フリーゲルラント
そこまで間開きませんでしたね。
では、どうぞ
「さて、最初の依頼だ。
朝一番に送られて来た手紙。
投写魔術が組み込まれているようで、従姉妹が映像として壁に映されている。
「ここに行け。以上だ」
それだけ言って映像は終わり。
手紙は勝手に燃え尽きた。
「後ろから指令出すだけ出して通信した証拠は隠滅かよ...」
全く...いい御身分だ。
代わりに落ちた地図を拾い上げる。
それにここは...普通の人間が干渉していい場所じゃないしな。
「フリーゲルラント...天使の国か」
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「よし、全員着替えたか?」
「はい」
「OKよ。」
制服のポケットの中にいつの間にか肌触りのいい真っ白な手袋が突っ込まれていた。
紙が添えられていて、内容は、訳せば「外出する時はつける事。」とのことだった。
もちろん今もつけている。
「懐かしいわね...フリーゲルラント」
ウェーラーが懐かしいとか言ってる割には苦虫を噛み潰したような顔をしている。
詳しくは聞かないが何かあったのだろう。
「安心しろ。何かあれば絶対に守り通してやる」
そう言うとウェーラーは下を向いて、
「簡単にそんなこと言うんじゃないわよ...」
と言って俯いてしまった。
が、少し楽になったらしく顔は落ち着いて来ていた。
フレイヤは後ろで目が怖いことになっていた。
「...バカ」
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熱の魔力を増幅させる油を使って動く乗り物(クルマとか言うらしい)で移動すること数時間。
目的地に着いた。
フリーゲルラント、通称 天使の国。
国といっても、やはりキツイ迫害を受けているため都市一個分くらいである。
やはり...酷い。
「やっぱりここには来たくなかった。
帰ろう?ねえ、今ならまだ取り返しがつくよ」
この周辺に着いてからウェーラーはずっとこの調子だ。
明らかにおかしい。
「何があった?」
「...やっぱり見えない?ここ、凄く魔力が濁ってるんだよ。多分誰もいない。この濁りは死の魔力だから」
「そう...ですか?わたしには見えませんが...」
ウェーラーが複雑そうに笑ってこう言う。
「ああ、やっぱり本気なんだね。」
本気?さっきから変な顔をしてたのはウェーラーだけだから平気なのは演技か疑ってたのかな?
「ウェーラーかい?」
1人の老婆が寄ってくる。
足はおぼつかず今にも転んでしまいそうだ。
「フェルダースおばさん?」
ウェーラーも心当たりがある知り合いのようだ。
「おばあさん、何かあったんですか?」
「しっ...こっちだよ。ヤツらが来るからね」
俺たちは手招きされるままついていこうとする。が...
「おいおい婆さん。誰の許可を取って出歩いてるんだ⁉︎あぁん?」
騎士。見たところ国の正式な騎士のようだが少々柄が悪いな。それに装飾も過多で脆そうだし、息もタバコや酒の匂いがする。
なんだこいつ...こんな奴も騎士にいるのか。
「邪魔だ。退けよ雑魚」
ここは少しケンカを売ってみるか...
「んだと...!?人間様に逆らうんじゃねえ‼︎‼︎」
やっぱり感情に任せて剣で切りかかってきた。
わかりやすい直線的な軌道と遅い剣速。
ああ、これは鍛錬してないな。
「わかりやすいんだよ。雑魚騎士が」
俺はそのまま相手の剣を振り払い...
「そこまで!」
横から出てきたレイピアで止められた。
なんだこの剣速...少なくとも俺の全力の剣速の3分の2以上は出てるぞ...
レイピアの騎士は見れば女だ。
どんな鍛錬を積んだらそんな剣速になるんだ?
