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私の秘密は増えてゆく ~この幸せを守るため――だからわたしは仮面をかぶる~  作者: 月城 葵
三章    少女と暴かれる秘密

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41話  問題は増えるもの ~秘密がまたひとつ増えました1~



 きっかけが何だったのかはわからない。

 最近、不思議な光景を目にするようになった。


 一昨日の就寝前。

 そっと窓の外の舞う雪を見ていると、夏でもないのに虫取り網を振り回している子供たちが、こちらに手を振っていた。


 網は前世で見たような形。

 この世界の物ではないと、すぐにわかった。

 そんな物を手にしている時点で、近所の子供たちではない。


 ……雪ん子なの? 何が起きてるの?


 そして、昨日は大通りを歩いている最中のことだった。

 行き交う人の肩に、大人の親指程の小さな人が乗っかっていたりと、今まで見たことのない現象に遭遇。


 極めつけは夕食時。

 部屋の隅に座敷童子のような子が、ちょこんと正座していた。

 それに気づいた時は、スープを吹き出すところだった。


 原因もわからぬまま、わたしの周りだけ、異常事態が発生中。

 次の講義の日まで、必死に誤魔化すだけの毎日が続いた。



 ◇ ◆ ◇



「さっき、中庭に妖精がいたんですが……」


 緊急事態というわけで、今日は無理を言って所長の屋敷で相談中である。


「妖精とはなんだ?」

「わたしの世界で伝え聞く種族です。姿が似てたもので」

「……君は平穏に過ごすのではなかったのか?」

「平穏無事が一番です」


 所長は大きくため息をついて眉を寄せる。

 そんな所長の背後にも、ぼんやりと何かの存在を感じるが姿は見えない。


「いつからだ?」

「数日前からです」


 所長は一つの仮説を話してくれた。


 わたしが意思疎通や球体状の精霊も見えるのに、不思議空間以外では存在を感じられなかった原因。


 それは、元々、わたしの周りにいる精霊たちが多すぎた。

 そのため、その感覚が当たり前になっていて、小さな存在に全く気づかなかった可能性が高いという。


 今のわたしの周りからは、精霊たちの存在を前ほど感じないらしい。

 そのせいで、小さな存在に気づきやすくなったのではと。


「いなくなっちゃったんですか?」

「私も経験がないので何も言えん。だが、一時的なものではないかと思っている」

「一時的……う~ん?」


 ……とりあえず、名前が気に入らなかったとかじゃなくて、良かったぁ。


「他に何か、心当たりはないか?」

「う~ん……ん?」

「どうした?」


 いつの間にか机の下にいた黒猫が、こちらを見つめて何かを訴えている。


「机の下に黒猫が……いるんですが」

「なに?」


 所長が机の下を覗くが見えないらしい。

 やはり、この子も精霊のようだ。


「私には見えんな……」

「何か伝えようとしてるみたいです」


 黒猫はこれを見てとでも言うように部屋の作業台の上に飛び乗ると、置いてあった二種類の薬草を前足で叩いた。


「これを……混ぜるの?」


 わたしが確認すると、黒猫はスゥーっと消えていなくなってしまった。


「所長、この二種類の薬草って何でしょう?」


 わたしが指差した薬草を、所長が手に取って確認する。


「毒の一種だ。混ぜた場合、幻覚作用がある……どういう意味だ」

「さぁ?」


 所長が、手に取った薬草をじっと見つめた。


「せめて配分がわからなければ、効果が強すぎて危険だ」

「どうします?」

「配分は少し考える必要がある」


 所長は机の引き出しから、使い古した手帳を取り出し、何やら調べ始めた。


 これをいきなり試すにはハードルが高すぎる。

 今は所長の判断を待とう。




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