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私の秘密は増えてゆく ~この幸せを守るため――だからわたしは仮面をかぶる~  作者: 月城 葵
三章    少女と暴かれる秘密

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40話  問題は増えるもの ~なにやら決まったらしい~



 光の月、後節。


 新年を祝う街の活気が落ち着きを見せ始めた頃、わたしへの厳戒態勢がようやく解かれた。


 所長曰く、実行犯が捕まり、狙った理由が突発的な理由だったためだとか。


 これで、怯えて暮らす必要はなくなった。

 しかし、講義へ行く表向きの理由も無くなってしまったのは痛い。


 所長には、まだ教えて欲しいことは沢山あるのに……。


 そんな所長も、危なっかしいわたしを目の届く所には置いておきたいらしい。

 いつもの無表情で「母親に相談をして、講義再開の承諾を得なさい」と言われた。


 ……簡単に言ってくれるよね~。でも、精霊の件もあるしなぁ。



 普段の生活に戻り、家と倉庫を往復する日々。

 毎夜、不思議空間で講義再開の理由を考える毎日だった。


 そんなある日、満面の笑みを浮かべたノックスから、組合という制度が導入されたと聞かされた。


 ついに、所長の言っていた政策が施行されたようだ。

 それと同時に、領主直々に書面で平民へ告知が行われたらしい。


 組合制度導入に伴い、労働力確保を後押しすべく、役所にて掲示板を設置。

 広く人材を募集するため、仮にではあるが六等平民へ市民権を貸し与えるという驚くべき内容だった。


 ……大丈夫なのそれ?


 所長の危惧していた問題はどうなったのか。


 ノックスの話では、なんと仮ではない市民には、給金を得ている個人単位での税の徴収を開始するらしい。


 所謂、所得税である。


 今までは店舗のみから徴収していたが、仮の市民権を持つ六等平民からも個人単位で行うらしい。


「個人での申請は不要。全部、雇う側がすることさ。僕らからすれば、何も変わらないよ」

「上手いこと、考えたんだねぇ……」


 六等平民にかかる税は若干高め。

 その代わり、商会側は利益分の税が軽減されるため、従業員を増やしても納税額は大きく変わらないらしい。


 人手不足の店は労働力を得られ、人手を増やさない店は税の軽減分だけ得をする。


 どちらを選ぶかは、各経営者の判断に任されるというわけだ。

 頭の良い人たちは、サクサクと制度を決めていったのだろう。


「市民権を与えちゃって、みんな反発はしなかったの?」

「それがさ……ルルも聞いてびっくりするよ」


 仮とはいえ、市民権を手軽に与えることへ市民の反発が予想されるが、対策案も立てていたようだ。


 なんと市民には、治療院の費用を大きく引き下げると発表された。

 これには、役所前に集まった平民たちも大騒ぎだったらしい。

 もちろん仮の市民権所持者も利用可能だが、市民よりも割高らしい。


 この世界には魔法があり、ほとんどの怪我が魔法で治癒されるが、平民には高すぎて利用が難しかったのだ。


 それが、度合いにもよるが少額で済むという。

 毎節とはいえ、所得税を納付するだけで治療院が利用できるとは、なんとも大盤振る舞いだ。



「いくらか気になるかい?」

「う、うん」


 わたしが気になる顔でもしていたのだろう。

 ノックスが、税についても教えてくれた。


 所得税も大きな金額ではなく、生活に支障が出る程ではなかった。

 今までも店側が払っていたので、特に変わらないようだ。



 結局のところ、六等平民以外は、ほぼ今まで通り。

 むしろ、治療院を格安で利用できるようになるという、おまけ付きだった。


 そこまでしたとしても、街全体の税収は上回ると結論付けたのだろう。


 ……ぬか石鹸と化粧水の影響って、相当すごいのね。


 懸念材料としては、これからも六等平民を労働力として使い、税金逃れを企む商会がありそうだということ。

 しかし、仮とはいえ市民権を得られるのに、申請しないで働けと言って、働き手が納得するかという話だ。


 どちらにしろ、あとは自己責任の範囲だろう。


 ノックスの話は続いたが、途中からわたしも理解が追いつかなくて、重要な部分はこんなところだった。


 ……ん? ほとんど、わたしと話してた内容じゃない?


 どこかで聞いたなと思っていたが、なんてことはない。

 講義で所長と話していた内容だった。


 わたしの問題を平民の問題に昇華して、それを丸ごと解決してしまったようだ。


 ……あの人、どんだけ優秀なんだか。


 もしかしたら、初めからそれを狙っていたのだろうか。

 だとすれば、一体いつからなのか。


 ……そんなわけないよね。平民間の問題だったんだし。


 流石に飛躍しすぎだ。

 いくら所長の頭が良いとはいえ、それは考え過ぎだと結論付けた。




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