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不運な召喚の顛末  作者:
第四章
314/605

婚約者編 夏53

無事ゾイレ夫人の夜会を終えた。

帰りの馬車の中でノヴァからひやりとしましたと言われる。

「あれは聞き流してはいけません」

「はい。存じております」

ミランダに向けられるであろう悪意の言葉に大体私も当てはまるからだ。

「予想外のこともあったけど、まずまずの結果ではないでしょうか。一人の時のお酒の避け方もよい感触でした」

「お二人宛の夜会が増えそうですね。」

「なら今年中は断りやすいでしょう、来年以降は私が教育期間で時間があわせにくいとしたら二年はかせげますね。」

「リオ様は成人をむかえられていますが、何故お酒を避けられるのでしょうか。」

「身体の成熟度がまだ足りていませんから、お酒は身体に悪いので出来ることなら飲まない方法をとりたいです。」

「かしこまりました。ではそのように致しましょう」

屋敷の玄関先には何故かグラッド以外にフレッドとミレニアもいる。馬車を降りて

「フレッド様、ミレニア様。ただいま帰りました。あの何かございましたか?」

尋ねると気まずそうに二人が言葉少なく呟く。

「心配で」

ああ、何かやらかさないかということか。

「大丈夫です。特に問題はございませんでした」

私の後ろでノヴァも頷く。

「ナタリア様から夜会の楽しみ方を教わったり、美味しい料理を堪能したりしてとても楽しい時間を過ごしました」

「そうか、それならよかった」

二人は安堵した様子で屋敷の中に戻っていく。その後ろをグラッドと歩く。

「ではおやすみ。」

フレッド達と別れ私とグラッドは私の部屋に向かう。

客室のある場所と領主夫妻の部屋がある場所は離れている。

グラッドとは階層違いで近くに部屋がある。クラリスの部屋もそうだ。

「そのドレスを着ると春の婚約発表の日を思い出すね」

「ふふふ。なんだか照れます」

「似合ってますよ。……離れ難いですね」

「うん。」

グラッドが耳元に唇を寄せる。腰に手を回された。

「私を励ましてくださいますか?リオ」

グラッドを抱き締め返す。

「お疲れ様です。グラッドは頑張ってますよ。私が保証します。だから明日の研修も頑張れます。でも研修の速度が速い時はちゃんと落としてもらうんですよ?」

「……ありがとうございます。リオ、おやすみなさい」

私の額に口づけてグラッドは戻っていった。

上手く伝えられただろうか。

翌日。

「おはようございます、リオ様」

出勤早々ミランダに昨日疑問に思ったことを尋ねる。

「よくクラリス様に隠し通せましたね」

あんなに人気があるならクラリスが噂話を聞きつけてもおかしくない。

「グラッド様を鍛える時にクラリス様には教えないと旦那様が決めました。そのため使用人達も話題にはしません。学園入学前に学生の認知度を確認しましたが、侍女の格好では気づかれませんでした。侍女が名乗ることもありませんから」

認知度、あ、学園入学前に同性貴族を集めてお茶会をしたことがあった。あれか。

たしかに何も言われた記憶はない。

「婚約を正式に決めてから、声をかけられることが増えましたので冒険者のミランダと私が同一人物だという認識がなかったのだと推測します」

「なるほど。」

ミランダという名前も珍しいものではない。

「それよりも、リオ様。昨夜はありがとうございました」

「?」

何かしたかな?

