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屠龍の刀使いは魔術が蔓延る世界で身体強化のみで戦っていくそうです  作者: アキ八雲
超空の要塞ーストラトフォートレスー
9/16

白と黒


翌朝、早めに起きて外の光を浴びる。

辺り一帯、元は大きな都市であったのであろう街並みが一通り倒れていてベンチすら残っていない。

とりあえず俺は近くにあった手頃なパイプに腰掛けることにした。


「よう、早いな坊主」


後ろからの声に振り返ると、俺が出てきた所から1人の男性がこっちにくる所だった。

年齢は40くらいと言ったところか。

その男性は俺の横に腰掛けてきた。


「おはようございます」


「ああ、そんなに改まらなくたって良いんだよ!なんだってそんな助けて貰うのはこっちなのに...今日から本格的に始めるのかい?」


「はい。情報収集から始めます。」


「って言っても誰からだ?そんな簡単に提供者が見つかるとは思えないがな?」


「ああ、それは...ん?」


足音。それだけじゃないな...これは金属音か。

それに足音がよく揃っている。コイツら軍隊か?

少しだが声も聞こえる。


「どうした?」


「シッ...静かに。」


人差し指を立て、耳を澄ます。

そしてそのまま物陰に隠れ、会話を盗み聞く。

______________________________________


「今日は何人ですか〜?」


「全員殺処分だ。昨日、ウチの幹部が殺された。なんでも反抗してとのことらしい。」


「うーわ、それは殺処分しかないですねー」


「...良いんですか?それは更なる反抗を生みます。より強い反抗が予想されるかと」


「黙ってろ下っ端。いいから殺処分なんだよ!人間の中でも歪んだ人種の癖に生意気なんだぜ⁉︎教育してやらねえとなぁ?」

______________________________________

途中に止めようとした声。あれは昨日の女騎士と同じ声だった。


「...知らせねぇと」


後ろでそう消えるように呟いたのはさっきの男性だった。

酷く恐慌している。


「逃げねぇと逃げねぇと逃げねぇと逃げねぇと!みんなを起こさなきゃーーー」


「待ってください」


手を引きその場に留めさせる。


「でも今行かねぇと」


「今動けばあなたでは確実に殺されます。

...そう。あなたでは。」


「あんた、まさか1人で?」


「大丈夫。俺は...強いですから。」


そう言って建物の影から身を躍らせる。

騎士達はあの穴の近くまで来ていた。


身体強化を発動し突っ込む。

ありえない速度で物が通り過ぎていくが、さらに強化を重ねがけする。


「腕力強化(キャンサー)、脚力強化(ギャロップ)!」


近くにあった建物の残骸を手で後方に押し退け、地面を舗装が抉れるレベルで蹴り抜く。

一瞬で25mほどを翔け、そのまま鋼鉄の鎧を着た敵兵を膝で吹っ飛ばす。

直後、声をあげる間もなくその兵士は魔力となって消えていった。

今の一連の動きに反応出来たのはやはりあの女騎士だけ。

攻撃はしてこないものの、目がずっとこちらを見ている。


ー本当に何者なんだよ...ー


あっけに取られていた指揮官と思わしき人物がようやく声を発した。


「し、射撃班!撃てェ!撃てェ!」


何と無能な指揮官だ。

アレを見せつけられた後に攻撃が当たらないのがわからないのか。

奴の部下はそうは思わなかったらしく、射撃を開始した。

その時だった。


「榴(ハイエクスプローシブ)弾(バレット)装填。」


後方から聞こえてきたのはその声。

いつのまにか後ろにいたウェーラーが発した声だ。

黒光するやけに太くて長い、先の方が少し大きくなってて切り込みが入った不思議な形をした金属の管をウェーラーは構えていた。

何かを覗き込むような姿勢で。


「発砲(ファイア)!」


その掛け声と同時に炸裂する大音響と大きな炎。よく見ればそれはウェーラーの持つ管のようのものから発されていた。


「着弾(インパクト)!」


ウェーラーがまた掛け声を発する。その時、弾幕が飛んできていた場所からから凄まじい爆炎が上がった。

それこそ、着弾した箇所の周辺の建物が全て衝撃波で倒壊してしまうくらいの。

強烈な熱風がこっちにまで届いてくる。

その場所にいた射撃班と呼ばれていた騎士達は吹っ飛んでしまったが、ここにいる騎士達はまだ残っている。


「これで、手加減なく戦える。」


女騎士がそう呟いたかと思えば、もう目の前にいた。


ーコイツ、俺と同等には強い!ー


反射的に刀を呼び出し、首元まで来ていたレイピアを断ち切る。

これでもう対抗できないだろう...が、そこが甘かった。

相手も持っていたのだ。

...そう。怪物由来の武器を。

その武器を取り出した時、女騎士から光が消えた。いつも光を失っているような感じだがより一層。

文字通り、だ。

先が青くなっている白い綺麗な髪が真っ黒に染まったわけでもその鎧が寂れたわけでもない。

ただ、目の光だけが失われた。


「<第一の罪(ファースト・シン)>...ブラックウィドウ」


ただ朗読するかのように棒読みなそのセリフを言い終わった後の彼女は、それまでとはさらに全く雰囲気が違った。

