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私の秘密は増えてゆく ~この幸せを守るため――だからわたしは仮面をかぶる~  作者: 月城 葵
三章    少女と暴かれる秘密

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50話  絶望に抗う ~小さな勇気1~



 ……あれだ。


 荷馬車の幌にかすれて書かれたトバの文字。

 その下から漏れてくる小さな泣き声に、胸がぐっと締めつけられる。


 ……間違いない……子供たちが閉じ込められてる。


 私は隣にいるエステラの手を強く握った。

 肩が細かく震えているのが、伝わってくる。

 今まで我慢してきた分、子供たちの声に今にも暴発しそうな感じだ。


 私が倉庫街でダズマを見たなんて言わなければ……。


 最初は、ただの興味本位。

 追った結果、そこで何が起こるのかを想定していなかった。


 仕事中、エステラの違和感にノックスは何かを感じていた。

 だから、忠告してくれたのに。


 ――「何をしているのかは知らないけれど、無茶はだめだよ」


 ……ごめん。ノックス。深追いしすぎたよ。


 ふいに、握った手に力が加わるのがわかった。

 嫌な予感がして、エステラに顔を向ける。


「もう我慢できない!」

「しっ、エステラ!」


 慌ててその口を押さえ、私は低い声で囁いた。

 声をあげれば、私たちの存在はすぐに気づかれる。

 でも、エステラは潤んだ瞳で私を見返してきた。


「だって……泣いてるんだよ! 子供たちが、助けてって!」


 その言葉に、私も胸が痛くなる。

 本当は今すぐにでも飛び出して、馬車の幌をひっぺがしてやりたい。

 でも、頭のどこかで理解していた。


 ……私たちはまだ子供……正面から行っても、絶対に敵わないよ。


「待ってよ、エステラ。まずは誰かに伝えなきゃ」


 そう言って必死に彼女の手を握りしめる。

 けれど、次の瞬間――


「ごめん、アイナ!」


 掴んでいた手から、エステラの手がするりと抜けた。


 エステラが夕暮れの光の中へ駆け出していく。

 その姿に、自分でもわかるほど焦りが増す。


「エステラ!! 駄目っ!!」


 私も慌てて追いかける。

 でも――遅かった。


 荷馬車の前で頭を下げていたダズマの鋭い視線が、エステラに向けられた。


 そして、その後ろに立っていた少女が私の目に入る。


 彼女は私とそう変わらない年頃――たぶん十五歳前後だ。

 けれどその佇まいは、どこか恐ろしい。


「……あら? 可愛い子猫が飛び出してきたわね」


 夕暮れの光に照らされた微笑みは、あまりにも綺麗で残酷だった。


 彼女の瞳に射抜かれた瞬間、私は思わず足を止め、息を呑んだ。

 人を人として見ていない目。



 ……だめ、エステラ……この子……この子が一番危険……!




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