38話 解決できそう? ~砕け! シュワシュワ石~
制度の講義をした翌日。
講義の休みを利用し、わたしは商会の倉庫でお手伝い中である。
グルグルと鍋の中身をゆっくりかき混ぜ、ぬか石鹸をせっせと作成中。
ノックスが分量を調整し、わたしとアイナが混ぜ合わせる担当だ。
「お~い、エステラこんなんでいいのか?」
「ラウル、もっと細かくっ!」
倉庫の中が騒がしい。
「エステラ、こんな感じか?」
「ポールのは、それでいいわ。ちょっとマルコ、休憩が早いわよっ!」
「えええぇ~」
休みが重なった三馬鹿をエステラが呼び出し、絶賛、鉱石を粉末状にする作業中である。
この作業が最も力を必要とし、時間もかかる。
鉱石を砕くだけならと、ノックスも了承したらしい。
実際、手伝ってもらえるのは有り難いようだ。
……そういえば、二人に頼んだ商品は順調なのかな?
わたしはグルグル回す手を止めずに、ノックスに尋ねた。
「お兄ちゃん、洗濯板とか、おろし金の売れ行きは順調?」
「ああ、評判はいいよ。おろし金の方は新しい料理の思案中だから、洗濯板ほどじゃないけどね」
……好評なのかぁ。洗濯場に行ければ、見れるんだけどなぁ。
「お~っし! こっちの分は終わったぞ。マルコっ! 飯だ、飯」
やりきったラウルの大きな声とともに、休憩を取ることにした。
各自、お弁当を持ち寄って机で食べる昼食は、なんとも学生時代を思い出して、懐かしくなってしまう。
あの頃は、本当に他愛もない話で盛り上がったものだけど、今はかなり建設的な内容だ。
「あの返しの部分が難しくてな……」
「あれは難しそうだよな。板の方も溝を掘るのが結構、神経使うんだよ」
ラウルとポールは制作中の製品について、意見を交換中。
あの年齢で職人のような会話を交わしている。
なんとも仕事熱心なことで。
……職人だねぇ。
エステラとアイナは、何やらコソコソと内緒話だ。
一体何を話しているのだろうか。
「あの男が」とか「えぇ~、ホントに? 倉庫街?」など、途切れ途切れに聞こえてくるが、周りの声と重なってイマイチ聞き取れない。
わたしはというと、ノックスやマルコと、おろし金について話し合っていた。
二人とも、新しい料理は待ち遠しいようだ。
「ノックス、今は穴の大きさの調整してもらってるんだ~」
「大きさを?」
「そうっ!大きさ。食材によって使い分けるんだよぉ~」
マルコは、食材によって、おろし金を使い分けているらしい。
流石は宿屋の料理番。
ノックスは、具体的にどういった変化があるのか興味があったようで、質問を繰り返しては聞き入っている。
「例えば、チーズとか削るだけで香りもコクも段違いだよぉ」
「へぇ~、そういう工夫もあるのか」
「すごいのね、マルコ」
……わたしはおろし金と聞くと、大根おろしを想像してしまうが、マルコはチーズかぁ。
「ねぇ、マルコ。それだと、目詰まりしない?」
わたしの疑問に、目を輝かせてマルコは言った。
「おおぉ、よくわかったね。それでラウルに色々調整してもらってるんだよぉ~」
他にも刃の向きを一定方向にした方が、水洗いが楽になるなど、色々とラウルに注文しているらしい。
調理道具に関しても、マルコに任せておいて大丈夫だろう。
きっと、勝手に改良してより良い物ができそうだ。
マルコは笑顔で「その時は呼ぶから、食べにおいでよぉ」と、新しい料理が完成したら試食させてくれるらしい。
……その時は、ごちそうになります。




