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第八話 みせられた力

次回更新は明日23時の予定です。

もしかしたら明日は遅れるかもです。

「何か困り事かな、少年」


 振り向くと爺さんがいた。顔が老けてるし頭もはげてる。でもなぁ。違和感がハンパないんだよなぁ。

 違和感の原因? そんなもの決まってる。この爺さんの体格だ。

 がたいが良すぎなんだよ、この爺さん。顔は老けてるのに筋肉が全く老けてない。


「なんじゃ、ワシの体をまじまじと見て。この筋肉が気になるのか? こんなアバターの筋肉に驚いてもしょうがあるまい。文字通り見せかけの筋肉なんじゃからな」


 そう言いつつも、まんざらでもないのか、胸筋をピクピクさせてたりする。


「ちげーよ爺さん。突然話しかけられたからびっくりしてるだけだっつーの。つかピクピクさせんな。きもちわりぃ」


 おお、トライゾンが俺の思いを代弁してくれた。

 確かにそうなんだよな。受付から離れたところで突然話しかけられたんだ。しかも振り向いてからの圧もすごいときてる。

 不審なことこの上ない。なのでその点も聞いてみることにした。


「いきなり困り事があるかとか聞かれても困りますし、何よりこいつも言ってるとおり突然すぎません? どうしていきなり俺たちに話しかけてきたんです?」


「困っている人がいる。自分は手助けになる情報を持っている。そうであるならば助け船を出す。日本人として当然のことじゃろう」


 腕を組み胸を反らす爺さん。


「はぁ? じゃ何か爺さん。善意で声をかけたとでも言うのかよ」いぶしかしげな表情のトライゾン。「そんなん信じられねえよ。無償の善意を語るなんて、だましの王道じゃねえか」


 俺を促し庁舎から出ようとするトライゾンを爺さんが呼び止める。


「っかーーーー、嘆かわしい。嘆かわしいぞ少年。若い身空で人の善意を信じられんとは」爺さんが天を仰ぎ首を振る。「それに無償の善意だなんて一言もいっとらんぞ。わしらにはわしらの事情が――――」


 そこまで言ったところで、爺さんは後ろから来た女性に頭をはたかれた。


「何、人様に絡んで迷惑をかけてるの」


 年の頃は30半ばだろうか。女性は黒髪をまとめ上げ、白を基調としたアシンメトリな形のローブを着こなしている。


「君たちもすまないね。うちの宿六が迷惑をかけた」女性は軽く頭を下げた。「何にでも首を突っ込みたがる奴でね。とはいえ今回に限っては嘘も言ってないんだ。もしクエスト関係で困っているんだったら手助けできるのさ。特に君のね」


 そう、俺の方を向きながら言った。


「いや、だからおばちゃん。俺らは話信じられねえって言ってんだよ」


 トライゾンが言いつのる。


「いや、これは私たちにも利がある話でね。むしろこちらから頼みたい位なのさ。だから無理に挑発しなくても大丈夫だよ」


 そう言い、トライゾンに向け軽くウィンクをした。


「……ちっ」


「さて、彼は納得してくれたみたいだけど。良ければ君も話を聞くだけ聞いてみてくれないかな。なに、聞くだけなら損な話ではないと思うよ」


 確かに聞くだけなら問題ない、か?


「……わかりました」


「それはよかった。それなら早速話を、……といいたいところだけど、さすがにここで話す内容でもないか。移動することにしよう。それに――」そう言って女性は爺さんを軽く見やる。「うちのが迷惑をかけたお詫にご飯、……いやこの時間ならおやつか。まぁ、その辺をおごるよ。食べながら話をしようじゃないか。なにお金なら心配しなくてもいい。これでもそこそこ稼いでいるんだ」


