41話 問題は増えるもの ~秘密がまたひとつ増えました3~
その日の晩、わたしは不思議空間で再び精霊たちに会うことにした。
精霊は言葉を発することはできない。
なので、わたしは所長の用意してくれた質問を行う。
「では、始めます。わからない時は黄色で示してね」
それぞれの精霊の反応に注目し問いかけると、精霊たちは一斉に肯定の青色を示した。
「じゃあ、最初の質問ね。この二種類の薬草を…………」
精霊たちの反応を通じて、薬草が何らかの重要な意味を持つことを確信した。
しかし、この二種類だけでは足りないらしい。
所長の用意した薬草の名前にも否定の反応で、何が必要なのかまではわからなかった。
「次ね~。精霊の雫が必要か?」
わたしの言葉に、数体の精霊が肯定を示した。
ヨミをはじめ、力の強い個体は何か知っているようだ。
「これと混ぜるの?」
質問にはなかったが、気になって聞いてみると肯定の青色を示した。
どうやら足りない素材は、精霊の雫のようだ。
それを混ぜろということらしい。
それ以上はわからないが、所長なら理解できるだろう。
「この三つかぁ。うん。ありがとうね、みんな」
時間も残り少ない。
わたしは残った質問をサクサクと終え、やるべきことは終わった。
中には気になる質問もあったが、今はいいだろう。
わたしは内容を忘れないように記憶し、不思議空間をあとにする。
翌朝、わたしは屋敷へ向かい結果を所長に報告した。
時折、報告を聞いていた所長は険しい表情になったが、声の調子に変わりがなかったので特に問題はなさそうである。
「所長、精霊の雫って何ですか? それを混ぜるらしいんですが……」
所長は「また、余計な事を聞いたな?」と、わたしをじろりと睨む。
「念のため、それを混ぜるのか確認しただけです」
「はぁ……君は納得するまで、その顔だな」
わたしの顔に精霊の雫とは何かと、大きく書いてあったのだろう。
もちろん、知りたいのだが……。
所長は困った顔で「やれやれ」と呟いて、精霊の雫について知っていることを教えてくれた。
普通の果実と見た目は変わらないが、精霊の力が内包されている果実なのだそうだ。
その果実から抽出した果汁を、精霊の雫と呼ぶらしい。
「見た目が変わらないなら、どうやって探すんですか?」
「普通の者には、見つけることは不可能だろう。果実の中にある精霊の力を感じ取るしか方法はないのだが……」
そこで所長は話を区切ると、わたしを見た。
「君なら、可能かもしれんな」
「わたし?」
わたしが首を傾げると、所長は頷いた。
わたしならば、見つけることは容易いかもしれないと所長は言う。
果実の存在を、精霊が教えてくれる可能性が高いのではと、所長は推測したようだ。
「果実といっても、どこを探せばいいんでしょう?」
見分けがつかないのであれば、市場にも混ざっていたりするのだろうか。
それとも、森に入って探すのだろうか。
「市場よりも、森の中を探した方が良いだろう」
「森ですかぁ……行ったことないです」
「どちらにせよ、冬の間は無理だ。行くのは雪解けの後、早くても土の月だな」
春になったら、森に行くことが確定のようだ。
野生の動物なども生息しているようだし、わたしは大丈夫なのだろうか。
薪拾いとはわけが違う。
所長は「問題無い」と言ったが、不安でしょうがなかった。
「さて、君の場合、目の前の問題の方が深刻だな」
「目の前ですか?」
「そうだ。精霊の主になったことは、隠し通せるだろう。しかし、精霊が見えてしまう件に関しては注意が必要だ」
周りには見えない存在に対して、声をかけてしまったり、何かしら反応をしてしまった場合、誤魔化しきれるのかという問題だった。
「洗礼前なので、君から知らぬ者に声をかけることはないだろう。しかし、今後はないとも限らん。相手は人と限らず、この前のように動物の姿をしている場合もあるのだろう?」
「そうですね……」
たしかに、人型なら声をかけなければいいが、動物だとちょっと心配だ。
興味本位でかまってしまうかもしれない。
「極力、他の者がいる前で動物を見ても無視することだな」
「はい。注意します」
わたしの周りに再び精霊たちが集まれば、また見えなくなると思ったのだが、一度認知してしまったら、おそらく、そのままだろうと所長は言った。
秘密を守る言い訳の切り札ができたと思った矢先、また秘密にすることができてしまった。
……これは大変だぞ。




