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銀の魔導   作者: 雪仲 響


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1081 国の発展

「カミュラさん達が頑張ってくれていますが、宅地の確保が追いつかなくなって来ました」

 カミュラとディトロスが土地を伐採、整地して、そこで出た木材を利用し工夫達が住居を建設していく流れが、人の流入によって工夫が増え建築速度が上がってしまい整地をするのが遅れがちになっていた。

「人もかなり増えてきたね」

「ロイドさん達が話を広めてくれているみたいです、集落に残っていた老人達も今後の将来を考えて移り住む決断をしてくれたみたいですね」

「それは良いが、そろそろ経済を回していかないとこちらも資金が尽きるだろう、商売をしたい者に商業の権利を与え税を取り立てていかないと国家が成り立たなくなる」

「では商売をしたい者達を集めましょうか」

 と、タリアが聞くと、

「その前に国家としての建国の宣言をしなくてはいけない」

 これが第一の関門で、宣言すれば世界から注目されるだろう、人も軍隊もない現在の状況で他国からどの様に思われるか、中央国がそれを容認せずに攻め込まれればひとたまりも無く破壊されてしまうだろう、だが国民にこの場所がこれから自分達の故郷として守っていく意識を高めるには建国宣言は重要な事でもあった。

「もっと人が欲しい、数百人ではない数千人規模にまで集められれば良いのだが」

 集落全員が移住したとしても千人ほど、しかも工夫が殆どで兵士がいなければ魔道士だけでは国を守れない。

「あまり公に人集めをするのも危険ですが、この正念場を乗り気切れれば一気に楽にはなりますかね」

「そうだね、ここからが本格的な始動になる、情報が漏れるのも時間の問題だろうからそれまでに何とか体裁を整えたい」

 サレスとタリアは早速、皆の仕事が終わった夕食後に皆を集め、正式にここに建国する旨を伝え、これからはここを私達の国だと言う事を改めて宣言した、しかし当分の間、国を守る兵士が不測しているので内密にするよう伝えた。

「国の名前は後日伝える、それと……」

 皆が生活を整えるには商売で各人手に職を持つ事を推奨し、男女問わず商売をしたい者がいないか聞いてみた、すると、

「私はパンが焼きたいわ」

「俺は元々農夫だ、野菜を作って売りてぇ」

 など、何人もの人がここぞとばかりに手を挙げてきた、やはり皆もそろそろ建築だけの収入ではなく必要な物の売り買いを願っていたのだろう。

「あぁ皆がやりたい仕事があればしてくれても構わない、場所と店はこちらで用意させるが皆には国家運営の為に賃貸料と税を収めて貰いたい、税や賃貸料についてはまだ決めていないが皆の負担にならない程度には考えている」

 それに対しての不満は出て来なかったが、不安そうな表情でサレスの顔を見つめていた。

 彼らにとって税なんてこれまで縁の無かった生活を送ってきたのだ、自分達で稼いだお金を取られる事に反抗意識があるのだろう、その事も分かっているサレスはそれが国を保つ為の資金になりここにいる皆の命を守る為だと説明を付け加えた。

 それでも色々な仕事の選択が出来る、自分達の積み上げてきた腕や技がお金に変わる事を思えば、これまでの自給自足の生活から近代国家の生活へと水準を上げられるだけでやりがいはあった。

「商売で分からない事があればタリアでも私でも聞いてくれて構わない」

 と言い残してサレスは後の事は宜しくとタリアに告げて城へと戻っていった。

「今すぐに商売を始められるわけではないのでよく考えて下さい、鍛冶、八百屋、衣服、土木、生活や国の発展に必要な仕事なんていくらでもあります、自分達で出来る事から始めて私達の国を作っていきましょう」

 タリアは希望を持てるよう優しく分かりやすく伝えた。




 数日後。

「ではこの辺りに商店街を作り、こちらは住宅街を固めて行きましょう」

「ふむ……それなりの町の形にはなったな」

 紙に描かれた町の予想図を見ながらカミュラが言う。

「住居がこんなにも早く建つとは思ってませんでしたよ、この辺りの家にはもう人が住み始めてしまったのでここいらを住宅街と考えればここに商店街があるのが良いかと思いまして」

