た理由はすぐに分かった。慌てて本を元の場所に戻して持参した紙を片付けていると、お付きの人はクスクスと笑いながら


「こんなに勉強熱心になるなんて、珍しいですね」


と言いながら片付けるのを手伝ってくれた。


集合時間ギリギリのようで、少し慌てて中庭に向かうとそこには食事の時にいた妹(姉かもしれない)が待機していた。


中庭まで小走りでお付きの人が案内してくれた。そして到着して中に入るとすでに到着していた妹(仮)を発見して「お姉さん、先にいらっしゃいましたか」と声を掛けた。その発言から妹だと思い込んでいた自分より背が低くて幼く見えるこの人は姉だと言うことが確定した。


とりあえずこれで大まかに時任家の家族構成を理解することが出来た。


ー魔法の訓練、そう聞けば誰もがマジカルでイマジネーションな光景を思い浮かべるだろう。


しかし、まず初めに課されたのは中庭五周ランニングの準備体操体だった。


庭と言いつつ一周およそ四百メートルはあるもはや高校のグラウンドよりも大きな庭をぐるぐるとランニングしていく。


ちなみに姉は女性だからという理由でランニングは二周に減らされている。


「なんだ政貴、今日は遅いな」


四周目を迎え体力の限界を感じ始めている中、余裕そうな笑みを浮かべながら一緒に走ってくる男は・・・えっとごめん、誰だ?こんなに歯が白いやつがこの世界に居るのか?


ハッハッハー!とその白い歯を見せびらかしながら走る


この馴れ馴れしい感じ、おそらく政貴の友達だったやつに違いない。しかし申し訳ないのだが記憶を受け継いでいないため誰なのか分からない。仕方ない、後でさりげなく名前を探ろう。


ただでさえ体力的にキツいランニングに厄介な存在が舞い込んできたため適当にあしらいたいのだが、名前も分からない友達を適当にあしらうのはなんだか申し訳ない気がしたため、適当に愛想笑いを返していた。


結局歯の白い男は最後まで並走してきた。初めは鬱陶しかったが、隣で励まされたお陰で最後の一周を乗り切ることができた。


「ありがと」


そのことに対してお礼を伝えると、彼は目を丸くしながら「体調でも悪いのか」と急に心配してきた。


「なんだ、政貴が匠に構うなんて珍しいじゃねぇか」


その様子を見ていたこれまた同い年ぐらいの男性がこちらに寄ってくる。「よっ」と軽く挨拶をされ、初め自分に対しての挨拶だと気が付かなたかった政貴は慌てて「よ、よう」と吃りながら返事を返した。


その様子を見てさらにいつもの政貴と様子が違うと笑われるのだった。


ーピーッと笛の音が突如鳴り響き、「全員集まれ」と合図を掛けられる。


どこかで聞いたことがある声だな、そんなことを頭のどこかで考えながら笛の音の方に走って行った。


バシッ


号令を掛けた女性は、竹刀を地面に叩き付ける。そしてその音に全員がビクッと体を震わせた。


「お前ら、昨日は休みだったからって弛んでるんじゃねぇのか?あ?」


どうやら、集合が遅かったことに腹を立てているようで竹刀をバシバシと叩き付けながら叱責を繰り返す。


政貴は説教を聞きながらも、どこか聞いたことがある声だと必死に記憶を辿っていく。そして遂に一件の検索候補がヒットしたのだ。


今日の朝起こしに来てくれた人だ。


普段、と言ってもまだ二日間しか会ってないがその印象では髪を下ろして優しい目をした怒っている姿が想像出来ない、そんな女性だった。


なので目の前に居る竹刀を叩きつけ、振り回している女性と朝笑顔で起こしにくる女性が同一人物だと気が付くのには時間が掛かった。


声もどこか普段より低く感じ、髪も束ねているのでパッと見では同一人物だとは気が付かない。


そして目の前の竹刀を振り回す頭のおかしい女性が、あの朝起こしに来ていた人だと結びついた時、どうもおかしくて思わずプッと吹き出してしまった。


バシッ


その瞬間、政貴の脳天に鋭い一撃が飛んできた。




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