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あぁやっぱり怒ったのか、タリアは思い描いた反応でレシティを見た。
美しかった顔は眉間に皺を寄せタリアを睨む様に見てくる、そんな顔をしないで欲しいと願いながらタリアは言い訳を言う。
「レシティ陛下、落ち着いて下さい、サレス様は陛下にはとても感謝されていますし陛下の事を心配して私にラミールに行って来る様言われたんです、国造りは我々野良魔道士の身を考えて、国に所属すればギルドから狙われないだろうとお考えの上、お決めになったのです」
タリアは分かってくれと思いながら考えてきた言い訳を伝えたのだが、レシティの怒りは収まっていないように見えた。
(あれ?)
タリアがおかしいなと思った時、
「先生、私が怒ってるのは国を作った事ではありませんわ、お金はサレス様に渡した時からご自由に使って頂く為と、どの様に使おうが構わないと思ってましたから……ただ、私が許せないのは国王になると言う事です」
「……あっ」
「先生達魔道士の為に国王になって守るというお考えは素晴らしい事です、それならラミール王国の国王になってくれれば宜しかったのではないでしょうか?」
それはその通りだ、ラミールで王に成れば民も臣下も守ってくれる人材は豊富であり、その上に魔道士を国家の魔道士とすればギルドだって簡単には手出しは出来なくなる、反論する余地も無いレシティの言い分にタリアは黙り込んだ。
予定外の返答に何て言えば良いのだろうと、真っ直ぐ見つめてくる彼女の視線に震えながら考えた。
(マルティアーゼ王女に会う為だなんて言えないしな)
何と答えようか迷っているとレシティから、
「この国の国王を決める際に皆がサレス様しかいないと考えていたのに、そのサレス様は自ら辞退し私になって欲しいと言ったのですよ、自分にこの国を率いる資格は無いと……そんな人が滅亡した国で国を建国して何になるのですか、資格すらあるのかどうかも怪しい人物に付いてくる国民などいないでは無いですか、それならまだラミールで王に就いた方が少なからず彼に付いてくる人もいたのですよ、何故わざわざそんな滅亡した国で意味が分かりません……」
と捲し立てるようにレシティはサレスの行動に疑問を突きつけてきた。
「あっいえ、それはですね……あの時はまだ野良魔道士とは関係なく辞退を選ばれたのには他意は無く本心で言ったと思いますが?」
「それなら魔道士の問題が出た時に私に相談ぐらいは出来たはずです、野良魔道士をラミール王国で雇って欲しいとで言えば良かったのです、私にエスタルとの対立に覚悟が無いと思われたのでしょうか……それなら心外です、迷惑が掛かるからと言い訳までして国から出て行く必要も無かったのです」
もしそうであるならどんなに良かったか、今でもレシティの側で働いていたかもと思うとタリアでさえサレスに対して怒りを覚えてしまう。
「ううむ、今から思えばそうかも知れませんが、あの時の状況を考え最善の方法を選ばれたのかも……と、私も北方に着いてから建国の話を聞かされたのでラミールにいた時にサレス様が建国のお考えを持っていたのかまでは分かりません」
「あの人の考えなんて私達には分かるはずもありません、いつも後から理解して騙されたと思うだけですから」
ふんっと口を突き出して怒るレシティに、可愛いと感じてしまった。
「お、お怒りは分かりますが、私達もこのまま彷徨い続けるわけにもいかないので何処か居場所を持って生活をしなくてはなりませんが、元ラミール公爵のサレス様だと身分がばれたりするのも災いの元、それならいっそ堂々と身分を明かせる国王になった方が安全とも言えます」
「ギルドの目と鼻の先に建てる事がですか?」
「それは私もサレス様に尋ねましたよ、何故こんな場所にと……今はもう大陸の良い場所は既に国がある、僻地や人のいない場所に建てた所で人が集まらなくては国とは言えないだろう、だがリム王国があった場所は基礎があり周囲にはどの国にも属さない人達がいるから此処が最適だと考えたんだ、と言ってましたよ」
理にかなう場所だというのは理解出来ても、レシティの中ではだからと言ってそんな危険な場所にという思いはあった。
「今からラミールに戻って頂け無いのでしょうか、例えエスタルと不和になろうとも私達がお守り致します」
「それは……」
(無理だろう、なんせ目的が目的なんだから、今のサレス様はやっと自由になれて夢にまで見た相手との出会いに近付けてとても喜んでいるんだから)
「サレス様の決断はお堅いようです、だからといってラミールの事を心配していないわけでもありません、こうして私に現状を伝えてくるように言ってますので、そこの所は理解して頂けると喜ばれるでしょうね」
「そうですか……折角新しくなったラミールを見て頂こうと思ってましたのに残念です」
レシティは寂しそうに目を伏せた、どんなに怒っていても彼女の中ではラミール王族で繋がりがあるのはサレスだけになってしまったのだ、周りに大勢の臣下がいてもやはりサレスは特別な人間なのだろう。
「ご心配なさらずに、陛下のお気持ちやラミールの事はサレス様にお伝えしておきます」
タリアはレシティを安心させるように言う。
「また時々でも良いので来て貰えるのですか?」
彼女は恐る恐る聞いてみた。
「えっ、そ、それは私としてもそう出来れば良いのですが、色々としなくてはいけない事が多いものですから、今回ラミールに来られたのは雪の為に建設作業が中断したのでこの時期を利用し陛下への挨拶とお礼をしてくるよう、それと休暇を頂いたのです」
「先生はいつまで此処におられるのですか?」
「特に日程は決められておりません、北方にいても雪で何も出来ないだろうからゆっくり休んで来いと言われてます」
恥ずかしそうにタリアは答えると、レシティは嬉しそうにした。
「では此処でごゆっくりしていって下さい、直ぐに部屋を用意させますわ」
とレシティがカライ左大臣にお願いと告げると、直ちにと返答して大広間から出て行った。
二人になったタリアとレシティは無言で見つめ合いお互い恥ずかしそうに、だが視線だけは外さないでいた。
「もう会えないものと思っていました……」
レシティは静かにはっきりとした声で言う、これまでの仰々しい言葉使いでは無く優しく少し甘えるような言葉使いになっていた。
「はい私もです、この国に迷惑が掛からないよう二度とラミールには戻って来られないだろうと考えていました、こうしてまた貴方と会える事を何度夢に見た事でしょうか、此処にいた時に話したりなかった事をいつも後悔していたんです、次に会えたら沢山話したい、言葉を交わしたいと思いながら旅を続けていました」
タリアもまたレシティに合わせて少し柔らかく親しみを込めた言葉使いで言葉を返す。
まだ好きである事は言わなくともお互いの瞳に映った姿を逃さないよう見つめ合っている事が相思相愛であるのを証明していた。
「こんな長い休みを貰えたのに直ぐに帰る何て考えてもいませんでしたし、暫くラミールで過ごすつもりでいたので助かります、なにより貴方に会える事を楽しみにしていました」
続けてタリアは言うとレシティも嬉しそうに微笑んだ。
「この国の変わり様を沢山見て帰って下さい、サレス様が羨む程にこの国は変わりました、それに私の事も……」
「はい、それが一番の目的でもありましたよ」
ふふっと二人は笑い合う。
禁断の愛、結ばれないと分かっていても気持ちだけは通じ合っていたかった。
カライが戻って来るまでの間、二人は空白の時間を埋めるようにお互い何をしていたのか話し続けていた。




