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私の秘密は増えてゆく ~この幸せを守るため――だからわたしは仮面をかぶる~  作者: 月城 葵
三章    少女と暴かれる秘密

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43話  小さな調査官 ~踏み込んだ先に2~



 わたしたちは一度役所へと戻り、トランと調査の報告を済ませた。


 所長から特に指摘がなかったのは気になるが、上々の出来だったのではないかと思う。


 きっと今頃、執務室で所長も色々と考えていることだろう。



 ◇ ◆ ◇



 三の鐘が鳴り昼食を済ませると、トランは書類を領主の城へ届けるため早々に講義室から出て行った。


 ただ別れ際に「ルルーナ様、今回は非常に良い経験になりました。役所のどの役人よりも仕事を一緒にしていて楽しかったですよ」と、賞賛を送られたのにはちょっとびっくりした。


 ……敬語になったり、軽口叩いたり、なかなか難しい人だったなぁ。


 トランとの仕事は特に詰まる所もなく、終始順調だった。

 五歳児のわたしを見えないところでサポートをしてくれていたはずだけど、それも感じさせなかった。


 やはり所長が選ぶだけあって、出来る人間を選んだのだろう。

 そんな人物から、世辞とはいえ賞賛を送られたのだ。

 鼻が高くなるのは許してほしいところである。


「うへへぇぇ~……そうですかぁ。わたし、できちゃいますかぁ」

「調査に行った後とは思えないほど、緩んだ顔だな」


 聞き慣れた声がして、ピーンっと背筋を伸ばす。


 ……いつ入ってきたんだろ。


「ノックぐらいして下さい」

「自分の部屋に入るのに許可が必要か?」


 ……たしかに。


 わたしがムスッと言い返すと、ぐうの音が出ない程の正論で返された。

 これは無理だ。


「さて、報告書は読んだ。君の感想を聞こう」

「はい」


 軽口はここまでだ。

 所長が席に着くと雰囲気が変わるのがわかる。


「……う~ん、怖かったです」

「だろうな」


 ……それだけ?


「それだけか?」


 ……それを言いたいのはこっちなんですが!


「東地区を見てどう思った?」


 所長は埒が明かないと思ったのか、質問形式に切り替えたようだ。


 一瞬言葉に詰まったが、あくまでわたしの感想だ。

 嘘偽りなく話した方がいいだろう。


「商業区や西地区に比べると、出歩くのが嫌になると思える場所でした」


 表情を変えず所長は続ける。

 おそらく、予想の範疇だったのだろう。


「君のいた世界に比べると、どの程度だ?」


 ……現代と? 殺し合いが行われていないだけマシって考えると……。


「全部を知っているわけじゃないので……わたしの知る限り、最悪より多少マシといったところでしょうか」

「君の知る最悪はどんな場所だ?」


 わたしは顎に小さな手を当て考える。


「法の秩序が機能しておらず、殺し合い、奪い合いが日常的に行われている場所といえばわかりやすいかなと」

「そこよりはマシということか……これはまた厳しい評価だな」


 東地区の道端での子供たちの様子、人々の不安げな視線。

 そして、亡くなった人に対する無関心に近い近隣住民の態度に抱いた感想だ。


 食料や安心して寝る場所も確保できない人々が、たぶんいるだろう。

 服を着ているだけまだ文明的だけど、本当にギリギリラインだと思う。


「君の考える生活の最低水準はどの辺りだ?」


 これは今までの常識を考えるテストだろうか……所長は何かを試しているような気がする。


 今まで習ったことから考えると……。


「子供たちが物乞いをしなくてもよい環境を整えるのが、今出来る最善かなと……付け加えるなら、犯罪に加担しなければ生きられないような状況もなくすべきと考えます」


 一瞬だが、所長の目元が緩んだ気がした。


「どうかしましたか?」

「君にしては、現実的な良い回答だったと思ってな」


 ……いいや、そうじゃない。なぁ~んか違う。


「なんだ、その目は」


 じーっと、所長をジト目で見ていると、根負けしたのか「やれやれ、なぜ変なところは鋭いんだ」と、理由を話してくれた。




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