33話 成功と失敗 ~成功の余波は苦い味2~
わたしは疑問に思い、ノックスに顔を向けた。
ノックスにしては珍しく、視線を逸らした。
……何があったの?
「う~ん、問題と言えば問題なんだけど……」
……お兄ちゃんにしては、歯切れが悪いなぁ。
「妹ちゃん、実は手が足りないんだよねぇ」
「あっ……」
ノックスが言い辛そうにしていると、横にいたアイナがさらっと告げた。
額に手を当て俯いたノックスとは対象的に、アイナは勝ち誇った顔だった。
「隠したってしょうがないじゃない」
「手が足りない?」
アイナは「結局のところ、労働力が足りていないのよね」と言い、理由を話してくれた。
商売自体は何の問題もない。
売上も商会内で好調のようだ。
だが、二人だけでこなすには厳しく、連日いっぱいいっぱいだそうだ。
商会はというと、材料の搬送や販売を請け負ってはいる。
だが、わたしがポンポンと新製品を出してしまうため、ノックスが調整にかかりきりになってしまった。
わたしが協力していることは秘密。
そのため、他の従業員の手を借りる訳にもいかず、ノックスは生産に調整にと奔走。
アイナは助手として走り回っているのが、現状らしい。
……わたしのせいだったか。
「本来、生産は任せられるんだけどね。会長から許しが出ればだけど」
現状、洗濯板やおろし金の方は問題ない。
調整はほぼ終わり、後は工房、鍛冶屋に発注をかけるだけでいい。
問題はやはり、ぬか石鹸。
製法は開発者であるノックスしか知らない。
これは従業員であっても、知ることができない情報だ。
商会側から開示を求められれば開示する。
しかし、まだ流通のしていない商品であるため、製法を公開するわけにもいかないというのが会長の考えだった。
商会側も、情報の漏洩に十分注意をしているようだ。
……会長の言い分もわかるけど……う~ん。
ここ最近の商品は、ぬか石鹸からの派生だ。
なので、ノックスとアイナが大量に生産しなければいけない。
尚且つ、洗剤や三種類の石鹸の調整と、ノックスは大忙しだったようだ。
そんな中、フレデリカが現状の材料分で作製できる約三割の数を発注したのだ。
ノックスも嬉しいやら、苦しいやらで息つく暇もなかったみたいだ。
……そんな事になってたのね。
「断ることもできないしね。なんとか乗り切るさ」
ノックスは「大丈夫だよ」と、笑みを浮かべる。
しかし、言われなければわからなかったが、注意深く見れば、やはり表情にはやや疲れが見える。
アイナもノックスの仕事量を知っているせいか「倒れないでよ?」と、ノックスの背中をパンッと軽くはたいた。
……この問題は思ったより、深刻そうだ。




