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銀の魔導   作者: 雪仲 響


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 タリアの言った通りに避難民が続々とエリニア国に助けを求めてやって来た。

 やって来た数十人の避難民に食糧を与え、住民の家や城の客間に暫くの間居候として受け入れ、それ以上の避難民には野宿で我慢して貰った。

 その間にタリアが建築中の家に住める者を選定、住居の説明に追われていた。

「入居する人達が一杯で只今二軒の住居を建てておりますが全く足りていない状況ですね」

「これだけはどうしようもない我慢して貰うしかないね、もし手伝える者がいれば雇用という形で働いて貰えれば良い、ここでの生活費の足しにもなるだろうし自分達の住居でもあるんだ早く住める様になりたいだろうからね」

「少しずつ国庫も戻って来てますからね、かなり資金が減っていてヒヤヒヤしていましたが今回で人が増えるのは国にとって絶好の機会ですよ、明日そのように声を掛けてみましょう」

 自分達で建て仕事にもありつけるなんて逃げてきた人達にしてみれば一石二鳥な話である、しかも自分達が携わったという愛着も湧けばこの国に住もうとさえ思う者も出てくるだろう、国にとっても人が増え住居が増えればそれだけ国庫にお金が入ってくるという循環が出来、両者共に相互利益が生まれてくる。

 サレス自身のお金とレシティから頂いた資金も建国にかなりの額を使い、建国という賭けに不安はあったがやっとその道に光明が見えてきたという所である。

 店も出来て各々商品を他国から調達し始めてくれば、後は自然と活気と安定した生活が町を作ってくれる。

(これで軌道に乗れば兵士も雇える、有望な人材がいれば取り立ててその役職を任せればサレス様もかなり楽になるだろうな)

 その辺りは既にあの人の構想の中にあるだろうから心配してはいない、あの人は一つの情報を与えれば先の予想を瞬時に立てられる人だ、だから何が起きても予想内の出来事に動じない、自分がこれから何をしようか考えている事も既に彼の中では順路が出来上がっているのだ、サレスとはそういう人なのである。

(初めから教えてくれれば良いのに、聞かれない限り自分から答えを教えてくれないのだから性格が終わってるんだよな)

 まるで人を試す為にわざとそうしているのではないかと思う部分もあり、彼に振り回される身にもなって欲しいものだと何度思った事か。

 城を出たタリアは騒がしく鳴る建築の音を聞きながら様になってきた町を練り歩いた。

「ようタリアの旦那」

 ロイドに声を掛けられた。

「人が増えて活気が出て来ましたね」

 彼とも結構長い付き合いになってきた、道案内から集落への連絡や纏め役として働いてくれていて、タリアの中で信頼を寄せる一人だった。

「まさかここまで発展するとは思って無かったよ、俺はこんなに多くの人間を見るのは初めてで興奮してんだ、色んな集落の者達と一緒に国造りをすればこれだけ立派な町が作れたんだってな、どうして俺の爺ちゃん達は協力して町を作らなかったんだろうな」

「町作りも色々と大変ですよ、お金も掛かるし纏め役がいないと人が集まりませんからね」

「俺達も金持ちになれるのかな……」

「なので初めに集まってくれた人達に働き口や借家を無料で貸し出したんです、サレス様にとって皆さんは最初の民なんです、この機会を有効に活用してこの国に貢献して貰いたいと考えておられてます」

「おぉそうか、俺達は運が良いんだな」

 おおいロイド、と呼ぶ声に反応したロイドが振り向くと手を振って応えた。

「じゃあ俺は行くよ、またなタリアの旦那」

 元気よく走っていくロイドに、

(元気だな、働けるというのがそんなに楽しいのかな、俺なんて国を造りと聞いた時はげんなりした気持ちだったけどな)

 サレスに付き添ったり使いっ走りのように他国に偵察に行ったりと、仕事というより悪行の手伝いをしている感覚しかなく、ロイドのような仕事が楽しい、金持ちに成りたいと前向きで楽しそうにする相手の気持ちとはどんなものなのか実感がなかった。

 通りを走る子共も井戸端会議で笑い合う女性達、皆目の前の生活に満足しているようで、無邪気に笑えるだけ今の生活に満足しているのか、これからの人生に希望を抱いているのか、どうしてここまで嬉しそうに出来るのか軽く嫉妬を覚えるほどだった。

