聖戦士、誕生
絵を描き始めて一年...
まだまだ上手く描けません。
「やあ、運び終わったかい?」
校長だ。
俺らが全ての荷物を運び終わるのを待っていたかのようにちょうど運び終わったタイミングで出てきた。
なんなんだこの...人...なのか...?みたいなのは。
喋り方がなんとなく男っぽいというか圧が強いというか...
「終わったなら来て欲しい。ついてきてくれ。」
言われるがまま制服のまま校長についていく。
何故か玄関のドアを通った時点で校長室についていたり変な所はあるが気にしたら負けだ。
何故なら魔術が主流な現在では普通のはずだからだ。
「さて、座りたまえ。少し話が長くなるがいいかね?」
「「はい」」
「ははっ...仲良いねぇ。じゃあ話すぞ?」
俺らが首を縦に振り、首肯の意を示すと、校長は懐かしむように話し始めた。
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...昔々、この世界は平等であった。
龍も、悪魔も、天使も、その判別すらない魔物も、皆が平等だった。
いつだって問題は話し合いで解決。
喧嘩、武力沙汰になれば第三者が仲裁に入る。
そんな絵に描いたような平和。
そしてその仲裁に入る役目を負った種族こそ人間だった。
しかしそれで図に乗った若い人間が、他種族に対して「裁くのは俺らだ!お前らの決定なんぞ知らねぇ!」などと言って残虐な行いを働き始めた。
...当然、他種族の怒りは爆発。
人間VS他種族の全面戦争が起きた。
戦場はまさしく地獄だった。
悪魔は面白半分で戦場を掻き乱し、天使や神は人々が祈らなくなったことによって消滅、及び弱体化することに。
龍ですら物量には勝てず、どんどん押し込まれていき最終的には人間の勝利に終わった。
結果人間が全種族の覇権を握り、魔術がさらに発展していき...そして今に至る、と。
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「...」
「私は「繋ぐ者」としての人間でいてほしいと思っている。「裁く者」は必要ないんだ。...少なくともこの世界には。
クルセイダー...聖戦士はその為の戦士だ。
私が勝手にスカウトしているが...よくやってくれている。
明日からの依頼はこちらから連絡するが、何か質問はあるか?」
脚を組みなおす校長。
「それは、世界を正しい姿に戻す、という事でいいんですか?」
「ああ、そうだ。」
「当然、反対する者もいるわけですよね」
校長の顔が少し険しくなった。
フレイヤは俺の質問の真意を計りかねているようで、不思議そうな顔をしている。
構わず話は進む。
「ああ、そうだな」
「犠牲は、当然出ますよね?」
フレイヤの肩が跳ねた。
まだショックだったであろう部分を抉ったようなものだし、悪いことをしたと思う。でも聞かずにはいられなかった。
大切な確認だったのだ。
「もちろんだ。
...君達にも殺しをさせるかもしれない。
すまないとは思っているが避けられない道なんだ。どうか、許してくれ...!」
校長の肩も震えてきた。
声も泣きそうだしとにかく必死。
こんな状況でなければ優しい人だったんだろうなぁ...
それくらい悲しんでいるように、俺には見える。
フレイヤはじっと校長の顔を見つめてこう言った。
「わかりました。最善を尽くします」
「...いいのか?」
聞かずにはいられなかった。
さっきは人が死んでいくのを見て泣いていたのに、そんな事をして大丈夫なのか、と。
「うん、怖い。
でも、それ以上に人間が酷いことをしたというのなら、責任を取るべきだと思う。
関係ないなんて言えないからね...」
悪魔憑きを追い払い、天使や神の祝福を受けた子を殺し、多種族を破滅させようとする人間。
これまでは考えとして当たり前だったことが頭を揺らす。
いいのか?
そんなことをして、フレイヤまで乗ったのに、自分は関係ないというのか?
...否、断じて否だ。
俺はフレイヤを守ると決めた。
なら、ついていくのが筋ではないか。
「わかりました。俺もやります」
「...私が最初にああ言ったから断りづらいのかもしれないが、拒否権はあるんだぞ?」
「自分から嫌がられに行かないでください。
やるって決めたんです」
「...そうか。ありがとう」
ふう...と息を吐き緊張を解く。
校長が落ち着いてこう言った。
「改めて...入学おめでとう。
ワカタケ君、フレイヤちゃん。」
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あの後話は終わり、今は新しい部屋の前に戻ってきたところだ。
ここで一つ疑問がある。
普通にしていたが...もしかして俺らで部屋は2人っきりか?
隣を見ればフレイヤは下を向いてモジモジしていた。
どうやら間違っていないらしい。
「...まあ、とりあえず入ろうか」
「...うん」
ガチャリ。
部屋に入ったはいいものの、どうしたらいいかわからない...あ、そういえば。
「なあ、アレ見せて?フルアームズ?だっけ?」
「...全展開、ですね?
いいですけど、見ても...驚かないでくださいね?」
そういうと「彼女」は立ち上がり、あの言葉を呟く。
「全展開...ラ・テンペスタ。」
その言葉を言い終わった直後、辺り一帯を黒い風が覆った。
俺はそのまま座って「彼女」がいた場所を見つめ続ける。
数秒後には「彼女」がそこにいた。
黒いドレスに身を包み、あの槍を持った「彼女」が。
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