第七話 初めてのパーティ
副題に困ることががが……。
いっそのこと主人公が食べてるご飯にしようかな。
なんだかんだで毎回食べてる気がするし。
それはともかく次回も明日の23時更新予定です。
次の日、いつも通りハーブウォーターを作り終え、所定の場所に来たわけだが、トライゾンはいなかった。
昨日のこと、からかおうと思ってたのに残念だ。本当に残念である。
まぁまだ昼飯を食べ終わってない。今来て飯をへつられても困る。
今日は特に絶対残すなって言われてるからなぁ。……俺がおっちゃんの飯を残すわけないじゃあないか。あんなにおいしいのに。
そんなことを考えながらバスケットを開ける。今日も昨日と同じくおむすびだ。おむすびなんだが……。
まずは昨日のことを話そう。昨日はシンプルな塩むすび、おかかをまぶしたおむすびなんかが入ってた。このまぶしたってところがミソで……。
いやそこはいいか。また話が長くなる。
今日のおむすびはそれとは違う。まず焼きおむすびが2種類。見た感じが少し違うのは、醤油を使ったか味噌を使ったかの違いだろうか。どちらもおいしそうだ。
次は、みんな大好きスパムむすびだ。でもこいつは形が丸い。スパムって楕円形じゃなかったか? いやまぁファンタジー世界でスパムの形がどうとか言うのも変な話だけど……。
とはいえ、それを言ったら今まで食べたご飯は――少なくとも見た目は――現実由来のものばっかりだ。今更言うのもおかしな話ではある。
いつかは“いかにもファンタジー”、みたいな料理をおっちゃんに作ってもらいたいものだ。そのためにも強くならないとな。
閑話休題。スパムに話を戻そう。そもそもスパムって生肉をスパイスとかと一緒に缶に詰めて加熱したものだったよな、たぶん。
おそらくこの世界には缶詰はないわけで、となるとこれっておっちゃんの自作になるわけだ。なら形なんてどうとでもなるか。
……そうなるとなんと呼べばよいものやら。
ハムステーキ? ランチョンミート? わからん。だいたいそもそも、ここら辺のものの違いもわからない。
まぁ、おいしければ名前なんてどうでもいいか。それに問題作が別にあるしなぁ……。
視線をバスケットの隅に向けると、そこにはいびつな形のおむすびがあった。
いかにもおむすびを作りなれていない人間が握ったような、いびつな丸い形のおむすび。しかも結構大きい。
そして何より海苔の合間――周りにペタペタと海苔が貼り付けてある――から見えるオリーブっぽいサムシング……。
どう見てもこれってオリーブだよなぁ。種をのけて刻んであるけど。さすがにおむすびには合わないだろう。おっちゃん、とめてくれよ……。
これって多分ユエちゃんの作品だろうか。さすがに女将さんの作ったものではないだろうし、当然おっちゃんの訳はない。消去法でそうなるよなぁ。となると食べないわけにはいかないか
さて、気を取り直して、どれから食べるかなんだが……。
最初はこのオリーブおむすびからにするか。おっちゃんのおむすびは、当然おいしいだろうから後に回す。
――意を決しておむすびを口に含む。
――――あれ。以外といけるぞ。なんかオリーブの風味がおむすびに合う。粗く刻まれたオリーブ本体も、その歯ごたえを楽しめていい感じだ。
ご飯がちょっと固いけど、そんなの気にならないおいしさだ。うまい。
こんな組み合わせを考えつくとは……。ユエちゃん、さすがおっちゃんの娘。将来が末恐ろしい。
――あっという間に食べ終わってしまった。ごちそうさまである。
さ、ここからはマーモット退治だ。今までの経験値の入り具合からして1,2時間もあればレベルアップできるだろう。
◆
これで、終わり!!
目の前のマーモットを倒した瞬間、経験値メーターが0になる。レベルアップをした証拠だ。
あいにくとファンファーレが鳴り響くことはなかったが、俺の心には聞こえたんだよ。勝利のファンファーレが!!
「なぜにコロンビアのポーズ……。やっぱおもしれえな、コダマは」
振り向くとトライゾンがいた。なんでこいつはこう、俺が調子に載ってるときに現れるんだ?
いやそんなことより疑問に答えてやろう。喜びは分かち合わないとな。
「レベルが上がったからに決まってる。嬉しいだろ?」
「はぁ……」
何やらトライゾンの返答が芳しくない。どういうことだ?
