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風のシャドゥ・レガシィ~闇を継ぐディスティニー  作者: 歌麿
電脳の狩人と真実の告白編
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10/45

迷探偵の敗北、エレガントな迷宮

始業式のざわめきが収まった校舎の中を、

かれんは教育実習生の名札を胸に歩いていた。


(……ここに、何かがある。私の“影”の始まりが)


胸の奥に、微かなざわつきがあった。


かれんは、まず“基本”から始めた。


13年前──

自分の両親が事故で亡くなった年。

その頃から鳳学園に在籍している教員を調べれば、

何か手がかりがあるかもしれない。


だが、職員室の名簿や卒業アルバムを見て、かれんは固まった。


(……多すぎない?)


鳳学園は私立。

教員の定着率が異様に高い。


15年、16年、20年。

ほとんどの教員が“長期在籍”だった。


(……空振り)


かれんは、そっと名簿を閉じた。


次に、校舎そのものを調べた。


(13年前に建て替えられた場所があれば……

 何か隠されているかも)


だが、これも空振りだった。


体育館と部活棟は最近建て替えられているが、

それ以外の校舎はすべて同じ時期の建築。


(……全部、同じ。

 ここにも“影”はない)


かれんは、ため息をついた。


次に、かれんが目をつけたのは──未来先生だった。


静耶の言葉が頭に残っていた。


『未来先生と、怪しい先生が同じ日に来たの……』


(つまり……未来先生が怪しい?)


かれんは、未来先生の授業を見学した。


その瞬間──

かれんの推理は崩れた。


未来先生は、黒板の前に立つだけで空気が変わる。


発音は美しく、説明は分かりやすく、生徒への声かけは優雅で、立ち居振る舞いは完璧。


(……エレガント……)


怪しさの“あ”の字もない。


むしろ、かれんは見惚れてしまった。


(この人は絶対に悪い人じゃない)


名探偵かれんさん、ここで大きく敗北。


未来先生が白だと分かった今、かれんは次の候補を探した。


その時、生徒たちの会話が耳に入った。


「ねえ、知ってる?、軽音部の翔太先輩、昔大ケガした時……」


「うんうん!、今沢先生が“神の手”で助けたってやつ!」


「そうそう!、あれ、学園七不思議のひとつだよね!」


かれんは思わず振り返った。


(……今沢先生?、あの優しい保健室の先生が……?)


生徒たちは続ける。


「実はさ、山崎総合病院のエリート医師だったって噂もあるんだよ」


「何か理由があって鳳学園に来たんだって!」


「かっこよすぎる……!」


かれんは、その場で固まった。


(……え?、そんな話、聞いてないんだけど)


実際には──

伴隆が止血し、翔太は最後まで演奏しただけ。


だが、噂は噂として独り歩きし、今沢先生は“伝説の医師”になっていた。


(……この人、何かある。

 明日もう一度、卒業アルバムを確認してみよう)


かれんは、少しだけ真実に近づいた。


その頃、保健室では──


「かれんさん、いろいろ調べているみたいですけど……

 私の授業も見に来ていましたが、何も見つけることはできなかったようですわ」


未来はコーヒーを口にしながら、静かに報告した。


「ですが、噂でいずれここに来ますわ」


未来は、かれんが今沢先生にたどり着くことを確信していた。


今沢先生は、窓の外を見つめたまま答える。


「そうね。ここ(鳳学園)に来たのだから、遅かれ早かれそうなるわ」


ただ、遠くから静かに見守っているだけ。

必要な時になったら動く。


その“必要な時”が近づいていることを、

今沢先生は静かに感じていた。

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