表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/45

神が忘れた神戸の審判、修羅の清算

草薙邸・奥の間。

青白いモニターの光が、円卓を囲む大人たちの顔を照らす。

その中央の席だけが、ぽっかりと空いていた。

円が小さく呟く。

「……登夢くんは?」

大は答えない。

代わりに、総帥・草薙明が静かに言った。

「――あの子には、まだ“光”の中にいてもらう」

その言葉に、誰も反論しなかった。


燕凛が、王老師から託された海図と設計図を卓上に広げる。

「……王老師より、今回の件に対する“誠意”を預かっております」

凛の細い指先が、中突堤に停泊する貨物船を指し示す。

「当家のダイバー部隊が水面下から船底へ爆薬を設置します。

同時に、周囲に配置したスナイパー班がデッキを『掃除』し、大様と円様がヘリから突入する際の安全を確保します」

続いて、凛は六甲アイランド沖の新興埋立地――「要塞」の地図を叩いた。

「本丸への陽動は、王家の武装タグボート艦隊が担います。

奴らが横流しした12.7mm機銃、および多弾頭ロケットをそのまま『返却』します。

さらにオーシャンタグの40mm連装砲で地上施設、浮橋を粉砕し、要塞を完全に孤立させます」

未来が静かに息を吸う。

「……つまり、私たちが向かう場所だけを“開ける”ということね」

「その通りです」


今沢緑が、モニターに映し出された要塞の構造図を見つめ、静かに口を開いた。

「伴隆くん、排水ポンプの逆流プログラム……理には適っているわ。

K-UNITの心臓部は高度な水冷システムに依存している」

伴隆が不敵に笑う。

「ええ。海水流入によるショートで、サーバーもプラントも物理的に沈めます」

「生産施設を無力化すれば……もう、直せない」

今沢の発言に対し、隣で優雅に足を組み替えていた谷神未来が、黒いオープンフィンガーグローブを机に置いた。

「……ふふ、ご心配なく、緑先生。

わたくしにとって、彼らはオードブルにもならないジャンクフードですわ。

登夢くんや冬華の前に一匹たりとも出させはいたしません。

その『掃除』、わたくしが引き受けます」


そして、南雲誠司が、色褪せた一枚の設計図を広げた。

「13年前、元様が施工責任者を務めた海底パイロットトンネル。

住吉川公園の地下から要塞の通風孔まで繋がっている。

K-UNITはこのトンネルの存在を知りません」

「兄さんが遺した道か。皮肉なものだな」

草薙正が、苦渋を滲ませた声で呟いた。

「元様の置き土産。

いつか来るべき日のために、あるいはこの街の未来のために遺した隠し通路。

……若を、この『道』へ導く」

草薙明が静かに言う。

「――その”来るべき日”が、今日だ」


大が前に出る。

「草薙家は、この“道”を使って本丸へ向かう。

 外側は王老師が封鎖してくれる。

 俺と円は兵站をたたく」


円は深く頷く。

「任せて。一人残らず“掃除”する」


未来が黒いグローブを机に置く。

「……子どもたちの前に、もう影を歩かせません。

本丸の“掃除”は、わたくしが引き受けます」


明が杖を一度だけ、強く床に鳴らす。


「作戦開始だ。一人も残すな。

この街から奴らの痕跡をすべて『消毒』してこい」


その声は静かだが、

奥の間の空気を震わせるほどの重みがあった。


「子どもたちの未来のために。

影は、我々が終わらせる」


王老師の名代・燕凛が深く頭を下げる。


「中華街も、共に参ります」


円、未来、大、正、南雲、玄馬、今沢――

全員が立ち上がる。


「「「御意」」」


神戸の闇を司る三つの勢力が、ついに咆哮を上げた。

その声は、

“影の大人たち”がついに動き出す合図だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