「レベルが上がったって、別に初めてでもあるまいに。嬉しいのはわかるが……、コロンビアするほどか?」
トライゾンがいぶかしげな表情で聞いてきた。
そういやこいつには説明してなかったか、今の俺の現状……。
「いや、初のレベルアップだからな。マーモットを倒すこと百匹強。嬉しいに決まってる」
「はぁ!? マーモット百匹も狩ってりゃ、肉毛皮脂、素材がいくらでもドロップしただろうに。まさか採取してないって事はないだろ? だったら納品クエストでちゃちゃっとレベル上げすりゃいいじゃんか。何修行僧みたいな事してんの?」
聞かれたのは当然の疑問だった。
「ま、確かにドロップ品ならいくらでもあるんだけどな。俺、クエスト受けられないんだよね。何せ補助クラス三つ持ちだからな……」
それを聞くとトライゾンはまるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
「いや、何やってんの? ちゃちゃっと転職すればいいじゃんよ。それこそ獣魔士とかにさ。どうせ使いようがないクラス取ってるんだろ?」
「それはなんか負けた気がするからいやだ」
「……お前馬鹿だろ。ならあれだ。パーティ組んでクエスト受ければいいんじゃね。それこそお前に説教してた子とかとさ」
「それもダメだ。迷惑かけるから世話にならないって宣言しちゃったからな。まだ行き詰まったわけでもないし、すぐに泣きつくわけにもいかんだろ」
俺が理由を話してると、トライゾンの表情が驚きからあきれへと変わっていった。
「いや、変わり者だ変わり者だと思ってはいたけど、これほどとはね。やっぱある意味おもしれえや」
「うるさい、大体そんな変わり者の俺を毎日見に来てるお前も大概変わり者だろうが。大体今日も……」そこまで言って今日はトライゾンが来るのが遅かったことを思い出した。「……今日はいつもより遅かったな。何かあったのか?」
「何? 心配してくれてんの? 残念、今日は寝てただけだ」
トライゾンが肩をすくめていった。
「ただの寝坊かよ。お目付役はどうしたんだ? 起こしてくれなかったのか?」
「お目付役だ~~。もしかしてペルーのこと言ってんじゃないだろうな。あいつがお目付役な分けないだろ。むしろ世話してんのは俺の方だ」トライゾンが言い放つ「それに今日寝てたのも寝坊じゃねぇ。ここんところ睡眠時間足りなかったから無理矢理ねむらされてただけだっつーの」
いや、十分に世話されてるじゃんよ。あえて口にはしないけど……
「あん? 何か言いたそうだな」トライゾンはそこまで言ったところで、ニヤリと笑った。「せっかくレベルアップのためのいい提案をしてやろうと思ったのに。そんな態度じゃ言えねぇなぁ」
何……だと……?
「……くっ、仕方ない。業腹ではあるが口にはしないでおく」
「おま、少しは殊勝な態度をとれよ」
いや、十分だろ。それにちょっとした意趣返しでもある。トライゾンの意表を突けるとちょっと楽しいんだよな。
最悪いい提案ってのがなくなるかも知れないが、その時はその時だ。
態度を変えない俺にあきれたのか、肩をすくめてトライゾンは言った。
「…………仕方ねぇな。いや何簡単なことだ。俺がパーティ組んでやろうかと思ってな。そうすりゃコダマはクエストが受けられる。俺は多少なりとも経験値のおこぼれに預かれる。どう? Win-Winの関係じゃね」
ふむ、確かにそれはいい提案かも知れない。
「よし、のった!!」
そう宣言すると、トライゾンは驚いた顔をした。
「かっる、軽くね? もうちょっとなんかこう“迷惑はかけられない”みたいな逡巡とかないのかよ」
「いや、他の奴なら考えるけどトライゾンだしなぁ……。それにWin-Winの関係なんだろ?」
「……確かにそうなんだけどよ。なーんか釈然としねぇんだよなぁ」
首をかしげつつも、トライゾンはパーティ申請を出してきた。
「この申請を許可すればいいんだな」
「そうそう、おっけーか? んじゃ庁舎に行くとするか」
◆
たどり着いた開拓使庁舎。初めて来た時の混みようとは打って変わって人が少なかった。
「この時間って人少ないんだな」
そう問いかけるとトライゾンが答えた。
「まーなー。ここって24時間営業だからな。宿舎に帰って適当な時間に来ることが多いんだよ。おまけにこの時間は冒険に出てる奴らも多いしな。そんなことよりコダマが持ってるのって、マーモットの肉と毛皮と脂だよな」