なんというか、絶望が辺りを包んでいるというか...ここまで来るとかわいそうな雰囲気だ。あそこだけ暗く見える。

その手に構えた黒いレイピアも光を反射すらせず、ただ光を吸い込んで離さない。


「聞こえる⁉︎ワカタケ‼︎」


ウェーラーが後ろから魔術で会話してきた。なんだか凄く慌てている。


「ああ、聞こえてる」


「逃げなさい!アイツは天使の中でも上位種なの!だからーーー」


そこで魔術が途切れた。

嫌な予感がする。

カランカランと乾いた金属音が聞こえ、後ろを振り返ると女騎士がウェーラーの首を鷲掴みにしていた。

持っていた管のようなものは地面に落ちている。


「お前...ッ‼︎」


人間の体には限界がある。

耐えられる魔力量の限界が。

耐えられる速度や加速度の限界が。

だが、そんなことを気にしている暇はない!

注ぎ込められる全力を使う。

心臓が悲鳴をあげる。

地面が、空気が、俺の動きを止めようとする。

しかしその一方で視界及び思考はクリアになっていく。

より早く、強く。

普段の俺が感じ取れなかったアイツの動きを、なんとしてでも感じとれ。


ー...そこだ!ー


見えた動きの予測位置に対して斬撃を仕掛ける。

龍を殺した技を、あの時トドメに使った俺が放てる最速の剣技を!


「龍殺刹那多段突きッ!」


きっと辺りには雷が至近距離で炸裂したかのような音がしただろう。

だが俺には聞こえない。

音の速さを超え、相手を翻弄する獣へと自分を近づけていく。

まず一段目の突き。その細い剣で防がれる。

二段目、三段目...まだ加速する。

八...十...十三...まだ続く。

相手もいっぱいいっぱいになってきているようで顔が強張ってきた。


「もう限界か?」


「...流石だな、屠龍の刀使い」


一際大きい火花と金属音。

剣で弾かれて一気に距離を取ったのだ。

頭がフラつくせいでどっちが動いたかわからない。

が、もうすでに女騎士の手がウェーラーの首から離れていることは確実だ。


「...」


女騎士がずっとこちらを見ている。

まるで懐かしむような目で。

...その時だった。

ウェーラーの元に駆け寄った俺の近くにいつの間にかあの騎士もいて、あっという間に黒い霧に覆われた。

______________________________________

「...ふん、お前が小娘の...」


フレイヤの時と同じような空間に引きずり込まれるや否や、女騎士の姿をした女騎士の中身の何かが値踏みするような目つきで近くをグルグル回ってくる。

止まったかと思えば、いきなりその手に持っているレイピアで突いてきた。

空気を切り裂く音と一直線に向かってくる迷いなき剣閃。

だがそれでも、音を聞いてからでも回避できる。


「お前を殺せば、アイツはどういう感情を見せるかな...?」


「やれるもんならやってみろよ、化け物!」


その時。

...ガウンッ‼︎‼︎という何かの発射音と同時に後方から凄まじい速度の何かが飛んできた。


ーこれは...弾丸...?ー


最近発明された銃とかいう武器はああいう風に弾を飛ばすらしいが、話によると手で持てるようなサイズのはずだ。

あれは違う。

現実でウェーラーが持っていたような物だ。

その長さはおそらく数m級。

弾丸の直径は8cm程だろうか。さっき通り過ぎていった時に見えた。

あれだけ速い弾が飛んでくるとなると、俺でも避けられるかどうか...


「そこの男。援護する。前だけ見てなさい!」


その銃のような物を持ったウェーラーと同じ姿をした...恐らく天使だと思われる存在が後ろから射撃してくれている。

しかしあの技はなんだったんだ?

明らかに不自然な動き方をしていた。

いや、動いていた、と言っていいのだろうか?

だって間違いなく、居た場所から移動した後の場所の間にはアイツは存在していなかったんだから。


ー瞬間移動、もしくは空間歪曲系か?あまり戦ったことがないから困るな...ー


俺が戦ってきた中に居ないことはない。

だがそういう奴らはなんとなくタイミングがわかる物だったが、こいつは違う。

今は天使の援護があるが勝てるかは怪しい。


「フフフフ...」


奴が何やら含み笑いを発している。

そして直後、辺り一面に白い花が咲き乱れる。


「私は敵にはならないよ若竹。安心しろ。

なんなら応援してるんだぞ?...が、今はもう時間がない。」


一瞬の沈黙。

その後、それまでとは比較にならないほど輝いた目でこう言った。


「頑張ってね。若竹...ううん、如月くん!」

______________________________________

目が覚める。よかった...この間みたいな酷い体勢ではなかったようだ。


「あの白い花...エゾギクか?」


「...花言葉は、『私を信じて』ね。」


私を信じて、か。

意外と悪いやつではないのか?

信じてもいいのだろうか?

決断に迷う。


「まあ今あれこれ考えてもしょうがないわ。

...今はもう朝よ?さっ!支度しないとー!」


...ん?胸ポケットに何か入っている。

後でみんなの前で出せばいいか。


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