 軽く自分のローブをつまみながら言う。

 確かにその服は初期装備とは一線を画す、序盤の装備とは思えないほどこっている。

 稼いでいるって言うのは嘘じゃないんだろう。


「さて、それじゃあ動くとしよう。……ああそうそう、私は真理絵(まりえ)、こいつは喜助(きすけ)というんだ。よろしくな」


「あ、はい。よろしくお願いします」


 俺たちは自己紹介を交わし庁舎を後にした。



 ◆



 屋台で料理を買い、町の外に出た。

 何で外に出たかって言うと、「せっかくバフ付きの料理を買ったんだから狩りができるところまで行こう」って喜助さんが言ったからだ。

 ちなみに俺が買ってもらったのはホットドッグ。味はまぁ、可もなく不可もなく。おいしいんだけど普通だった。

 やっぱおっちゃんの料理がすごいんだなぁと再確認した。


「おい、そろそろ何でこんなところまで来たのか話せよ」


 町から大分離れたところまで来たところで、トライゾンが不機嫌そうに言った。

 ま、確かにそうだよな。飯を食べたからってわざわざ外に出るって言うのは、ちょっと無理矢理過ぎる。

 いや、喜助さんも「おかしいな?」みたいに頭をかかないでいただきたい。さすがに騙されないよ。


「ふむ。ま、ここならいいか」立ち止まり、真理絵さんは話し始めた。「クエストがらみのことは町で話すのはちょっとね。公国の方のお偉いさんだったかな。クエストの管理をしてるのは……。その人近辺の耳に話が入るとちょっとめんどくさいことになるんだよね」


 真理絵さんは肩をすくめる


「やっかい事の匂いしかしねぇじゃねぇか」


「そう言うな、トライゾン君。話を聞いただけでどうこうなる話じゃないよ」真理絵さんは声をひそめる。「クエストって言うのはね、別に庁舎で依頼を受ける必要はない。直接個人から依頼を受けてもいいんだよ。。それでもゲーム上はクエストとして認識される。もちろん経験値も手に入る。報酬はその人から直接もらえることが多いね」


 なんだと!?

 それは盲点だった。確かに直接依頼を受けて、それがクエストとして認識されるんだったら、俺の今の現状を打破できる。おまけに加護の効果も受けられるのなら万々歳だ。


「いや、いやいや。できたとしても、開拓使すっ飛ばして受けるのはまずいだろ! おい、コダマもなに納得しかけてんだ。お前もしかしてまずいことに気づいてねえんじゃねえの?」


 トライゾンがまくし立てる。

 いや、直接受けられるんだったら、それに越したことはないだろうに……。

 そんな俺たちの疑問に真理絵さんは答えてくれた。


「いや、トライゾン君の心配はもっともだ。逆にコダマ君はもうちょっと疑問に思った方がいいよ。……それはともかく庁舎の発行する依頼で依頼主が個人のものや採集依頼については、まぁ簡単な話中抜きがある。これは開拓使の資金源の一つらしくてね、これに手を出すと面倒なことになるのは確かだ」


「だったらっ」


「話は最後まで聞くものだよ、トライゾン君。うちの人を見習い給え。私が話し始めてからというものずっとだまってるだろ?」


 いや、あれはめんどくさくなってるだけじゃないかなぁ。喜助さんの方を見るとスクワットをしている。


「それはともかくクエストだ。庁舎の人間も既得権益に手を出しさえしなければ文句を言ってこないよ。例えば家の修繕や迷子の猫探しみたいな依頼なら、ね」


「……なるほど。確か開拓使の依頼って言うのは討伐系、生産系、採取収集系、探索系だったか。それ以外のものなら感謝されこそ文句は言ってこないって訳か」


 トライゾン、以外と色々調べてるんだな、以外だわ。

 いや、もしかしたら獣魔のペルーが教えてくれたのかも知れないが……。


「納得してくれたかい? いや私もね、初日に迷子の道案内をして発見したんだよ。おかげであの時は待ち合わせに遅れて、二人して怒られたよ。ま、これが開拓使の依頼を受けられない君が、クエスト達成経験値を得る方法って訳だ。ためになっただろ」


「確かにためになりました。ありがとうございます」


「よろしい。素直な君にはもう一つ、面白いことを教えてあげよう」真理絵さんはトライゾンの方を向く「君はまだ不満そうだけどね」


「…………、いや俺はそもそも部外者だ。どうこう言う権利はねえよ」


 トライゾンは首を振る。


「そうかい、なら君も見ていくといい。面白いスキルを使ってあげよう」


 真理絵さんが言うと、喜助さんが喜色満面でこちらを向いた。


「ワシの出番か?」


「いや今回は私のだ。喜助はスクワットでも続けてて」


 喜助さん、がっくりとうなだれたな。

 それにしても、こっちのこと気にしてない風で、しっかり話は聞いてたんだな。


「さ、気を取り直してこの魔法を見てもらおう」


 真理絵さんが詠唱すると、魔方陣が浮かび上がり石の弾丸が飛び出した。


「今のがいわゆるストーンバレットの魔法だね。魔法は詠唱し、魔方陣を展開し、MPを消費することで発動する。まぁ詠唱破棄なんてスキルもあるみたいだけど、それはここでは割愛するよ」


「ああ知ってるよ。で、それがどうしてって言うんだ?」


「ふむ、相変わらずトライゾン君はせっかちだね。まぁ見ていたまえ」


 真理絵さんは地面に魔方陣を描いた。そして描いた陣を足の先で小突く。

 するとそこからさっきと同じストーンバレットが飛び出し、罪のないマーモットの頭を殴打し打ち倒した。


「な!?」


 トライゾンが驚いている。何でだ?