「そうだよ。でも肉は使う予定があるから、余ってるのは毛皮と脂だけだな」
「おっけおっけ。それなら常設依頼だから、ちゃちゃっと受付ですますとするか」
そう言って向かった受付にいたのは、いつぞやの鉄面皮の女性。
「お久しぶりですコダマ様。今日はどのようなご用件でしょう」
「何? 知り合いなの」
聞いてきたトライゾンに答える。
「開拓者登録の際に受付してくれた人だよ。クエストとかギルドについて、現実を教えてもらった」
「なるほどねー、なら話がはえーや。俺今こいつとパーティ組んでるんだ。これでクエストも受けられるだろ。マーモットの毛皮と脂ならあるからさ。クエストの受注と達成の方、ちゃちゃっとお願いできない?」
なれなれしく話しかけるトライゾンに、少しも表情を動かすことなく受付の人は言い放った。
「無理です。受注できません」
「はぁ? なんでよ。マーモット系の依頼って常設だろ? 常設が取り下げられるとかないんじゃねーの」
くってかかるトライゾンに押されることなく彼女は答えた。
「確かに常設依頼で存在します。……ですが、コダマ様とトライゾン様はレベル差が開きすぎています。この場合多くのクエストの受注はできなくなります。いわゆる寄生レベリング対策ですね。そのようなことをされた方が開拓の役に立つとは思えませんので……」
「マジかよ……」
うなだれるトライゾン。
だけど俺は彼女の発言に気になるところがあったから聞いてみることにした。
「多くのクエストって言うことは、中には受注できるものもあるって事?」
「確かにありますが……」そう言って彼女は一枚の紙を出した。「例えばこのようなものですよ」
―――――――――――――――――――――
依頼:首無し騎士の討伐
依頼者:ガンツァレル・グレイド
内容
テスキヨ湿原にいるデュラハンを討伐してほしい。
―――――――――――――――――――――
「これに関しては期限もありますし、できるだけ早く、事後報告の形でもいいので達成してほしいのですが……」
「テスキヨ湿原っていったら、またずいぶん先のマップじゃねぇか。二階の地図で見たけどよ。大陸の中央付近じゃなかったか?」
出された依頼紙を食い入るように見ながらトライゾンが言った。
「そうなのか? トライゾン」
「ああ。いわゆる攻略組ってやつでもそんなところまでたどり着いちゃいねぇよ。しかも相手がデュラハン。どうせアンデッドなんだろ?」
トライゾンは、お姉さんに聞いた。
「はい、そうなります」
「ならなおさら無理だ。高位のアンデッドは聖属性以外の攻撃が効きづらい。後は感知方法が大抵視認以外でな。その湿原は基本暗いらしいし。ま、圧倒的不利だわな」
「確かにそうなのですが、ずいぶん詳しいのですね」
珍しく少し驚いた表情でお姉さんがトライゾンに聞いた。
「まーな、図書館で借りた本にかいてあったんだよ」得意げに言って俺の方を向くと「ただ暇つぶししてたわけじゃないんだぜ」と笑った。
く、悔しい。悔しいが認めざるを得ない。
それに、このクエストは俺たちにとっては無謀なもので、これ級のが受けられないのなら、クエストが無いってのも理解した。
「わかった、ありがとう。また来るよ」
そう言って受付を離れた。
「さーて困ったね。いい案だと思ったんだけどなぁ。レベル差なんて落とし穴があるとは……」
そう言ってトライゾンは天井を見上げた。
確かに。とはいえ俺にとっては振り出しに戻っただけだ。心機一転頑張るとするか。
そう思いを新たにしていた俺に声がかけられた。
「何か困り事かな、少年」
エル:さて、今回はトライゾンがちらっと睡眠について言ってたから、そこを説明するよ。
エル:睡眠は1日三時間、必ず取らなければならない。
エル:ただ0時~24時の間に3時間取ればいいから、うまくやりくりすれば連続42時間活動可能だね。
エル:加えて一週間で35時間は睡眠に費やしていなければならない。
エル:これを無視すると、その場で気絶してリスタート地点に戻る。個室で強制睡眠になるね。
エル:後、何度も無視するようだと強制ログアウトになるよ。
エル:これは、この睡眠中にキャラクターに対するメンテナンスや、相互のフィードバックを行ってたりするからなんだ。
エル:これを受けてゲーム自体もアップデートの方向性を決めていくことになる。
エル:さて、今日はここまで。みんなもちゃんと寝るんだよ。
エル:作者は不眠症持ちだからね。寝れないつらさはわかるんだ。それじゃねノシ




