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不運な召喚の顛末  作者:
第四章
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婚約者編 夏46

屋敷に戻り夕食までの時間を下着作製に費やす。

セパレート水着をイメージして作ろう。タンクトップとベストを足して割ったような下着の型紙を作ったところでミランダから時間だと止められる。

「ふぅ」

「リオ様の下着に対する熱意には毎回驚かされます」

「ミランダが討伐依頼前に武器や道具、薬類の確認を念入りにするのと一緒ですよ。」

熱量は一緒と言うとミランダがおかしそうに笑った。

今日の夕食は特に変わったこともなく穏やかな夜を過ごした。食後に料理長から凝固剤に使われているジャモ粉やニビで作られている蔦粉を渡されただけだ。

蔦粉は大森林内で採れるつる植物の根から出来ていると説明された。日本でいうところの葛粉と似たようなものだろうか。

「ありがとうございます。料理長。」

「ゼラチンでは作れないのですか?」

「いえ。そうではありませんが、固まるまでに時間がかかるので他の物で代用できるならと思って」

「固める、ゼリーを考えていたということですか」

「はい。菓子類の中でゼリーのレシピは少ないでしょ?それにゼラチンは温度に気をつけないと匂いがきつくなってしまうから代用品を考えていました。試作したら今度は料理長とグラッドに味見をお願いしますね」

食堂を出た私達の話題は、料理長から渡された蔦粉だ。

「蔦粉は初めてです」

「ニビに蔦粉を作る専門の店があるとか。夏は蔦粉でつくる麺が夜会などで出されるとニビ子爵から聞いたことがあります。」

「麺かぁ、それなら私の作ろうとしているお菓子もあるかもしれませんね」

「蔦粉は高いので高位貴族の間でしか流通していません。ニビでの茶会に参加したことがありますが、蔦粉のお菓子は口にしたことがありません。」

「高いんですね。ジャモ粉でまずは試してからにしよう。」

「出来上がったら味見させてください」

「はい。勿論です」

グラッドと部屋の前で別れる。

蔦粉もジャモ粉も気になるが、まずは下着だ。

就寝準備を急ぎ整えて、下着作りに取り掛かる。

黙々と作業を続ける。

トルソーの代わりに自分の等身大魔力人形を作り合わせる。

「リオ様、今夜はここまででお願いします」

ミランダに止められ、息をつく。

「わかりました。ありがとうございますミランダ」

裁縫箱を片付けて眠る。

次の日、朝早く目が覚めた。

ベッドにいるのもいいが、下着のことが気になって仕方ない。作りかけの下着を棚から取り出し、作業を始める。

「おはようございます、リオ様?」

黙々と縫い続ける私の肩に手を置く。

「!!び、吃驚しました」

「おはようございます。リオ様、朝早くから精の出ることで。いつから作業をされていたのですか?」

ニーナの少し怖い笑みに

「ニーナ、あの、目が覚めてしまってですね。」

目を逸らす。

「朝食を用意するまで少しお休みになってください。よろしいですね?」

「は、はい。」

机に作りかけの下着を置いて、すごすごとベッドに戻る。

朝食の準備が整うまで二度寝することにした。

朝食を食べた後は本日の予定を確認する。

特に前もって予定していた事はないため、下着作りに重点を置く。その後は菓子作りだ。

昼前まで下着をひたすら縫い、昼食の後は

「リオ様、マリオから術式の報告があります。」

ミランダがマリオを連れてきた。ニーナに別の指示を出して、室内に三人になる。

「リオ様から依頼されていた術式ですが、加護用魔道具でも魔力で動かすための外付け魔道具が完成したので報告です。」

「え?」

一番時間がかかると思っていた物が完成したという。

「術式部のヨハネス様に相談したら、解決しました。彼は加護魔力両用魔道具が好きですので、その構造も熟知していました。そのためすぐ完成しました」

「ヨハネスが。何か言われませんでしたか?専属としてどうとか」

術式構築技術に自信を持っている彼からしたらマリオの行動は考えられないと思う。

「…専属としての矜持はないのかと言われましたが、たいしたことではありません。僕個人の矜持なんて主人の望みを叶えるためならどうでもいいことです」

「マリオ」

なんでもない顔で、「それから」とマリオが魔道具に関する書類をテーブルに並べた。術式の説明をする。

「冷却の術式ですが、闇属性の吸収の他に火属性の熱を掛け合わせることでもっと効率が上がりましたので加護用魔道具に落とし込めました。作製に入っています」

「おお。ありがとうございます」

「それと、魔力保管の術式もリオ様が書かれた大きさの板に刻んでいます。持ち運び易いように加工しています。確認してください」

マリオが魔力保管の術式が入ったカードを取り出す。角に穴が開いていて紐が通されていた。その対角に小さなレンズのようなガラスがついている。ここに魔力を保管する。魔力の残量で色が変わるようになっているそうだ。

「なるほど首から掛けられるようになっているのですね。」

手に取って確認する。厚さも重みも程々にあるので置き忘れることはないだろう。材質はなんだろうか。木?ささくれもなく滑らかだ。

「これは設備係のヴァン君が作ってくれました。ノーラ様に相談したら彼に仕事をふりたいからって」

「へぇ、ヴァンさんが。よく出来ています」

「そして反射の術式ですが、熱の反射までは組み込めました。が、術式としての情報が少し足りません。もうしばらく考えてみます。」

「わかりました。宜しくお願いします」

「報告は以上です」

「ありがとうございます、マリオ。冷却の魔道具は完成次第ノヴァと連携して商業ギルドで登録申請してください。加護用魔道具への外付け魔道具は、この魔力保管用術式と一緒に支援センターへ送ってください。」

「はい。かしこまりました」

報告を終えるとマリオは席を立ち部屋を出て行く。

パタンと扉が閉まる。

「まさかこんなに早く出来上がるとは思いも寄りませんでした。」

「はい。私も驚いております」

ミランダも驚きを隠せないでいた。

「あ、そうだ。ミランダ、マリオにも専属バッチを作って渡してほしいです。」

「かしこまりました」

しばらくしてニーナが布を持って戻ってきた。

「リオ様、ソフィアから預かってまいりました」

「ありがとうございます」

下着作りに戻る。何度も着て違和感がなくなるまで直しをいれる。

「お、これはいいかもしれない」

私は作ったばかりの下着を身につけてベッドに寝転がる。

ちょっとこれは凄いかもしれないと口元が緩むのを抑えられない。一人でにやにやしていると

「リオ様、いかがでしたか?」

奥を覗いたミランダに声をかけられる。

「ふふふ。私凄いかもです」

自画自賛に

「ええ。リオ様の裁縫の腕は本職を凌ぐものがございますので。誇るべきものでございますよ」

肯定の返答がある。

「えへへ」

枕に顔を埋めて嬉しくて足をバタバタさせる。

寝る用下着が完成した。

元から二枚作る予定だったので、ほぼ同時作業をしていたこともありもう一枚もすぐ出来上がる。一応着て違和感がないか確認する。

一枚をソフィアに渡すように言付ける。

久しぶりに一日中裁縫をしていたので充足感もだが、疲労感が強く目を瞑り休む。

夕食前にミランダに起こされた。

「私、寝てました。」

「具合はいかがですか?」

ミランダが私の額に手を当てる。

「大丈夫ですよ。支度します」

私が微笑みを浮かべるとミランダも表情を柔らかくした。



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