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私の秘密は増えてゆく ~この幸せを守るため――だからわたしは仮面をかぶる~  作者: 月城 葵
一章    増える秘密と広がる波紋          
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24話  出会いはいつも突然に ~浮かぶ球体の真実~



 いつ眠ったのか憶えていない。

 気がついたらこの空間にいた。

 いつもの不思議現象の空間だ。


 ただ、普段と様子が違う。


 わたしの周りに浮かぶ球体たちが、やたらと点滅を繰り返している。

 さらに、なんだか体が重く怠い。

 今までは、このような激しい点滅や、体の違和感はなかったのに……。


 ……寝る前は何してたっけ? 洗濯をして、洗剤の話をして鍛冶場へ……う~ん、その後、帰宅して夕食を……食べてないような?


 正直、記憶が曖昧だ。

 鍛冶場の応接室に通されて、お茶をもらったところまではわかるのだが、そこから先がふんわりしている。


 ……夕食を食べた記憶がないんだよなぁ。話し合いが終わって……帰り道で、やたら急いでる馬車を見て――っ!



 思い出した。

 

 よほど体調が悪かったのか、あの時、朦朧としていたせいか、今の今まで思い出せないなんて。

 エステラやラウルの抵抗むなしく、突如現れた馬車の男たちに攫われたのだ。


 ……お姉ちゃん怪我してないかな? ラウルが間に合ったと思うけど……。


 エステラのことも心配だが、今は自分の置かれた状況も大変だ。


 これからどこへ連れて行かれるのか?

 生きていられるのか?

 逃げることは可能なのか?


 正直、全く予測できない。

 判断材料が無いのでどうしようもないが。


 ……良くても奴隷として売り飛ばされて、命だけは助かるってところかなぁ……ラノベでよくある話だけど、どうしようこれ。


 不思議現象のおかげで落ち着いて整理できてはいるが、もしこれが現在進行系だったら、焦って冷静な判断もできないだろう。


 それにしてもと思う。

 待てども待てども、前世の記憶が流れ込んでこない。


 周りに浮かぶ球体が、やたらと点滅しているのも、何かを伝えようとしているのだろうか?


 ……いつもと様子が、う~ん。


「ねぇ、もしかして何か伝えたいの?」


 こうやって不思議空間で、球体にちゃんと話しかけたのは初めてかもしれない。

 そもそも、浮かぶ球体と話せるなどとは思ってはいないが、今回は様子が違うので話しかけてみたくなった。


 もちろん、返事を期待したわけじゃない。

 ただ、心細くて反応が欲しかっただけかもしれない。


 ……まぁ、何も起き――って、おやっ?


 意思を持つかのように、球体たちが、わたしの周りに集まってきた。


 明らかに、わたしの言葉に反応しているようだった。

 どうにかして、球体たちと意思疎通をしたい。


「え~っと、『はい』なら青、『いいえ』なら赤ってできる?」


 なんと球体が青色に変わった。

 わたしの言葉を理解しているようだ。

 これは新発見だ。


 とはいえ、何を聞けばいいのだろう。

 まずは相手の素性だろうか。


 とりあえず、だったらいいなと頭に浮かんだ質問を投げかけてみる。


「もしかして、妖怪さん……だったりします?」


 ……おぉぉぉっ!


 青色だったり、赤色だったりと妖怪以外もいるようだが、妖怪という存在に初めて出会えた。

 夢にまで見た妖怪たちとのご対面がこんな形とは、なんともいえない感じだが、ジワジワ胸が熱くなる。


 嬉しくて駆け回りたいのに、今は体が動かないのがなんとも歯痒い。


 ……くぅぅぅ~。これはテンション爆上がりだよぉぉっ!


「じゃ、じゃぁ、この中に妖精さんっていますか?」


 ……マジですか。


 しかし、なんということだろうか、自分の置かれた状況はそっちのけで、自身の頬が緩むのがわかる程、楽しくなってきてしまった。


「え~っと、神様ですか?」


 わたしは、ほっと胸を撫で下ろした。

 流石に神様までいたら、腰を抜かしていたかもしれない。


「精霊さんはいますか?」


 全て青色。

 みんな精霊だったようだ。


 妖精や妖怪も、この世界では精霊の一種なのだろうか。

 詳細はどうであれ、本人たちが精霊と言っているので、精霊ということにしておこう。


「みんなとは、この空間以外でも会えるの?」


 どうやら空間外でも存在しているらしい。

 ということは、外の出来事も把握できるのだろうか。


「お姉ちゃんは無事か、わかる? 無事なら青で」


 ……青色。よかった。お姉ちゃんは無事みたい。


 わたしは、大きく息を吐いて胸をなでおろす。


 テンションが上がってしまい色々と質問したが、結局のところ何を伝えたいのだろうか。


 一方通行の質問にも限界がある。

 わたしが思い当たらなければ、相手の意図がわからない。

 夢中になりすぎて、肝心な質問ができていない。


 どんどん自分の身体や球体たちも透けてきている。

 そろそろ、現実のわたしが目を覚ましてしまうかもしれない。


「もしかして、もう時間ない?」


 ……やっば、青色じゃん。


 焦れば焦る程、何を質問すればいいのか、わからなくなってくる。

 このままだと、ただ球体たちが精霊だったことしかわからない。


 ……全然わかんない。どうしよう、時間が――もうこれしかないか。


「お願いします、助けてくださいっ!」


 どうやら、わたしの全力のお願いは通じたようだった。

 消えゆく間際、球体たちが激しく青色に点滅していた。


 もう、信じて助けを待つとしよう。


 ……五歳児にできることなんて限られてるし、生き延びることだけを考えよう。


 この空間のおかげで、気持ちと考えを整理ができた。

 これがなかったら、目覚めてすぐパニックになっていただろう。


 徐々に、ふわふわとした感覚が薄れていく。


 ……そろそろ、かな? あぁ、緊張してきた。でも、やるしかないっ!







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