深奥の司令塔
草薙邸、奥の間。
そこは今、複数のモニターと通信機が並ぶ、
臨時の「作戦指令室」と化していた。
指揮を執るのは――
治と昭。
草薙家最強の嫁姑が、並んで座っている。
「……報告! 未来様より緊急信号!」
ヘッドセットをつけた草薙班のオペレーターが叫ぶ。
「音声は繋がりません!
運転に集中されています!
データ転送のみ!
……ターゲット特定。
『汐見恭子』および『岸本景』!
敵戦力、別動隊!
未来様、現着まであと5分!」
治の目が鋭く光る。
「……『汐見』だって?
円さんの妹かい」
治は瞬時に点と点を繋げた。
ターゲットが恭子である以上、連携を取るべき相手は決まっている。
「昭さん! 通信班に指示を!
大にホットラインだ!
『円さんを押さえろ。
そして妹の場所へ走らせろ』ってね!」
「はい、お義母様」
昭は動じることなく、手元の端末で指示を飛ばす。
その横顔は聖母のように穏やかだが、目は一切笑っていない。
「……爺様(明)と正のほうは?」
「ダメです。
あちらは『本隊』を抑えるのに手一杯です。
南雲さんの特別班も、そちらに回っています」
「……チッ。
敵は戦力を分散させてきたか。
いやらしい手だね」
屋敷に残っている実働部隊は、もういない。
――「最後の切り札」を使う。
「椿ッ!!」
治の声に応え、控えていた篠塚椿が前に出る。
「行きな!
女性保安部を総動員して、子供たちを回収するんだ!
救急車の手配もあんたがやりなさい!
1秒も無駄にするんじゃないよ!」
「御意!!」
椿が風のように部屋を出ていく。
奥の間に残ったのは、
治と昭――
草薙家の“影の司令塔”だけだった。
昭が小さく呟く。
「……冬華ちゃん、どうか無事で」
治は静かに頷いた。
「大丈夫さ。
あの子は“雷の子”だよ。
影に呑まれるタマじゃない」
その声には、
草薙家の家族を守る者の覚悟と強さが宿っていた。