「できれば導具屋もあれば自分達で集める手間が省けて良いのだが」

「導具ですか……それは私も思いますね、自国で買えるのは確かに楽です」

 カミュラの意見にタリアも同意だった、野良が他国の町、特に中央国なんてギルドのお膝元のような所で秘薬を買いに行くには危険が伴う、野良になったタリアも今なら本当は食糧や物資を買いに行くのは危険な行為である、もしこの地で生産や物品が流通すれば危険な買い物をせずに済むし国自体も潤う。

(経済は早めに動かした方が正解なのか)

「導具については魔道士以外には任せられませんからね、これについては私にも関係する事ですし今後の事と思えば必要になってきますね」

「うむ、そうしてくれると有り難い、儂らはその地図通りに土地を広げておくとしよう」

「お願いします」

 カミュラとディトロスが自分達の仕事場に戻って行くと、

(相変わらずディトロスさんは無口だな、それとも嫌われているのか)

 未だに打ち解けないディトロスとの仲に悩みが残るものの、ちゃんと与えられた仕事はしているしカミュラとは馬が合ってる様なので、要らぬ問題を起こす気も無かったので彼に任せておけば良いだろうと考えた。

 それよりもリム王国の版図がどこまであったのか、伐採すればあらゆる所に住居跡がそこいらから出てくるとカミュラが言っていた、それはそれで基礎を作らなくても家を建てられて手間が省けて良いのだが。

「この形を見ると、城を中心に東に向けて放射状に町が出来ていたのか」

 それとも全方向に広がっているのかも知れない。

「西側にも城を守るように何か住居のような壁になる物が欲しいな」

 敵対するとすれば当然エスタル方面の西側になる、現在は集落のある東側を中心に開発を進めているのだが、今の所は西側まで手を広げられる余裕はなく、将来的には何か防衛策として城壁を作った方が良いのではと思っていた。

「まぁ大昔だからな、大国とは言われていたけど現代ほど人がいたわけじゃ無いだろうし、実はこの首都周辺だけが発展していて他は村のような小さい町が点在するぐらいかも知れないな」

 初めは五人で何が出来るんだ人なんて集まらないと思っていたのに、今は百人を超える人達がこの地に移住を決めて来てくれている、新しい建物、知り合った人々など新生活が楽しくなればそこに希望が生まれてくる、しかも働いて賃金が手に入れば欲が出てくる。

 ここで頑張れば生活が豊かになれるのではという夢を、目の前に現実としてあるのだからやる気が出ないわけがない、例えそこに多少のお金の負担があったとしても人はその先の儲けに人は希望を見出す。

 それだけ人々がここを気に入ってくれるのはタリアとしても嬉しいが、彼らの事ばかりに気を取られてはいられない、タリア達にはそれ以上の重責がある。

 国を守る為の準備や人集め、国庫の確保と人々の様な呑気な事は言っていられないのである。

(国のを守る策か……サレス様なら直ぐに返答するんだろうけど俺は策士でもないから分からないぞ)

 国の防衛に必要な物は何か、こういう頭を使う事は彼に任せた方が一番だと彼に会いに向かった。

「そんな事か……」

 ふっ、と薄く笑ったサレスにむっとしたタリアは、

「それは君が一番得意な事じゃないかな、情報収集だよ」

「私は得意と思った事はありませんが……やらされていたと言った所ですね」

「ふふっ、情報こそこれからの時代には必要不可欠だよ、どんな些細な事でもあるとないとでは雲泥の差だ、情報を持っていれば行動も戦略も素早く出来るんだ、君は今まで色々な所に動いてくれていただろう、カミュラだって君が見つけて来たんだよ、その行動力を生かせられるのが君の得意じゃないのかい」

「偶然ですよ」

「それに君はカミュラ達とは違って世慣れしているから情報収集には向いてると思うんだ」

「そりゃあギルド員として活動していたんですから別に何かに怯える必要もなかっただけですよ、今は私も命を狙われる方になりましたけど三人の中でと言われれば私が一番適任にはなりますか……」

「そういう意味で適材適所、君しか出来ない事だよ」

「まぁ考えておきますよ、今は町作りで忙しいのでここを離れるわけにはいきませんよ」

(情報ね、確かに知っておけば動きやすいし予想も出来るが、他の国ならまだしもエスタルなんかでの偵察行為は正に命がけだぞ)

 部屋を出たタリアはこれまでやって来た暗躍行動がこんな所で役に立つとは思っていなかった。

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