40話 問題は増えるもの ~わたしがやりたい事1~
あれから数日間、講義再開の言い訳を考えた。
精霊たちと一緒に、色々と考えてみたものの、良いアイデアは思い浮かばなかった。
無言の圧というか、待たせ過ぎるのもよくないと、勝手に焦りが募った。
そこで思い切って直球勝負に出たところ、お母さんは「あらあら~」と、いつもの笑顔で了承してくれた。
悩んだわりには、すんなり許可が降りてしまった。
……あれだけ悩んだのに。
ただし、家事手伝いもあるので制限付きだ。
生活スタイルも少し変わった。
組合制度の導入によって、倉庫での作業ができなくなってしまったのだ。
他の従業員がノックスの手伝いにひっきりなしで、わたしの関与がバレてしまう。
とはいえ、特に困ってはいない。
お試し実験はできなくなったが、知識の言い訳に実験の偶然を装う必要がなくなったから……。
そう! わたしが手に入れた最強の言い訳。
講義で聞いた。
所長に教えてもらった。
万能調味料みたいに、なんにでも使えるのだ。
もうツッコミは怖くない。
せっかく心配がなくなったわけだけど、これ以上、何かを作る必要があるのだろうか。
組合制度のおかげで、ぬか石鹸はレント商会以外でも流通するだろう。
売れれば売れるほど、売上の一部がレント商会の儲けとなる。
レント商会は大儲けの状態だ。
さらには化粧水が控えている。
ぬか石鹸以上に、大反響となるに違いない。
……わたしたちって、もう富豪クラスなんじゃない?
数年も待てば、ノックスが開業し自分の店も持てるだろう。
その際、ぬか石鹸や化粧水の所有権がどうなるか次第だけれど、当分はお金の心配もなさそうだ。
「その緩みきった顔をなんとかしなさい」
……あっ、所長がいるの忘れてた。
所長はやれやれといった顔で注意し、休憩中だというのに時間が惜しいと机に向かって筆を走らせていた。
制度導入のおかげで、役所も大忙しなのだ。
「休憩中なのでセーフです」
「はぁ、まったく……君の目標は、ほぼ叶ったようなものだ。今後はどうするのだ?」
「今後かぁ、どうしましょう。できれば、生活するにあたって便利な家電は欲しいですね」
「貴族の生活すらも一変するようなものは、控えなさい。領内だけの影響に留まらん。庇いきれんぞ」
……ですよね~。
前に聞いたことがある。
例えば、冷蔵庫や冷凍庫。
これに代わる物を、貴族はすでに持っている。
魔石に水の魔力を込め、冷却装置の代わりをしているそうだ。
ただ、単純に魔力を込めるのとは違い、属性を操るのは非常に難しいみたい。
属性の魔力を込める。
これを専門にしている人たちもいるぐらい。
貴族の家を継げなかった者たちが、そうした商売を貴族向けにしているらしい。
ちなみに治療院なども、その手の人たちが経営しているみたい。
そうなると、この魔力の代わりを電気で行った場合、魔力を扱える貴族の優位性が崩れかねない。
電気の開発は貴族全てを敵に回す事態になると、釘を刺されたのだ。
「……ってことは、電気の代わりを魔力で行えばいいのですね?」
「話を聞いていたのか?」
……ちゃんと聞いてましたよ~。
わたしは縦に首をブンブン振って、提案する。
「電気を貴族が生産できれば、貴族の優位性は崩れませんよね?」
所長は「また、非常識な」と、眉根を摘んで呟いた。
「君の話だと、雷の属性が似ているという話だったが、そんな属性を操れる貴族はごく僅かだ」
「電気……いえ、この場合、魔力そのもので作動する物を作れば良いのでは?」
属性がぁ~とか言っているから難しいのだ。
魔力は全ての貴族が持っているので、魔力で動く物を作れば解決ではないか。
発電所のように、魔力を提供できる貴族の優位性は崩れない。
「本気か? ……いや、仮に実現した場合は……」