「んだよ下っ端が!邪魔すんな」
そう言って柄の悪い騎士が押しのける。
あ、今女の騎士手出そうとした。
「どうなっても知りませんよ」
「何言ってんだよ、こんな奴楽勝だって!」
その次の瞬間不意打ちのつもりか、またノロイ剣が飛んできた。
視線は俺からズレてないし奇襲としては全くダメダメ。
技を使うまでもない、か。
割と手加減して放った剣閃はヒュッっという音を出しながら真っ直ぐな軌道を描き、首筋にクリーンヒットしてそのまま魔力となって消えていった。
ちなみに女の騎士はいなくなっていた。
「アイツ只者じゃないな...さ、おばあさん、いきましょうか」
「ああ、ありがとう。あなた、強いのね」
「お褒めに預かり光栄です」
そんな会話を交わしながらおばあさんに案内されていく。
案内されたのは...建物の下、割れ目から入れるようになっていた空間だった。
「皆、クルセイダーさんだよ。凄く強い人だからなんとかしてくれるよ」
「何か、あったんですか?」
フレイヤが聞いていく。
「もうやめよう。引き帰そう?今ならまだ...」
ウェーラーはやはり帰ろうとする。
何かあったのはわかる。
恐らく元はここに居たのだろう。
依頼は解決しなければいけない。これは大前提だ。だがしかし、仲間である以上守るのも当たり前だ。
なら仲間を落ち着かせるのも義務だと思う。
しかも俺はこの中では唯一の男。
励さなければ何をするというのか?
「大丈夫だ。2人とも俺が守る」
少し落ち着くか?分からないが、ウェーラーの手をそっと握ってやる。
「話しても大丈夫かい?」
「ええ、どうぞ」
「たったままじゃ辛いでしょ。座りなさいな...」
とりあえず座る。
...座れるのが欠けた、手頃な形をした石だけという事実が、この生活の凄まじさを物語る。
「じゃあ、説明させて貰うよ。
わたしらは今、不当な支配を受けている...のは、今見た通りさね。でも、唯一これだけは解決して欲しいんだ」
後半は涙で若干曇っていたが、かなり重要な事らしい。
なんだろうか。
「子供を、取り返して欲しいんだ。」
「あのままじゃ売り捌かれてバラバラになってもう会えなくなっちまう!」
「1人や2人じゃないんだ!まだ5歳くらいの子もいるんだよ!」
「外出の許可制や生活の質なんていいから...そんなのいらないから...子供を返してくれよ!」
みんなが口々にそう言う。
泣き叫び、啜り泣き、絶望し、嘆いていた。
この理不尽な状態より、何より、
...子供を、返してくれと。
人身売買から、救ってくれと。
天使の国、つまるところ、この人達は皆天使が宿っている。
そのせいでこんな不当な支配を受けているのだ。
だがしかし酷い。
それだけでこんな、自分の幸せを捨てても子供が人身売買されるという現実があるだろうか。
いや、何があってもこんなことはあってはいけない。
「...なんでよ。」
声を発したのはウェーラー。
ポロポロ涙を溢しながら言葉を紡いでいた。
「なんで逃げなかったのよ...いや、わかってるわ。そんなこと、少し考えればわかるじゃない。みんなが幸せになれるならそれで良いって思って逃げなかったのよね。きっと、逃げれば全員殺すとかって脅されたのよね。」
「ウェーラー...あんた、すまないねぇ...ここが嫌だから逃げ出したのに、こんなことになって呼び戻しちゃって。本当にすまないねぇ...すまないねぇ...」
ずっとおばあさんはウェーラーに対して謝り続けている。
ウェーラーも、ずっと謝り続けている。
1人の小さい男の子が、俺の肩を叩いた。
「ん?なんだーーー」
そっちを向いた途端、いきなり殴られた。
何度も何度も。
年齢のために筋力はなく、物理的な痛みはないが...心がどうにかなりそうだった。
「お前、人間だって聞いたぞ!僕たちを皆殺しにする気だろ!だからおばあちゃんに着いてきたんだろ⁉︎そんなことはさせないぞ!させない!させない!させない!」
男の子は泣きながらずっと俺の顔面を引っ叩く。
顔がぐしゃぐしゃになるくらいに泣いているのに。
手が真っ赤になっているのに。
俺を引っ叩く手は、ぶん殴る手は止まらない。
止めてはならないかのように動き続ける。
人間から自分の家族を、皆を守ろうと。
怖いだろうに。自分も殺されるんだと思っているだろうに。
「このっこのっこのっこのっ‼︎‼︎」
「コラ、やめなさーーー」
止めようとする手を遮る。
これは罰だ。
山の奥へ籠り、世界は平和だと。
皆が楽しく暮らしているのだと思い込んでいた自分への罰だ。
何が強い奴らがいるのか?だ。何を楽しそうにしていたんだ。
こういう世界があることを俺は知ろうとしていたのか?
現実を見ろ、この男の子の怒りを、しっかり受け止めろ...
ーそうだ。好きなだけ殴れ。お前は俺に怒る権利があるー
その小さい戦士の怒りは、夜になっても終わらなかった。
後書きって何書けば良いんですかね...
ではまたー




