41話 問題は増えるもの ~秘密がまたひとつ増えました2~
「効果を薄めるには……そのまま使えというのか? いや……」
所長は、何やらブツブツと調べ物に没頭中である。
そんな所長を眺めていたら、わたしは、ポンっと手を打ち閃いた。
「所長、わたしが聞いておくっていうのはどうです?」
「なんだと? いや……そうだな。これでは時間がかかり過ぎる」
なんとも残念そうな顔である。
そうそう見れる顔じゃない。
非常に珍しいのではないだろうか。
……研究したかったのか。この研究マニアめ。
所長には、紙にできるだけ肯定、否定で答えられる質問を箇条書きにしてもらった。
これならば、精霊たちにも聞くことができそうである。
所長が名残惜しそうに作業台から席に戻ると、先程の話の続きを始めた。
「それでは、心当たりはないのだな?」
「ここ最近は変わった事もなかったですし。強いて言えば、みんなに思い浮かんだ名前を付けたことぐらいですかね。とっても喜んで――」
「待て」
紫の瞳がすぅっと細まった。
……こっちも、ちょっと待って。その顔は……嫌な予感がする。
所長の眉間に皺が増えたようにも見える。
……この感じ。久しぶりだなぁ。
じわっと嫌な汗が、手のひらに滲む。
「精霊と契約を交わしたのか?」
「してませんけど……」
「精霊の名を呼んだのだろう?」
「はい。名前付けましたし……」
所長は呆れを通り越して、無の境地みたいな無表情になってしまった。
「…………なぜ、順序が逆なのだ」
「逆とは?」
一般的には助力を請うために契約を交わし、精霊から名を教わるそうだ。
それなのに、わたしは契約も交わしておらず、名を教えてもらうどころか名付けをしてしまった。
全て順序が逆だ。
そして、精霊の名前を口にできるということは、契約が交わされている証だという。
契約が無効ならば、知っていても名を口にできないらしい。
……それは呆れますよね~。
「本来ならば、精霊に名を教わり助力を請うのだ。逆になった場合、おそらく、君は精霊の主になった可能性がある」
「ある……じ、ですか?」
「そうだ。君は精霊の主になったのだ。それ自体が非常識だが」
……えぇぇぇ~。主になっちゃった。
「主になると、どうなるんでしょう?」
「知るわけがなかろう」
焦るわたしを見て、所長は額に手を当てると力無く俯いた。
……あれは完全に頭抱えてるなぁ。
所長は俯いたまま「で、みんなと言ったが、どれほど名を付けたのだ?」と、聞いてきた。
……この状況で、部屋いっぱいなんて言えない。
「えっと……五体ぐらいかな」
「そうか。数え切れぬ程と言うわけか」
……なぜバレる。
「君の周りに集まった精霊は多い。片手で足りる数ならば、君はみんななどと言わん」
「あぅ……はい」
……よくご存知で。
「精霊の主になってしまったからには、その影響は私にもわからん。今は様子見だ」
所長は調べなければいけない件ができたようで、わたしを部屋から追い出すと私室に閉じ籠ってしまった。
わたしも報告は済ませたので、役所に戻ってエステラのお迎えを待とう。
今ここでやれることは、もう無い。




