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屠龍の刀使いは魔術が蔓延る世界で身体強化のみで戦っていくそうです  作者: アキ八雲
昏き女王ーラ・テンペスター
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デスボイス・フロムヘル

あけましておめでとうございます!

少し間が空いてしまいましたがお楽しみください!

「何かに見られてないか?」


「何か」と言ったのは、それが生き物の視線であることが信じられないほど無機質で冷たい視線だったからだ。

人混みの中ですら感じるほどの圧倒的な質量を放ちながらそんな目線を送ってきている。

そんなことはいざ知らず、ルンルンで歩いているフレイヤはキョロキョロして頭の上にハテナを浮かばせている。


「え?...どうしたんですか?いきなり怖いことを言わないでくださ...」


「来るぞ!」


有無を言わさずお姫様抱っこで抱え上げ、そのまま近くにあった大きな建物の屋上まで跳躍する。


「あの、なんだったんですか?」


地面に足を降ろして立たせれば、俺の顔を見上げて質問してくる。

...震えた声音から怯えの感情が感じられた。


「あそこの地面を見てみろ」


「え?...なんですか?人が立っているだけじゃ...アレ?人じゃ、ない...?」


そう、俺が見たのは人の形をした何かだ。

しかもニヤけたような口がはっきりと見えるという怪しさマックスのやつ。

フード...?のような物をかぶっていて、顔は全く見えない。服装もその辺にいる普通の人と変わりない。


「魔力の流れはどう...」


「跳んで下さい!」


フレイヤがハッとしたような、怖がっているような表情で叫んでくる。俺の腕を思いっきり掴んで。

半ば恐慌状態のその声に突き飛ばされるようにして全力で跳ぶ。


その瞬間信じられないことが起こった。

さっきまで俺らが立っていたところから黒い柱が生えてきたのだ。

柱というよりは結晶の方が形は近いだろう。

...考えたくはないが、この建物は少なくとも4階建て以上の建物だ。

俺らが立っていたのは屋上の真ん中。

あの人のような何かから真っ直ぐ貫通してきていたのか、生の魔力の残滓が感じられる。

フレイヤもそれを感じているようで涙目になっている。

つまりは...下の階の人間もろとも貫通してきたのだろう。


フレイヤが不意に俺の腕から飛び出す。

あまりに突然、そして空中での出来事に俺は対応できなかった。

フレイヤはそのままアイツの方へと突っ込んでいく。

フレイヤが横に手を伸ばすと、掌から光の糸のようなものが発生して、纏まっていく。

纏まり切った時の形は斧とも槍ともつかないものだった。

材質は不明、サイズはフレイヤの身長と同じくらいか。とすれば大きさは縦に160cmと少し、材質は取り出し方からしてモンスター由来のものだろう。

その斧とも槍ともつかない武器、おそらくハルバードであろう武器を振りかぶってフレイヤは突っ込んでいく。


「はぁぁぁぁ‼︎‼︎」


思いっきり振り下ろしていった。

速度と重量の乗った一撃が地面すら振動させ、えげつない大音響と同時に凄まじい砂煙を立ち込めさせる。


「当たったよ!やった!やった...」


その時、フレイヤの八方からさっきの黒い柱が生えてくるのが見えた。


「待て、ソイツから離れろ!」


声に出すと同時に足が動いていた。

彼女を救わなければ。

俺が母さんから教わった最後のお願いを守らなければ。

近づいていた壁を蹴り、アイツに向かって刀を振り下ろす。

さっきよりも激しい金属音と砂煙。

衝撃で黒い柱は砕けたようで...フレイヤは無事なようだ。


「また、私が何か危なかったんですか?」


「アイツはまだ生きてる」


「え?」


また来た。

気のせいだろうか。アイツは俺ではなくフレイヤを狙っているような気がする。


「キヒッ...」


喋った。

気味の悪い笑い声のようなそれが聞こえた時、

奴はフレイヤの正面にいた。

そのままアイツはフレイヤの胸に手を伸ばそうとする...アレがフレイヤに触れてしまった時、何故か俺は凄く後悔するような気がした。

何故だろう。フレイヤが死ぬ、ということと同時に何かが起こるような、もしくは俺の手で誰かを殺してしまうような光景が頭に浮かんだ。

不思議なことに、もう感じたことがあるような感覚だった。

光景が、ではない。誰かが死んだという実感を、だ。

しかしフレイヤは動けない。

あの渾身の一撃を躱されたからだろう。

戦意喪失というような顔でこちらを見てきた。

そしてその顔で、泣き目でこう言ってきた。


「逃げて」

と。


「ッ!...させるか...!」


守る...何があっても。

しかしそれは聞き届けられないことがわかった。

足に地面から生えた黒い柱が数本刺さっていたのだ。生の魔力が体から溢れ、目眩が起こる。

視界も曇っていく。


「ングっ⁉︎グアァァァ‼︎」


この黒い鉱石、魔力に反応しているのかもしれない。

