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風のシャドゥ・レガシィ~闇を継ぐディスティニー  作者: 歌麿
電脳の狩人と真実の告白編
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9/45

電子の狩人(サイバー・ハンター)

日時: 14:00(放課後直前) 場所: 鳳学園・保健室

午後2時を回った学園は、午後の授業の気だるげな静寂に包まれていた。

だが、保健室の隅にある端末の前だけは、ピリついた冷気が漂っている。

雷 伴隆は、画面を流れる膨大なログを、楽しげな目で追っていた。

冷却ファンの低い唸りだけが、BGMのように響いている。


「……来たな」


山崎総合病院の医療データベース監視モニターに、小さなノイズが走った。

通常のアクセスを装った、極めて巧妙なパケットの流入。

普通の管理者なら見落とすレベルだが、雷の目は誤魔化せない。


インターネットから来た時点で、どんなに偽装しても『異物』なんだよ。

ここにログが残っている時点で、もう致命傷だ」


敵は、こちらの罠とも知らずに操作を開始する。

ID偽装、プロキシ経由、そしてOSの標準セキュリティ(DAC:任意アクセス制御)の穴を突くルート権限への昇格試行。

狙いは明白。

『整形外科・カルテNo.K-001(草薙 登夢)』。


「へぇ、そこを突くか。教科書通りだねぇ」


敵は、管理者権限(root)さえ奪えば、全てのファイルが見られると思っている。

だが、甘い。


「……悪いが、うちは親父の教育と一緒で、**『ルール』**が厳しいんだよ」


雷がエンターキーを軽く叩く。

その瞬間、敵の行く手に**『強制アクセス制御(MAC)』**の壁が立ちはだかる。

これはユーザーの権限(ID)に関わらず、システム側が強制的にアクセスを制御する鉄壁のルール。

root権限を持っていようが、「外部からの接続」である以上、本物のデータには指一本触れられない。

代わりに、セキュリティホールを装った**”鳥籠ハニーポット”**へのゲートが、さも「攻略成功」したかのように開く。


「……よし。食いついた」


敵は歓喜して、そこにあるデータをダウンロードし始めた。

中身は、雷がお手製で作った**「身長57m・体重550t・キャノン砲装備」のふざけた偽データ。


「……登夢のデータに触れようとした時点で、もうアウトだ。」


そして、そのファイルの裏には、渾身のアタックモジュール**が張り付いているとも知らずに。


「お土産の味は、どうだい?」


ダウンロード完了のシグナルと共に、モニター上の地図が激しく明滅した。

逆探知プログラムが、敵のプロキシを食い破り、真の発信源を特定する。

――『神戸・苅藻かるも倉庫街』。

地図上の一点が、赤くロックオンされた。


「……尻尾、掴んだぜ」


それと同時に、雷が仕込んだ**「毒」が回る。

位置トレース終了後に起動する、禁断の自己書換プログラム。

敵のサーバー内で暴れまわり、データを食い荒らし、最後にブートセクタ(起動領域)**を物理的に焼き切る最悪のウイルス。


「今沢先生が見たら……呆れるな(笑)。」


回線の向こう側で、ハッカーたちが悲鳴を上げ、高価な機材がただの鉄屑へと変わっていく様を想像し、雷は口の端を吊り上げた。


「最恐の**『おもてなし』**だ。……ざまあみろ」


雷は端末をロックしモニターの電源を落とす。青い光が消え、いつもの保健室の風景が戻る。


「さて、と。……次は**『物理リアル』**で挨拶しに行ってやるか」


サイバー戦は完勝。

ここからは、実戦リアルファイトの時間だ。

挿絵(By みてみん)

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