 魔方陣から魔法が出るのは当然じゃないのか?


「ふむ、いい驚きようだ。それに比べてコダマ君の方はまだ理解がいってないようだね」


「なっ、コダマ! これってすごいことだぞ」


「そうなのか?」


「……あー、そういやお前、掲示板とか見てない風だもんな。魔法も使わねぇし、仕方ないか。いやな、こんな風に魔方陣から魔法を直接使おうとした奴らがいたんよ。掲示板で情報交換しながらやってたみたいだけどな。……結果はことごとく失敗。少なくとも今のところは無理っていう結論に至った」


「ふむ、まあそうだろうね。多分その人達は私より遅くて、アプローチの方法も似通ってたからじゃないかな。なにせこれってユニーククラスのスキルのおかげだからね。ちなみにこんなこともできる」


 そう言ってまた地面に魔方陣を描いた。今回もさっきと同じような形だが、細部が違ってる気もする。

 ちなみにさっきの魔方陣は、魔法が発動されたときに消えた。そういうものなんだろう。

 描かれた魔方陣をあらためて小突く。

 すると同じくストーンバレットが飛び出し、マーモットに突き刺さる。

 …………ん? 何で刺さった。ストーンバレットはその名の通り弾丸じゃないのか。


「お、今度は驚いてくれたようだね。そう、今度は魔方陣をいじって弾丸の先をとがらせてみたんだよ。詠唱を変えることで同じ事ができるかも知れないが、こちらは結構細かい調整も可能でね、いろんな事ができる。それ相応のデメリットもあるけどね。そちらは秘密だ」


「……こんな事を教えてもらってもいいんですか?」


「別にいいよ。さっきも言っただろう、ユニーククラスのスキル効果だって。まぁこのゲームのユニーククラスは、他のゲームとは少し趣が異なるんだけどね。いい機会だ、ユニーククラスについて説明しよう。これはトライゾン君も知らないだろうから」


 そう言って真理絵さんが説明してくれたところは


 ・ユニーククラスは現状、クラス毎に一人しかつけない。離職したとしても新たに就ける人がでるわけではない。

 ・ただし、後々全員にクラス解放クエストとともに、クラス取得が解放される。

 ・言わば、先行実装のテストプレイに近いもののようだ。そして強いとも限らない。とがった性能であるらしい。


「と、こんなところかな。コダマ君は変なクラスの取り方をしてるんだろう? こういうのを狙うのもいいかもしれないね。私も使えないような補助クラスと戦闘クラスが組み合わさって、今のユニーククラスになってるわけだからね」


 真理絵さんは俺たちを見回すと続けて言った。


「さ、授業はこれでおしまいだ。また何かあったら話を聞きにくると言い。私なら魔法、喜助なら武器関連のことなら相談に乗れるよ」


「うむ、武器の扱いなら任せると良いぞ。ワシなら大体の武器の扱いなら教えられる。このゲームでは大剣を扱ったことはないが、それもたぶん大丈夫じゃろう」


 そう言って二人して町の方へと去って行った。


「あ、そうそう。依頼探しも忘れるんじゃないよ。ちゃんと注意点も守るように」


 真理絵さんが振り向いて声を上げる。


「そうじゃぞー。後、孫ともちゃんと仲良くするんじゃぞ」


 あ、喜助さん、真理絵さんに殴られた。 

 

 

エル:今回は開拓使についてさわりだけ

エル:その名の通りこの大陸の開拓に来たわけだけど、実は連合軍なんだよね。

エル:五大国と言われる国が中心となって、妖魔はびこるこの地に入植しに来たわけだ。

エル:この五大国間の駆け引きもすごいらしいよ。

エル:ちなみに長官のコルネリアスさんはザルティオ帝国の人だよ。

エル:帝国って書くだけで、悪い所みたいだけど。そんなことはないよ。

エル:たぶん、きっと、maybe

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