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不運な召喚の顛末  作者:
第四章
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婚約者編 夏55

担当医官による診察を受ける。

部屋に現れたライラック姉弟は以前よりは落ち着いているようだった。二人共に大きな鞄を肩からかけている。

なんだろ、振り回されそうだな。

「宜しくお願いします」

私は椅子に座ったままで診察が始まった。

「は、はい。まず問診から、はじめます」

ドロアスから一枚の用紙を渡される。そこには質問事項が並んでいた。

「そちらに記入をお願い、します」

「はい。わかりました」

食生活や運動量、偏食、気になること、質問相談の有無などの項目に答える。中には健康に関係ない質問も結構ある。趣味とか食べ物以外の好き嫌いについて。

書き終えて用紙を返すとドロアスがすぐに目を通す。

しばらくして口を開いた。

「リオ様は問診内容から判断すると健康です。食べすぎに気をつけて、ゆっくり食べてください。寝相が悪かったと聞きましたが、改善していますか?」

「はい。暑がりだったようです」

「ミランダ様はリオ様について気になったことはございますか?些細なこと、健康に関係ないことでも構いません。」

ドロアスがミランダに尋ねる。

ミランダはしばらく考えて

「年下に弱いところでしょうか。見栄を張って無理をしていないか心配です。あとは気持ちを、弱みを吐き出すのが苦手なところがあります。」

そう答えた。私の根本の話だ。

「リオ様は弱みをグラッド様やミランダ様には言えますか?」

ドロアスは考え込むと、そう尋ねた。

「グラッド様には言うようにしています。ミランダにも」

「もし一人で解消できないことは…黙って話を聞いてくれる、寄り添ってくれる相手に吐き出してください。冷静になってから改善策とか対策は考えればいいので。」

「はい。」

初めて会った日とは別人にみえる。

「リオ様、触診をしても宜しいでしょうか」

「お願いします」

今度はドリスの番だ。私の脈や目の下、口の中、肌の状態、爪を診る。それから

「失礼致します」

肩、背中に触れる。

「服をはだけさせても宜しいですか?」

「はい。」

「失礼致します。」

シャツのボタンを外していくドリスの手つきは迷いがない。あの動揺は一体何だったのか。

「胸に触ります。失礼致します。気になる部分はありませんか?」

「はい。特に痛みもしこりもありません」

「!!…リオ様はわたくしが調べているものが何かお分かりなのですか?!」

「はい、えっと『腫瘍』、違う。えっとなんだっけ確か、他の言い方は悪い病気の元?バーバラ様の医学書に載ってました。なんでしたっけ」

「悪性腫瘍です。ご存知でしたか、まさか医学書まで読まれていたとは思いませんでした。」

魔法省にいた時にニコルの趣味の棚にあった本だ。

『ニコル先輩、なんで医学書があるんですか?』

『これ書いたバーバラさんは転移者だから、上梓した時に貰ったって聞いてる。ヒジリさんから渡された。』

『バーバラさんの本なんですね。なるほど、たしかシノノメに移住したんでしたっけ。医学書の原本は本人が持っていったと書いてありました』

『そっ。医学知識の差を埋めてやるが彼女の口癖とも書いてあったでしょ?その一環。外科手術も実現するって言ってたらしいし。回復魔法と鎮痛魔法は外科向きだからってさ』

『あ、そっか。回復魔法は外傷のみでしたね。』

上梓する度召喚課へ送ってくれるようで医学書が五冊あった。わかりやすく図解されていて読みやすかった。

「召喚課で勤めている時に機会がありまして。」

「そうでございましたか。あ、ありがとうございました。戻します」

触診を終えたドリスは服を元に戻す。

「ドリスとドロアスの雰囲気が違いますね。やっぱり以前は急すぎたかしら」

ごめんなさいねと謝ると二人が慌てる。

「いえ、あの、以前はあの。リオ様のことを、知らなくて。も、申し訳ございません」

「知識がなくて、不安と恐怖で、…申し訳ございません」

そして正直に謝る。

ちょっと寂しくて、複雑な気持ちになる。

有名人の認識があったので、恥ずかしくなった。自意識過剰だった。

「では、今はもう大丈夫なの?わたくしのことを勉強したということかしら。」

「はい。コンラートとシオネがたくさん教えてくれたので、恐怖心はありません。僕達でいいのか、不安はありますけど」

「わたくしは二人が担当医官で嬉しく思いますよ」

微笑むと二人の頬が赤らむ。

「み、ミランダ様から連絡の、あったお酒の件ですが、今、お調べしますね」

ドリスは鞄から色んな道具を取り出す。

ビーカーや液体の入った瓶を数種類。木の棒や用途不明の灰皿?のようなものまで。

「これはお酒に強いかどうかを判断する為の道具です。こちらを口に咥えてください。」

平たい棒を渡された。アイスの棒みたいだなと思いつつ口に咥える。

その間にドリスはさまざまな種類の液体をビーカーに次々と入れ、混ぜ合わせていく。真っ黒な液体が完成した。

それを灰皿?の上に乗せると何故か透明に変わった。

その変化に驚いていると

「リオ様、その棒をこちらの中へお入れください」

棒を入れるように指示される。

ビーカーに棒を入れると、透明だった液体が真っ青に変わった。

「これは」

「ほどほどなら問題ないです。一般的な体質です。」

因みに黒灰白青緑黄赤の七段階判定だそう。

フレッドは黒に、ミレニアは赤になったという。

「赤は酔わない、お酒に非常に強い体質です。フレッド様とは真逆の体質です。」

黒は体質的に酒を受け付けない。

それを聞いてフレッドの徹底ぶりに納得する。

私は自身の結果に、普通で良かったぁと、ほっと安心する。

その結果をドロアスが書き留める。

「ニビ出身者は酒に強い方が多いです。」

「へぇ、面白いです。ミランダは強そうな印象がありますけど、どうなのですか?」

「緑でした。普通です」

補足情報でミゲルは白だと教えてもらったが、別にその情報は欲していない。

まぁ千加に教えようかな。知ってるかもだけど。

「度数の強いお酒の樽を投げつければ勝てますかね」

「どうしてそんな手法を思いつくのですか。」

呆れられる。

ミランダの教育の成果だとは流石に言えなかった。

「旦那様には一応提言しておきましょう。」

グラッドはどうだったのだろうか。

私が試したのは簡易検査だし正式な検査を受けたほうがいい。

今日は法務部での研修最終日だし、飲み会になりそうだ。

明日はフォッグに行くから断る理由になるか。

「グラッド様に正式検査をしたか確認してみましょう」

翌日確認したらグラッドの結果は灰色だった。



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