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不運な召喚の顛末  作者:
第四章
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婚約者編 夏48

レシピと味見用の蔦粉ゼリーをミランダに託し、私はグラッドへのお裾分け分を取り分ける。

ガラスの蓋付きの器に取り分け、食材庫で冷やす。

テーブルを片付けて、ほっとひと息つく。

ミランダからコンロは自分では片付けないことと言われているからテーブルの上でどどんと存在を主張している。

残った果物を食べながら、りんご飴は難しいよねと考える。

そもそもりんごがサイスで採れない。リーベックとシノノメから輸入している。

「ん?りんごじゃなくてもいいじゃん。よし」

砂糖と水、鍋とヘラ、串を再び用意してコンロでゆっくり温めて水飴を作る。甘い匂いが部屋中に広がる。

果物を串で刺して、水飴の中に投入する。くるくる回して飴を薄く満遍なくつける。

それをカップに果物を上にして立てる。残った果物を全て飴につけた所でミランダが戻ってきた。

「リオ様、甘い匂いが廊下まで漂っています」

「あ、ごめんなさい。ちょっと思いついて。」

残った水飴はヘラで掻き出しさらにスプーンを使って球体にする。ちょっと不恰好だが、まぁいいか。

「私が片付けますので、リオ様はごゆるりとお過ごしください」

「う、はぁい。お願いします」

ミランダはテーブルの上からコンロを含めた道具類全てをさっさと側務め控え室に持ち去る。

残されたのは固まるのを待つ飴だけだ。

こんこんとノックの音がした。

ミランダがすぐ対応に出る。

「イザベラ?どうしたのですか、これは」

どうやらイザベラだったらしいが、どうしたのだろうか?普通に入ってきたらいいのにと思っていたらその姿を見て納得した。両手が塞がっていた。

「こんなはずじゃなかったのですが、」

ソフィアから刺繍糸の準備が出来たと連絡があったから服飾係の部屋を訪れたら、ちょうど刺繍針などの納入もあったため一緒に持っていくことになった。

それだけならまだ良かった。

途中でサーシャと会い、リオ様宛の書簡の入った文箱を無理矢理押しつけられた。

「サーシャが、そうですか。いい根性していますね、ふふふ」

ミランダが怖い顔で笑う。

それを見ないふりをして、イザベラに飴を薦める。

「リオ様が作ったお菓子ですか、ありがとうございます。いただきます。」

イザベラもミランダのほうを見ないようにして私の言葉にすぐ反応する。

「果物に飴を薄くつけています。まだ完全に固まっていないですけど。噛んでもよし舐めてもよしですよ」

いい終わる前にガリっと音がした。あ、噛んだ。

「あ、美味しいです。これなら甘くない果物にも活用できます、うーん、ですが高くつきますか。」

イザベラの言葉をメモする。砂糖はやっぱり高いよね。

「リオ様、こちらが刺繍糸と針でございます。それとリオ様宛のお手紙です。ご確認ください」

刺繍糸はグラッドの服に刺繍するために品質の高い糸を注文していた。そして針も。図案も添えられている。

糸と針は棚に収納してもらい、文箱の中に入っていた手紙の差し出し人を確認する。

「ヒジリ先輩からだ。」

ヒジリからの返事がきた。

招待の手紙のすぐ後に希望伺いの手紙を出していた。

良かった、移動するところだったと書かれていた。

手紙には収穫祭への招待の礼と当日は収穫祭見学の他にクロムの神殿を見学したい旨と比較的自由に行動が出来ると助かるとあり、クロムの街の外の宿屋に泊まりたいと希望まで添えられていた。

「流石ヒジリ先輩」

次の手紙はジュリエットからだ。こちらも収穫祭への招待の礼だった。

それとティエラからお茶会の誘いとゾイレ夫人主催の夜会、ジェシカ様からお茶会への誘いの手紙がはいっていた。

「ゾイレ夫人主催の夜会か。」

夜会だからグラッドも一緒かと思ったら女性貴族だけの会とある。

「夏は陽が落ちてからの夜会が多いので、同伴者無しの夜会もあります。が、奥様と相談されたほうが良いかと思います」

イザベラの言葉にミランダも頷く。

「私にも招待状が届いていました。ナタリア様と連名ででしたが」

「参加するのですか?」

「はい。ナタリア様が乗り気で、止められませんでした。」

趣味お茶会なら夜会もそうだろう。

「ジェシカ様か、なんでだろ。ビビアン様の件かな。こっちも相談は必要ですか?」

「いえ。ジェシカ様でしたら、問題ありません。こちらのティエラ様とのお茶会のほうを相談されたほうがよいかと」

「わかりました。ありがとうございます。」

ミレニア宛に夜会お茶会の参加について相談したいことがある旨を記した手紙をイザベラに渡す。

その手紙をミランダが

「私が参りましょう。」

有無を言わさずイザベラの手から取り部屋を出て行った。

「怒ってますね」

「はい。まぁ仕方ありませんよ。」

主人から任された仕事を完遂していない上に、私の侍女に対して失礼な対応をした。苦情をいれるべきだろう。

「イザベラ、飴を食材庫に入れてください」

「?食べると置いていたのではありませんか?」

「そうなのですけど、機を逃してしまいました。グラッドへのお裾分け分にします」

「かしこまりました」

夕食の時間まで、日記を書き、時々ふと浮かんだ魔法をメモして過ごした。

迎えにきたグラッドから

「リオはフレイア殿とも仲良しなの?」

と疑問を投げかけられた。グラッドの手に手を重ねながら首を傾げる。

「仲良し?という訳ではありませんが、お茶会でお世話になりました」

「今日の研修担当官だったんですけど、やたらリオのことを気にしていて、以前は良くない印象だったから不思議に思ってました。」

婚約発表の時に挨拶したが、その時は完全に私を侮っていた。次の日のお茶会でもそうだ。でも、新しい下着のお披露目お茶会では庇ってくれた。

「気にしていたのですか?どのように?」

「文官の研修はしないのかとか、刑務部の視察はないのかとか。他の担当官に嗜められてからは自分から話題にあげることはなくなりましたけど、なんだかそわそわしていたかな。」

「なるほど。視察ですか、まだ伯爵夫人教育が途中なのでもうしばらく後になると思います。収穫祭の後か、ミレニア様の出産後でしょうか」

伯爵夫人教育は現在中断している。

ミレニアの体調もそうだが、収穫祭前は非常に忙しい。

そして相次ぐフォッグにスレート、ギルド長の事件で輪をかけて忙しい。

「その間に私は冒険者ランクをあげますよ!」

「ふふ。頑張ってね。」

果樹林の使用の許可がおりたため、訓練の時間が確保できた。ミランダも婚姻式までに出来る限り鍛えると宣言した。

「季節性魔植物の発生時期が近づいているから、騎士団も緊張しているってハロルドが言ってた。去年は時期が外れたから今年も気をつけているそうだよ」

「凶悪ですよね、魔植物」

「毒持ちは駆除も大変だから。私は今年も不参加を言い渡されているし、慣れないといけないのだろうけど、つい心配になるというか」

「わかります」

「体が動くというか」

似たもの発言をした私達にセシルがのほほんと

「仲良しですね」

笑う。





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