「庇ってくれたことです」

「え、ぁー」

「気づかないとでも?」

「ぅー、あれは私への喧嘩だったので」

「嬉しかったですよ。ありがとうございます」

面と向かって言われると恥ずかしい。

「本日の予定ですが、新たに専属に加わった三人を連れてきますのでお言葉をいただければと思います。エドナは侍女、セラ、マオカは侍従として教育していきます。また筆頭代理にニーナを任命します。」

侍従長や料理長から言われたことをミランダに伝えたら、早速ノヴァと悩んでいた三人を専属に引き抜いた。諸々の準備が整ったようだ。

アンナやオリビアと揉めたと聞いたけど大丈夫なのだろうか。今回の顔触れにもジルがいないことは彼女にとって痛手ではないかと案じていたのだが。

「ジルの件ですが、問題ありません。チカが対処済みです」

以前イザベラとニーナから話を聞いた段階で千加が何やら動いていたようだ。何度か話をしているのは知っていたが。

この前報告に来た時はルルーを神殿側、ジルを使用人側の観測役として配置したいと言っていた。

特に情報収集をさせる訳ではなく、千加が情報源として接触したり意見を参考にする程度だという話だったが。

「まぁ公平性が保てるかどうかが問題なだけでジルはクラリス様が関わらなかったら意外と冷静ですから。」

「ルルーは、」

「ルルーに関してチカは偏って構わないと思っているようです。チカ自身が拾えない神殿側の情報がほしいようなので」

「わかりました。皆が納得しているのなら問題ありません」

午前中はいつものように訓練をして、午後から専属に加わった三人が部屋にやってきた。

「エドナ、セラ、マオカ。これから宜しくお願いします。」

エドナは深い茶色の髪に同色の瞳をしている。それらは控えめで落ち着いた彼女自身を表しているようだ。

セラは栗色の短い髪に青い瞳の、おっとりとした女性だ。去年の秋に侍女に復帰したと聞いた。

マオカはジルと同期の侍女だ。

煉瓦色の髪が目立つのに存在感がないのが特徴的で、何度か自分の目を疑った。

「エドナは侍女として、セラとマオカは侍従として頑張ってほしいと思っています。物事には向き不向きがあります。取り敢えずわたくし達が向き不向きを判断していますが、教育期間中にどうしても出来ないと思えば教えてください。」

私の言葉に三人が驚く。

「特にセラ、マオカはちゃんと考えるのですよ。無理は禁物ですよ。」

「は、はい」

「でもリオ様。わたくし達は侍従として期待されて専属に」

侍従として専属入りした二人は戸惑いが強い。

「そうですね、ですが、侍女として活躍してくれたらいいもの。専属を外すことはしませんから安心してください。三人共こちらへどうぞ。お茶を飲みながら貴女達のことを聞かせてください」

三人を応接テーブルに招く。ミランダがお茶を用意する。

「さぁどうぞ。セラとマオカは侍従の仕事はどう思っていますか?わたくし、服飾と術式、魔道具と色々やりたいことがあってある程度育ったら任せるつもりなの。エドナも侍従を希望するなら言ってね」

「はい。ありがとうございます、リオ様」

エドナが微笑む。セラとマオカは顔を見合わせると

「わたくしよりエドナさんのほうが侍従向きだと思いましたけど。」

「わたしも思います」

口を揃えて言う。

「エドナ先輩は賢いし、仕事の仕方が滑らかで無駄がないです。」

マオカの言葉にセラがうんうんと頷く。当のエドナは真っ赤になっている。

「セラは読書家で記憶力もいいし、マオカは先読みが上手だしそれに二人共リオ様と趣味も合うからお仕事の役に立つと思うの、あの、わたくしの言葉は、その姉の受け売りで」

エドナは自信がない。アンナの言葉を思い出す。

「素敵なお姉様ですね。どんな方なのですか?」

「姉は、病弱ですが、とても賢くてわたくしは昔から色々教えてもらってばっかりで」

「教えてもらったことを自分のものにしているエドナはお姉様にとっても自慢の妹なのでしょうね。」

「あ、ありがとうございます」

「わたしもエドナ先輩のようなお姉様がほしかったです。男兄弟ばかりなので」

マオカの言葉に私も同意すると、セラが

「これからはエドナさんのことも心の中でお姉ちゃんと呼んじゃいます」

ほのぼのとした感想をもらす。

他にもお姉ちゃん呼びしてる人がいるようだ。




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