(皆が羨ましい……俺の夢はもう達成出来ないからな)

 はぁと息を吐いたタリアは足取り重く歩き出していった。




「サレス陛下」

「どうしたんだい?」

 大広間に珍しくカミュラがやって来ていた。

「遺跡を見つけたのですが、宝というのではないのですが白骨した遺体を数体見つけまして、その遺体はどうにも昔の物ではなくここ数年前の物のようです」

「誰かがそこにやって来て死んだという事だね、リムの財宝でも探しに来て罠にでも引っ掛かったのかな」

「かも知れませんが、その地は何かの建物のようですが利用する程形は残っておりませぬ、外壁は崩れておりますので利用するなら石材ぐらいな物でしょうが如何しますか?」

「ここでの石材は貴重だね、誰か人を向かわせるのも良いが……そうだね、その石を検問所に利用すると言うのはどうかな、まだこの国には関所というものがない、領地を知らせる為には関所は必要だ、取りあえず石材を集めさえておいてくれないかな」

「御意」

「リム王国は広い、まだ何処かに遺跡や財宝が残ってるかも知れない、国の資金は幾らあっても問題ないだろうし遺跡を見つけたらタリアと一緒に探索をして欲しいが、まだ建築の方で忙しいだろうからその辺りは彼と相談してくれれば良い」

「ではそのように」

 といって城を出て行った。

 数百年前の遺跡にどれ程の財宝が残されているのか、既に大半が盗賊に盗られてしまっているだろうが一つでもあればかなりの値打ちになる、今は飾る品物より国庫の確保が優先で、資金管理でいつも頭を悩ませているタリアの不安も解消させてやるのも国王の役目だと感じていた。

「ふう、人手が足りないのはこちらも同じなんだけどね」

 少々疲れた様子で椅子にもたれ掛かる。

 町作りに人手は必要だが、国に手足となってくれる臣下がいないので全ての指示をサレス一人に仰がなくてはいけなかった。

 日々の現状報告を受けて次の指示を出す、本来ならそれぞれの大臣に任せる仕事をサレス一人が負っていた、それも自分が建国すると決めた時から覚悟は出来ていたが、寝る間もなく遠話で話があると連絡が入れば謁見の間に出向いて話を聞かなくてはいけなかった。

 遠話は最低限の会話にするよう、内容は直接話すようにと伝えてあったので仕方がない事だが、こうも色々な問題に出て来るとは思っていなかった。

「国造りは思っていた以上に過酷だ」

 何処かに才能のある人材がいれば良いが、サレスの下で働くという事はそれこそ期待以上の働きが出来なくてはいけなかった。

 かつかつと、大広間にやぅて来る足音が聞こえるとサレスの表情がすうっと元に戻る。

 やってきたのはマリアで、町の女性から作ってもらった革の上下を着て頭には布で髪を隠した格好は、何処から見ても町娘といった服装だった。

「部屋に行こうかと思ってたのにそこにいたんだ、服が出来たからエスタルに行ってくるよ、これなら変に見られないだろう、まぁ肌の色は隠せないけどね」

 壇上の前までやって来たマリアが言う。

「お金は貰ったのかな?}

「うん、雪が降れば半年は帰ってこられなくなるだろうからって大目に貰ったよ、それまでに一度は戻って来るつもりだけどまずは住む所を見つけないとな」

「長い任務になるだろうから体には気を付けて行ってきてよ」

 サレスが柔らかい言葉で言う、それにマリアは嬉しそうに笑った。

「どんな国か調べれば良いんだろう」

「あぁ、些細な事でも何でも良い、エスタルで何が起こってるのか、緊急を要する様な動きであれば直ぐに教えて欲しい」

「分かった……ねえサレス、あのさ」

「なんだい?」

 マリアは上目使いで照れ臭そうに、

「行く前にさ、もう一度口づけしてよ、ほっぺで良いからさ」

 ふっと笑ったサレスが玉座から降りてきてマリアの頬に口づけをしてあげると、彼女は元気が湧いたのか勢いよく行ってくると言って駆け出して行った。

 偵察にこんなにも楽しそうにしてくれれば送り出す方も気持ちが良い。

「これで少しはエスタルの事情が分かれば良いが」

(少しずつ君に近付いている、君は何をしているのかな)

 思いを馳せるサレスにとって一番欲しい情報、それはマルティアーゼが今何をしているかという事であった。

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