でもそう考えたところで今はなんともできない。


「動、け...!動け...よ...!!!」


その時、奴がよりハッキリ喋るのを聞いた。


「キヒッ!キヒヒッ!これで俺は最強になれる...!全世界を支配できるようになれるぞぉぉぉぉ‼︎‼︎」


「ッ‼︎」


直感的に悟った。

余計アイツにフレイヤを殺させるわけにはいかない、と。

しかしその直後、痛覚によって若竹の意識はもうすでに飛んでいた。

______________________________________

「...け。ワカタケ」


女の人の声だった。

懐かしくて、頼りになって、優しい声。

もう誰の声かも思い出せない、昔聞いたきりの声だ。


「起きろ...君の力はそんなものではないだろう?」


目を開けても何も見えない。幻覚だろう。


ーわかってる。でももう...ー

正直、なんであの少女をここまで守らなければいけないと考えたのか俺にはわからない。


「ほう?」


品定めをするかのような視線を感じる。

何も見えないのに。


「では君は、私との約束を破るのか?」


ーッ⁉︎ー


何故約束を知っている?

いや、まず「私との」とはどういうことだ?


ーまさかー


「私は君の母親だ、ワカタケ。あの1人くらい守れないのか」


少し間を開けてこう付け足してきたところで、俺の目が覚めた。


「その子と一緒にいると、決めたんだろう!」


目が覚める最後の瞬間、何も見えなかった視界がガラリと変わった。

辺りに満ちる光に...青い鱗の付いた翼と尻尾の付いた、女の人がいた。

俺の母だと言ったソレは、俺が倒した龍と翼も、尻尾も似ていた。

______________________________________


「そうだ、そうだったな...」


思い出した。やっと思い出した。

何故こんなに大事なことを忘れていたのだろうか。


「母さんは...大切な人を守るために俺の前から姿を消したんだったな...」


なら、俺も自分の命を犠牲にしてでもフレイヤを守るのが筋ではないか。

俺には勿体無いほど眩しい存在。

俺が恋した最初の人。

母は俺と約束をした。

「愛する人を守り抜きなさい...命を賭してでも」

上等だ。それくらいできなくて何が「屠龍の刀使い」だ。


「動、け。動け動け動け動け!」


脚に強引に魔力を流し込む。

激痛が全身を駆け巡る。


「ぐあ、あ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」


生の魔力と同時にこの黒い鉱石の魔力も取り込んでいるのだ。普通であれば全身が鉱石になって死んでもおかしくない。


「あああ、あ、ぁぁぁぁぁ‼︎」


叫びながら突進する。

さっきまで調子のいいことを言っていたアイツは怯えて動けなくなっている。

それでも向かってくるあたりは自分の強さに自信があるからだろうか。


「し、死に損ないがぁぁぁぁ⁉︎死ね、死ねぇぁ!」


黒い鉱石が周りから飛び出して襲いかかってくる。

が、遅い。

全てがスローに見える。

全力で地面を蹴り、真っ直ぐに突っ込む。

民間人は悲鳴を上げながら最初の方に逃げていったし、フレイヤとアイツは離れているため巻き込む心配はないだろう。

音速を超え、さらに速く。

通った後には何も残らず、敵は何人たりとも帰さない。

真空状態から戻る時の急激な気流を利用した

殲滅型剣技。


「龍殲鎌鼬(りゅうせんかまいたち)...ハァ、ハァ...さあ、学校に報告しに行こうか」


フレイヤは動揺して、どうしたらいいかがわからない様子だった。しかし次の瞬間には目を覚ますことになる。


「おま...」


音も無く通り過ぎた俺に動揺し、攻撃しようとしたアイツ。

次の瞬間、バァン‼︎という衝撃音が鳴り、急激な気流がアイツを襲う。

何者おも切り裂く最強の刃物は案外空気なのかもしれない。

コンクリートすら傷つける程の、下手したら切り裂くほどの気流がアイツを襲った結果、アイツは声を出す間も無く、文字通り木っ端微塵になった。


本来魔力は風に乗って何処かへ飛んで行くはずなのだが、どこにも行かずに消滅してしまった。


「死の、魔力...実在したんだ...」


「え?」


「死の魔力。伝説上の存在だと思ってたんですけどね...悪魔のみが生成できる魔力で、悪意、憎しみ、絶望みたいな、暗い感情を集めた魔力なんです」


「だからさっき...」


「さっき、何かあったんですか?」


伝えるべきだろうか。

...今はやめておこう。


「なんでもないよ。」


と言って頬にキスをする。


「うぇぁ!⁉︎何するんですか!?」


「イタズラさ」


ボロボロになりながら、学校へ報告に行く途中、2人とも不思議なことに痛いとも言わず、弱音を一言も吐かなかった。

それどころか、笑いが絶えない道中だった。

どうですか?

意見や誤字など受け付けております!

では、また!

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